個人事業主のまま人材派遣の許可を取れるのか。会社設立との違いを確かめる
労働者派遣事業の許可は、個人でも申請できます。ただし提出する書類が法人とは異なり、資産要件の金額は同じです。会社設立をして…
個人事業主のままで人材派遣の許可が取れるのか、一人で会社設立をして派遣元責任者を兼ねられるのかを整理します。個人ではじめるときの要件の壁と、回せる業務量の目安を見ていきます。
このテーマを、さらに一つずつ掘り下げた記事です
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個人事業に近い一人体制で人材派遣の会社設立をしたあと、実際にどれだけの実務が発生するのか。派遣スタッフの人数ごとに、教育訓…
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個人が一人で人材派遣の会社設立をするとき、最初の関門が派遣元責任者の要件です。3年以上の雇用管理の経験とは何を指すのか、講習…
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個人が一人で人材派遣の会社設立を進められるのか。派遣元責任者と職務代行者、資産要件、事業所の要件という三つの壁から、一人法人で許可を取れるかどうかを整理します。
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この記事は、こういう方に向けて書いています
勤め先で雇用管理や派遣の営業に携わってきて、個人で人材派遣会社を設立したいと考え始めた方に向けた記事です。個人事業主のまま始められるのか、会社設立が先なのか、起業資金はいくら要るのか、資格がなくても始められるのか、といった疑問をまとめて整理します。
先にお伝えしておくと、人材派遣は会社設立の登記だけでは始められず、労働者派遣事業の許可を受けて初めて営業できます。その許可の資産要件は、個人で申請しても会社設立をして申請しても同じ金額です。個人だから軽くなる、という制度にはなっていません。
数字は2026年10月18日時点で、厚生労働省と都道府県労働局の資料の表記によります。許可の可否は所管の都道府県労働局が審査で判断するもので、このページは一般的な制度の解説です。ひとつずつの論点は、下にリンクした記事で掘り下げています。

「人材派遣会社を個人で設立したい」と考えたとき、多くの方が最初に思い浮かべるのは、定款を作って法務局で登記をする会社設立の手続きです。ところが人材派遣は、会社設立だけでは始められません。登記のあとに、労働者派遣事業の許可を受けるという二段目があります。
これは、労働者派遣が「雇う会社」と「仕事の指示をする会社」が分かれる働き方だからです。派遣スタッフの雇用管理を適正に行える事業主かどうかを、国があらかじめ審査します。その入口が許可制で、無許可で労働者派遣事業を行うと、労働者派遣法第59条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
個人で始める場合でも、この構造は変わりません。個人事業主のまま申請するなら一段目の会社設立は要りませんが、二段目の許可の審査はまったく同じ基準で行われます。つまり「個人で人材派遣をする」とは、会社設立を省けるかどうかの違いであって、許可を省けるわけではありません。

厚生労働省は、許可申請を事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行うよう案内しています。会社設立の登記自体は短期間で終わることが多いので、時間がかかるのは許可のほうです。個人で設立したいと思い立ってから営業を始めるまで、数か月の準備期間を見込んでおくのが現実的です。
この見出しを詳しく書いた記事
出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣 個人事業主」「人材派遣会社 個人事業主」と検索する方が知りたいのは、会社設立をしなくても労働者派遣事業の許可を受けられるのか、という一点だと思います。答えは、制度としては個人でも申請できます。厚生労働省の「申請・届出等の手続」には、法人の場合と個人の場合のそれぞれについて添付書類が示されています。
ただし、ここで誤解しやすいのは「個人なら要件が軽い」と考えてしまうことです。許可の基準は、事業主が個人か法人かで金額が変わりません。事業所1か所の場合、基準資産額2,000万円以上、自己名義の現金・預金1,500万円以上、基準資産額が負債の総額の7分の1以上という三つを、同時に満たす必要があります。
| 項目 | 個人事業主で申請 | 会社設立をして申請 |
|---|---|---|
| 資産要件 | 基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円(1事業所) | 同じ |
| 事業所の面積 | おおむね20平方メートル以上 | 同じ |
| 派遣元責任者 | 成年に達した後3年以上の雇用管理の経験・講習の受講など | 同じ |
| 許可手数料 | 12万円+5万5千円×(事業所数−1) | 同じ |
| 許可の登録免許税 | 9万円 | 同じ |
| 資産を示す書類 | 所得税の確定申告書・青色申告決算書・預金残高証明書など | 法人税の確定申告書・貸借対照表など |
| 会社設立の費用 | かからない | 定款認証・登録免許税などがかかる |
厚生労働省「許可基準」「申請・届出等の手続」の表記による(2026年10月18日確認)。
表のとおり、違いは「資産を示す書類」と「会社設立の費用」の二つだけです。会社設立の費用が浮く分だけ個人のほうが身軽に見えますが、労働者派遣事業の許可の壁そのものは低くなりません。資産要件を満たせない方が個人事業主を選んでも、許可が下りないことに変わりはありません。
もう一つ押さえておきたいのは、許可は事業主ごとに受けるものだという点です。個人事業主として許可を受け、あとで会社設立をした場合、個人と新しい法人は別の事業主です。法人として改めて許可を申請する手続きになると考えておいてください。切り替えの進め方は、所管の労働局に事前に相談するのが確実です。
この見出しを詳しく書いた記事
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

個人事業で労働者派遣事業の許可を申請する場合、資産の状況を示す書類が法人とは違います。山口労働局が公開している「提出書類(個人の場合)」の一覧では、次のような書類が並んでいます。会社設立をして申請する場合の定款や登記事項証明書は、個人では要りません。
ここで分かれ目になるのが、青色申告で貸借対照表を作っているかどうかです。法人は会社設立の翌期から必ず貸借対照表を作るので、基準資産額はそこから計算できます。個人事業主の場合、白色申告や簡易な帳簿では貸借対照表がないため、不動産の評価額などで資産を示すことになります。
厚生労働省の「許可基準」には、個人の場合に限った資産の確かめ方も書かれています。基準資産額や現金・預金が増えた旨の申し立てがあったとき、固定資産税の評価額証明書などで市場性のある資産の評価額が示された場合や、預金残高証明書で残高が確かめられた場合(複数使うときは同じ日付のものに限る)に、増えたあとの額で判断するとされています。

個人事業主では、事業のお金と生活のお金が同じ口座に混ざりがちです。どこまでが労働者派遣事業に使える資産として認められるかは、最終的に所管の労働局の判断になります。申請の直前だけ預金を移して数字を作るのではなく、要件を満たした状態を保てる資金計画を立ててから申請してください。会社設立をして法人にすれば、法人の資産と個人の資産は帳簿の上で分かれるので、この点はすっきりします。
出典労働者派遣事業【許可申請】に係る提出書類(個人の場合) (山口労働局/2026年10月18日確認)

「人材派遣業 開業 個人」「起業 資金」という関連キーワードが出ているとおり、個人で始めるときに一番気になるのはお金です。人材派遣の起業資金は、ほかの業種の開業資金と考え方が違います。許可の資産要件を満たすためのお金と、開業の手続きにかかるお金、そして営業を始めてから回すお金の三つに分けて考えてください。
一つ目の資産要件は、使ってなくなるお金ではなく、事業主の手元に残しておくべき財産です。個人なら確定申告の数字や預金残高証明書で、法人なら会社設立後の決算書で確かめられます。借入金で現金を増やしても、そのぶん負債も増えるので、基準資産額は増えません。

二つ目の手続きの実費は、図のように個人なら許可手数料と登録免許税の21万円、会社設立をするなら登記の費用が上乗せされます。株式会社の定款認証の手数料は、資本金100万円未満が3万円、100万円以上300万円未満が4万円、それ以外が5万円で、人材派遣では資本金が大きくなりやすいので5万円の区分に入ることが多いでしょう。
三つ目の運転資金が、人材派遣の起業資金で見落とされやすい部分です。派遣スタッフの給与は毎月払い、派遣料金は派遣先から後で入ってきます。この時間差の分だけ、手元のお金が先に出ていきます。許可が下りるまでの家賃と、赤字でもかかる税金(法人なら法人住民税の均等割が標準税率で年7万円。自治体で異なります)も、この中に入れて見積もってください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣 資格 なし」「派遣会社 起業 個人」という検索が多いのは、特別な資格がなくても始められるのかを確かめたい方が多いからだと思います。人材派遣会社の会社設立にも、労働者派遣事業の許可にも、特定の国家資格は要りません。社会保険労務士や行政書士の資格を持っていなくても申請はできます。
その代わりに、事業所ごとに派遣元責任者を選任する必要があります。派遣元責任者は、派遣スタッフからの苦情の処理や派遣先との連絡調整、個人情報の管理などを担う人です。個人で起業するなら、たいていは自分自身がこの役を務めることになります。
| 派遣元責任者の主な要件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢と欠格事由 | 未成年者でなく、欠格事由に該当しないこと |
| 雇用管理の経験 | 成年に達した後3年以上の雇用管理の経験を有する者など |
| 講習の受講 | 厚生労働省告示で定められた講習機関の派遣元責任者講習。申請の受理の日前3年以内の受講に限る |
| 職務代行者 | 不在のときに職務を代わる者をあらかじめ選任していること |
厚生労働省「許可基準」の表記による(2026年10月18日確認)。経験の数え方は労働局で確かめてください。
ここで個人の方がつまずきやすいのは、3年以上の雇用管理の経験と職務代行者の二つです。雇用管理の経験は、人事や労務の部署にいた、管理職として部下の勤怠や配置を管理していた、といった実務を指し、どの職歴が当てはまるかは履歴書をもとに審査されます。職務代行者は、一人だけの事業では用意できないので、少なくとももう一人の協力者が必要になります。
さらに、許可を受けたあとはキャリアアップのための教育訓練(最初の3年間は毎年1人あたり概ね8時間以上)やキャリアコンサルティングの相談窓口の設置も求められます。資格は要らなくても、資格に代わる経験と体制が要る、と考えてください。
この見出しを詳しく書いた記事
出典労働者派遣事業を適正に実施するために -許可・更新等手続マニュアル- (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「小規模派遣元事業主 新規」という関連キーワードは、ほとんどの検索語で表示されます。個人や小さな会社で始めるなら、資産要件が軽くなる仕組みがあるのではないか、と期待して調べる方が多いのだと思います。結論から書くと、これから会社設立をして新しく人材派遣を始める方は、この措置の対象になりません。
小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置は、平成27年の労働者派遣法の改正で、届出制だった旧特定労働者派遣事業が許可制に一本化されたときに設けられたものです。厚生労働省の「許可基準」と「派遣事業開始以後の手続等」によると、平成28年9月30日以降は、改正法の附則により引き続き事業を行うことができるとされた事業主、つまり旧特定労働者派遣事業を行っていた事業主からの申請に限られています。

インターネット上には「派遣労働者10人以下なら基準資産額1,000万円・現金預金800万円」と書いた記事も残っています。数字そのものは措置の内容として正しくても、新規の申請に使える前提で書かれていると誤解のもとになります。派遣労働者5人以下の500万円の措置は、平成27年9月30日から3年間の暫定措置として、すでに期間が終わっています。
個人で始めるからといって、資産要件が軽くなる道はありません。満たせない場合は、資金を貯める、出資を受けて会社設立をする、事業所の数を絞るなど、要件を満たす形に計画を組み直すのが順序です。判断に迷うときは、所管の都道府県労働局の需給調整事業の窓口で、新規申請の要件として確かめてください。
出典派遣事業開始以後の手続等(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

個人でも許可を申請できるのに、「派遣会社設立するには」と調べる方の多くが会社設立を前提にしているのはなぜか。理由は、許可を受けたあとの事業の広がり方にあります。資産要件の金額が同じなら、会社設立の費用の差より、そのあとの違いのほうが大きくなりやすいからです。

人材派遣は、派遣先の企業と継続して取引をする事業です。取引先の選定基準で法人であることを条件にしている企業もあり、個人事業主のままでは取引の入口で止まることがあります。また、資産要件を満たすために他の人から出資を受けたい場合、出資を受け入れる器として会社設立が必要になります。
そして、先に書いたとおり許可は事業主ごとのものです。個人で始めて事業が軌道に乗ってから会社設立をすると、法人としてもう一度許可を申請し、手数料と登録免許税を払い、審査を待つことになります。いずれ法人にするつもりなら、最初から会社設立をして申請するほうが手続きは一度で済みます。
会社設立を選ぶ場合は、登記の前に、定款の事業目的に労働者派遣事業を入れること、資本金を資産要件から逆算すること、事業所を確保することの三つを決めておきます。登記のあとで気づくと、変更登記や増資の手間がかかります。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年10月18日確認)

「人材派遣 個人」で調べる方の中には、許可さえ取れれば一人で回していけると考えている方もいます。けれども人材派遣は、許可を受けたあとの義務が多い事業です。個人事業主でも会社設立をした法人でも、同じ義務がかかります。
これらを怠れば、労働局の指導・監督の対象になり、改善命令や事業停止命令、許可の取消しに至ることもあります。また、人材派遣と人材紹介(有料職業紹介)や業務委託・請負は別の制度です。請負の契約なのに実態は派遣先の指揮命令で働かせている状態は偽装請負として問題になり、区分の基準は昭和61年労働省告示第37号に定められています。

一人に近い体制で始めるなら、給与計算や社会保険の手続きを社会保険労務士や会計事務所に任せる、教育訓練の一部を外部の講座で行うなど、外に出せる仕事を先に決めておくと負担を抑えやすくなります。ただし、派遣元責任者の職務そのものは外に出せません。
出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年10月18日確認)

人材派遣を個人で始める道は、制度の上では開かれています。個人事業主のままでも労働者派遣事業の許可は申請できますし、資格がなくても始められます。ただし、資産要件の金額は会社設立をしても個人でも同じで、小規模派遣元事業主の配慮措置も新規には使えません。
この順番で確かめていけば、個人で始めるか、会社設立をしてから申請するかは、自然に答えが出てきます。許可の要件そのものは動かせないので、要件を満たせる計画を作ってから申請してください。
このページの金額と要件は2026年10月18日時点で、厚生労働省と都道府県労働局の資料で確かめたものです。改正されることがありますので、出典として示したページで最新の内容を確かめ、許可の可否は所管の都道府県労働局へ、書類の作成・提出の代行は社会保険労務士へ、税額の判断は税理士へご相談ください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年10月18日確認)
個人で人材派遣を始めたいと考えたとき、最初に決めるのは「個人事業主か会社設立か」ではありません。基準資産額・現金預金・負債比率の三つを、自分の資金で満たせるかどうかです。ここが満たせなければ、どちらの形を選んでも労働者派遣事業の許可は下りません。
満たせると分かったら、そこで初めて会社設立をするかどうかを決めます。取引先の審査、資金の分け方、将来の法人化の手間まで考えると、最初から会社設立をして申請する人が多いのは、この順序で考えた結果です。
許可の可否と書類の細かい扱いは所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士へ、税額や個人事業主と法人の比較は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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※ 設立サポート手数料0円は顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。個別の判断は税理士へ。
※ 当サイトは、freee会社設立×会計事務所SoVa「士業伴走プラン」(提供:株式会社SoVa)を紹介しています。設立サポート手数料0円は、freee会社設立の利用を前提に、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。労働者派遣事業の許可申請そのものは同プランの対象ではありません。許可の可否は所管の都道府県労働局、就業規則・労働保険の手続きは社会保険労務士にご確認ください。最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。