偽装請負を防ぐ体制。人材派遣の会社設立で作る記録と契約の型
契約の型、指揮命令の経路、記録の残し方。実態が労働者派遣に寄っていかないための体制づくりの方法を、人材派遣の会社設立の段階…
人材派遣の会社設立の方法を、会社形態の選び方・定款の事業目的・自分で進めるか専門家に頼むかに分けて整理します。人材紹介や請負との違いも、設立前に線を引いておきます。
このテーマを、さらに一つずつ掘り下げた記事です
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この記事は、こういう方に向けて書いています
人材派遣で会社設立をしようと決めたものの、どの順番で、何を決めれば許可申請までたどり着けるのかを一度通して見ておきたい方に向けた記事です。合同会社と株式会社のどちらにするか、定款の事業目的に何と書くか、人材紹介や業務委託でもよいのではないか、といった迷いが同時に出ている段階を想定しています。
先に答えを書くと、人材派遣の会社設立の方法は「会社設立の登記」と「労働者派遣事業の許可」の二段に分かれます。登記の方法そのものは他の業種と同じですが、資本金・定款の事業目的・事業所の決め方が、二段目の許可の審査にそのまま持ち込まれます。
このページは全体の地図です。会社形態・定款・人材紹介との違い・偽装請負といった論点は、見出しごとに下のリンク先の記事で掘り下げています。金額と要件は厚生労働省・国税庁・日本公証人連合会の資料で確かめたものですが、許可の可否は所管の都道府県労働局が判断します。個別の判断は労働局・社会保険労務士・税理士にご確認ください。

「人材派遣会社を設立するには」「人材派遣会社を作るには」と調べると、会社設立の手順を書いた記事と、労働者派遣事業の許可を書いた記事が別々に出てきます。実際にはこの二つは一続きで、会社設立の登記が一段目、労働者派遣事業の許可が二段目です。どちらか片方だけでは人材派遣の営業は始められません。
一段目の会社設立の方法は、他の業種とほとんど変わりません。定款を作り、株式会社なら公証役場で認証を受け、資本金を払い込み、法務局に登記を申請します。違いが出るのは二段目です。許可申請には登記事項証明書と定款、貸借対照表などを添えるため、一段目で決めた資本金や事業目的が、そのまま二段目の審査の材料になります。

厚生労働省は、許可申請を事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行う必要があるとしています。会社設立の登記が早く終わっても、そのあとに審査の期間があり、許可が下りるまでは人材派遣の営業ができません。その間も事務所の家賃や役員報酬、社会保険料といった固定費はかかり続けます。
このため、人材派遣会社を設立するにはどうするか、という問いへの答えは「何から決めるか」の順番になります。資本金を決めてから資産要件に気づくと、増資のやり直しで時間も登録免許税もかかります。事業計画から逆算して設立方法を組み立てる考え方と、後戻りしないための決め方は、下の記事で項目ごとに書いています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年10月18日確認)

人材派遣会社の立ち上げ方を考えるとき、最初に突き当たるのが起業資金です。労働者派遣事業の許可には財産的基礎の要件があり、厚生労働省の許可基準では次の三つを同時に満たす必要があります。会社設立の方法をどう選んでも、この三つは変わりません。
| 基準 | 内容 | 事業所1か所の場合 |
|---|---|---|
| 基準資産額 | 資産(繰延資産と営業権を除く)の総額から負債の総額を引いた額が、2,000万円×事業所数以上 | 2,000万円以上 |
| 負債比率 | 基準資産額が、負債の総額の7分の1以上 | 負債が大きいと2,000万円でも足りない |
| 現金・預金 | 事業資金として自己名義の現金・預金が、1,500万円×事業所数以上 | 1,500万円以上 |
2026年8月27日時点、厚生労働省「許可基準」の表記による。
借入で2,000万円を用意しても、預金と同時に負債も増えるため基準資産額は増えません。人材派遣の会社設立で資本金をいくらにするかが、許可の可否をほぼ決めてしまうのはこのためです。しかもこの要件は、新規の許可のときだけでなく、許可の更新のときにも満たし続ける必要があります。赤字が続いて純資産が減れば、更新の時点で要件を割り込むこともあります。
個人事業主のままで人材派遣を始める方法もあり、許可の申請自体は個人でもできます。ただし基準は法人と同じで、個人の資産と事業の資産が分かれていないぶん、要件を満たすことを示す手間はかえって増えます。会社設立をしてから申請する形が多いのは、資本金として払い込んだ額が貸借対照表に表れ、判定がはっきりするからです。
起業資金には、資産要件のほかに法定費用と運転資金も載ります。許可申請の手数料12万円(事業所が増えるごとに5万5千円)と登録免許税9万円、会社設立の登録免許税、そして許可が下りるまでの固定費です。派遣料の入金は派遣スタッフに給与を払ったあとになるため、立ち上げ直後は給与の立替えが資金繰りを圧迫します。法人住民税の均等割は赤字でもかかり、標準税率で年7万円(自治体によって異なります)です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

合同会社で人材派遣の会社設立をする方法も、もちろんあります。労働者派遣事業の許可は会社の種類で基準を変えておらず、合同会社でも株式会社でも、資産要件・事業所・派遣元責任者の基準は同じです。違いが出るのは、会社設立の費用と、会社の中の決め方です。
合同会社は定款に公証人の認証が要らないため、定款認証の手数料がかかりません。登録免許税は、国税庁の税額表で資本金の1000分の7、最低6万円とされています。株式会社は同じ1000分の7で最低15万円です。人材派遣の資産要件を満たすために資本金を2,000万円にする場合、どちらも1000分の7で14万円となりますが、株式会社は15万円の最低額に届かないため15万円になります。

合同会社で注意したいのは、社員(出資者)の構成と派遣元責任者の置き方です。業務を執行する社員が派遣元責任者を兼ねるのか、雇用する人を選任するのかで、講習の受講者や職務代行者の決め方が変わります。合同会社だから許可が取りにくい、ということはありませんが、派遣先によっては取引の審査で会社形態を見ることがあります。
合同会社で人材派遣を始めるときに何が変わって何が変わらないのか、資本金2,000万円のときの登録免許税、社員構成と派遣元責任者の置き方は、下の三つの記事で詳しく扱っています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典No.7191 法人の設立等の登記にかかる登録免許税 (国税庁/2026年10月18日確認)

「人材派遣会社 設立 メリット」というサジェストが出るように、会社設立をすること自体の利点を確かめたい方は多くいます。人材派遣で法人をつくるメリットは、資本金が貸借対照表に表れて資産要件の判定がはっきりすること、派遣先との基本契約で法人格が求められる場面に対応できること、そして派遣スタッフを募集するときの見え方です。
そのなかで株式会社を選ぶ方法は、派遣先の与信と採用を重く見る場合に向いています。人材派遣は派遣先と継続的な取引を結ぶ商売で、取引の開始時に相手の会社形態や資本金、設立からの年数が見られることがあります。株式会社なら出資と経営を分けられるので、将来ほかの出資者を迎える形も取りやすくなります。
日本公証人連合会のページでは、定款認証の手数料は資本金の額等が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円とされています。人材派遣の資産要件を満たす資本金で株式会社をつくるなら、多くは5万円の区分に入ります。資本金100万円未満などの条件を満たす1万5,000円の区分は、資産要件を満たす人材派遣の会社設立ではまず当てはまりません。
一方で、株式会社には役員の任期ごとの登記や、決算公告の義務があり、合同会社より毎年の手間は増えます。メリットだけで決めず、派遣先の業種や取引の規模、出資者の予定と照らして選んでください。株式会社で人材派遣を始める手順、役員と機関設計、派遣先の与信と採用から見た意味は、下の記事にまとめています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典会社の定款認証手数料の改定について (日本公証人連合会/2026年10月18日確認)

人材派遣の会社設立で、定款の事業目的をどう書くかは、会社設立の方法のなかでも許可に直結する部分です。許可申請には定款と登記事項証明書を添えて出すため、事業目的の欄は労働局の審査で必ず読まれます。
厚生労働省の許可・更新等手続マニュアルは、定款と登記事項証明書の目的の中に「労働者派遣事業を行う」旨の記載があることが望ましいとしています。他の項目から労働者派遣事業を行うと解釈できる場合は、明示的な記載は要しないともしていますが、解釈の余地を残すより、最初から「労働者派遣事業」と書いておくほうが審査でのやり取りが減ります。

すでに別の事業をしている会社が人材派遣に参入する場合は、会社設立ではなく定款の変更で事業目的を足します。株主総会の決議と変更登記が要り、登記が終わってから許可申請に進む順番は同じです。事業目的の書き方、株式会社の定款認証の手順と手数料、既存の会社で目的を追加する方法は、下の三つの記事で扱っています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典労働者派遣事業を適正に実施するために -許可・更新等手続マニュアル- (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣会社 設立 資格」「人材派遣 資格 なし」というサジェストが示すとおり、人材派遣で会社設立をするのに国家資格は要りません。代表者が社会保険労務士や行政書士である必要もありません。ただし、資格の代わりに派遣元責任者という役割の要件があり、これを満たす人がいないと許可は下りません。
つまり、人材派遣の会社設立に必要なのは資格ではなく、雇用管理の経験と講習です。代表者自身に雇用管理の経験がなければ、経験のある人を雇って派遣元責任者に選任する方法になります。講習は申請の前に受けておく必要があるため、会社設立の準備と並行して日程を押さえておきます。
許可を受けたあとも、派遣元責任者は派遣スタッフの苦情処理や派遣先との連絡調整、台帳の管理を担います。事業としては、キャリアアップのための教育訓練(フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者には、最初の3年間は毎年概ね8時間以上)、マージン率などの情報提供、同一労働同一賃金への対応(労使協定方式か派遣先均等・均衡方式か)が続きます。どちらの方式を取るかで人件費の設計そのものが変わります。
会社設立と許可申請を自分で進めるか、専門家に頼むかも方法の選択です。登記は司法書士、許可申請書類の作成と提出の代行は社会保険労務士の業務です。自分で進める場合は労働局の窓口に事前相談をしながら書類を整えることになり、時間はかかりますが費用は抑えられます。その分かれ目は下の記事で整理しています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣 方法」と調べると、「人材派遣法とは」「人材派遣 法律」という候補が並びます。いわゆる人材派遣法は、正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)で、人材派遣の会社設立をしたあとに受ける許可も、守る義務も、この法律で決まっています。
よく比べられる人材紹介は、この法律ではなく職業安定法の有料職業紹介事業です。こちらも許可制ですが、労働者派遣事業の許可とは別の許可で、申請書類も要件も違います。人材紹介の許可を持っていても人材派遣はできず、その逆も同じです。
| 比べる点 | 人材派遣(労働者派遣事業) | 人材紹介(有料職業紹介事業) |
|---|---|---|
| 根拠の法律 | 労働者派遣法 | 職業安定法 |
| 働く人を雇うのは | 派遣元(自社) | 紹介先の会社 |
| 売上の立ち方 | 派遣料を毎月受け取り、そこから給与を払う | 採用が決まったときの紹介手数料 |
| 社会保険・労働保険 | 派遣スタッフを自社で加入させる | 自社の従業員の分だけ |
| 許可 | 労働者派遣事業の許可 | 有料職業紹介事業の許可(別の申請) |
労働者派遣法・職業安定法(e-Gov法令検索)による。許可の要件の詳細は厚生労働省の資料でご確認ください。
会社設立の方法として大きく違うのは、お金の流れと雇用の責任です。人材派遣では派遣スタッフを自社で雇うため、給与の支払いが先に来て、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入と保険料の会社負担も自社に掛かります。人材紹介は雇用を伴わないぶん固定費は軽くなりますが、売上が採用の成否に左右されます。
両方を兼ねる方法もあります。その場合は定款の事業目的に両方を書き、許可も二つ取ることになり、事業所や責任者の要件をそれぞれ確かめます。制度の違い、会社設立後の収益と資金繰りの違い、兼業するときの順番は下の記事で詳しく書いています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典職業安定法(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年10月18日確認)

「人材派遣 許可」のサジェストには「業務委託 許可」「不要」が並びます。人材派遣の許可が重いので、業務委託や請負の契約にすれば許可なしで始められるのではないか、と考える方がいるためです。結論から書くと、契約の名前を変えても、実態が労働者派遣なら労働者派遣事業として扱われます。
線引きの基準は、昭和61年労働省告示第37号(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)です。請負として認められるには、自社で雇う人の業務の遂行や労働時間について自ら指示・管理をすること、そして業務を自社の業務として相手から独立して処理すること(資金を自ら調達し、事業主としての責任を負い、機械・設備や専門的な技術・経験を使って処理し、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと)の両方が必要とされています。

実態が派遣なのに請負や業務委託の形をとることを偽装請負といい、許可を受けずに労働者派遣事業を行えば、労働者派遣法第59条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります。自己の名義で他人に労働者派遣事業を行わせる名義貸しも禁止されています。許可を受けた事業主でも、違反があれば労働局の指導・改善命令、事業停止命令や許可の取消しに至ることがあります。
請負や業務委託そのものは正当な事業の形です。人材派遣の会社設立と並べて請負も行うなら、契約と現場の管理を分け、記録を残す体制を最初から作っておくことが方法になります。37号告示の読み方、業務委託で始めるつもりの方向けの指揮命令の線引き、偽装請負を防ぐ体制は下の記事で扱っています。
この見出しを詳しく書いた記事
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

人材派遣の会社設立の方法を、登記と許可の二段構えから見てきました。会社形態や定款の書き方は選べる部分ですが、資産要件と派遣元責任者は選べない部分です。選べない部分を先に確かめ、選べる部分をそれに合わせて決めるのが、後戻りの少ない方法です。
許可を受けたあとも、有効期間は新規で3年、更新後は5年で、更新のたびに資産要件を含めて見直されます。派遣スタッフの社会保険料、教育訓練、同一労働同一賃金への対応、法人住民税の均等割まで含めて、会社設立の前に数年分の資金繰りを描いておいてください。
人材紹介や業務委託は人材派遣とは別の制度で、許可を避けるための方法にはなりません。迷うところは、主たる事務所を管轄する都道府県労働局の需給調整事業の窓口で、申請の前に相談できます。窓口の一覧は出典のリンク先にあります。
このページの金額と要件は2026年10月18日時点で確かめたものです(資産要件・手数料などは2026年8月27日に厚生労働省の資料で確認)。制度は改正されることがあるため、実際に会社設立を進めるときは出典のページで最新の内容を確かめ、許可は労働局、申請代行は社会保険労務士、税額の判断は税理士にご相談ください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年10月18日確認)
人材派遣の会社設立の方法は、合同会社か株式会社か、自分でやるか専門家に頼むかといった選び方の話に見えます。けれども実際に許可の可否を分けるのは、その手前にある資本金と事業所と派遣元責任者です。ここが満たせない限り、どの方法を選んでも許可申請には進めません。
ですから順番は、資産要件と派遣元責任者の目処を立てる、会社形態と定款の事業目的を決める、会社設立の登記をする、許可を申請する、です。人材紹介や業務委託という別の方法で始めるつもりなら、それが人材派遣とは別の制度であり、実態で判断されることを先に押さえてください。
許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成や提出の代行は社会保険労務士へ、役員報酬や決算期など税額の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。金額と要件は2026年10月18日時点で確かめたもので、制度は改正されます。
掲載順は優劣を示すものではありません。並び順にご注意ください。内容・料金・条件は各サイトの提供者が随時変更します。ご覧になる時点の最新情報は、必ずそれぞれの公式ページでご確認ください。
当サイトの公式アカウントではありません。各サービスの検索結果へ移動します
派遣業は、許可が下りてからが本番。役員報酬と社会保険の設計を任せられる所
※ 設立サポート手数料0円は顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。個別の判断は税理士へ。
※ 当サイトは、freee会社設立×会計事務所SoVa「士業伴走プラン」(提供:株式会社SoVa)を紹介しています。設立サポート手数料0円は、freee会社設立の利用を前提に、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。労働者派遣事業の許可申請そのものは同プランの対象ではありません。許可の可否は所管の都道府県労働局、就業規則・労働保険の手続きは社会保険労務士にご確認ください。最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。