派遣元責任者の職務と、職務代行者。人材派遣の会社設立で決める体制
派遣元責任者は、必要な資格を満たして選任すれば終わりではありません。派遣スタッフの苦情処理、就業条件の管理、教育訓練の実施…
人材派遣会社を設立するのに国家資格は要りませんが、派遣元責任者には雇用管理の経験と講習の受講が求められます。誰が派遣元責任者になれるのか、職務と代行の体制まで確かめます。
このテーマを、さらに一つずつ掘り下げた記事です
派遣元責任者は、必要な資格を満たして選任すれば終わりではありません。派遣スタッフの苦情処理、就業条件の管理、教育訓練の実施…
約11分
派遣元責任者になれる資格があるかどうかは、成年に達した後3年以上の雇用管理の経験があるかで決まることが多くなります。この経験…
約11分
派遣元責任者講習は、責任者の資格要件として、労働者派遣事業の許可申請の前に受講しておく必要があります。受講の時期、講習機関…
約11分
この記事は、こういう方に向けて書いています
人材派遣で会社設立をしようと考えていて、「何か資格を取らないと始められないのか」を最初に確かめたい方に向けた記事です。社長に資格が要るのか、派遣元責任者講習は資格なのか、講習を受ければ誰でもよいのか、といった疑問をまとめて扱います。
先に答えを書くと、人材派遣の会社設立に、代表者が持っていなければならない国家資格はありません。代わりに要るのは、労働者派遣事業の許可と、その許可の要件のひとつである派遣元責任者です。派遣元責任者は試験で取る資格ではなく、雇用管理の経験と講習の受講などを満たした人を会社が選任するものです。
内容は2026年10月18日に厚生労働省の許可基準・業務取扱要領と、e-Gov法令検索の施行規則で確かめました。個別の方が要件を満たすかどうかは所管の都道府県労働局が判断します。ここでは判断材料を並べ、細かい論点は下のリンク先の記事で掘り下げます。

「人材派遣 資格 なし」「人材派遣 開業 資格」というサジェストが出ているように、資格がなくても人材派遣の会社設立ができるのかは、多くの方が最初に引っかかる点です。答えから言うと、代表者や役員が持っていなければならない国家資格はありません。税理士事務所や建設業のように、代表者本人の免許や試験の合格が事業の条件になっているわけではないのです。
ただし「資格なしで誰でも始められる」という意味ではありません。人材派遣は、会社設立の登記を終えたうえで、厚生労働大臣の労働者派遣事業の許可を受けなければ営業できない事業です。その許可の要件のなかに、人に関する要件として派遣元責任者の選任が入っています。世間で「人材派遣の資格」と呼ばれているものの正体は、たいていこの二つです。
つまり、人材派遣の会社設立で問われるのは「何を持っているか」より「誰がいて、何を満たしているか」です。代表者本人が派遣元責任者を兼ねることもできますが、その場合は代表者自身が雇用管理の経験と講習の要件を満たしている必要があります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣会社 設立 資格」で検索すると、「人材派遣会社 設立 要件」が一緒に出てきます。資格と要件を同じものとして調べている方が多いということです。人材派遣の会社設立で満たすべき条件は、労働者派遣法第7条第1項の許可の四要件にまとまっていて、その中に人の条件と資金の条件が並んでいます。
| 要件 | 中身 | 資格・人の条件との関係 |
|---|---|---|
| 特定の者だけに派遣しない | 派遣先が1社に限られる事業計画でないこと | 人の資格とは関係しない |
| 雇用管理の能力 | キャリア形成支援制度と、派遣元責任者の選任 | 派遣元責任者の要件がここに入る |
| 個人情報の管理 | 個人情報適正管理規程と秘密を守る措置 | 苦情処理の担当として派遣元責任者が関わる |
| 事業を的確に行う能力 | 基準資産額2,000万円×事業所数などの資産要件と事業所 | 人ではなく会社の決算書の条件 |
労働者派遣法第7条第1項と厚生労働省の業務取扱要領をもとに要約(2026年10月18日確認)。
このほか、許可を申請する会社や役員が法第6条の欠格事由に当たらないことも求められます。労働に関する法律に違反して罰金刑を受けた場合などが含まれ、役員の一人が当たるだけで会社として許可を受けられなくなります。会社設立のときに誰を役員にするかは、資本金の額と並んで許可に効く設計です。
資産要件については、基準資産額が2,000万円に事業所数を掛けた額以上、自己名義の現金・預金が1,500万円に事業所数を掛けた額以上、基準資産額が負債総額の7分の1以上という三つを同時に満たす必要があります。「小規模派遣元事業主」の軽減措置を見かけることがありますが、これは旧特定労働者派遣事業を行っていた事業主に限られた措置で、新しく会社設立をして申請する場合には使えません。

この表で分かるとおり、人の条件は書類を整えれば済むものではなく、実際に要件を満たす人がいるかどうかが問われます。会社設立の登記は1〜2週間で終わることもありますが、人の条件が整っていなければ、許可申請の段階で止まります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 (厚生労働省/2026年10月18日確認)

派遣元責任者は、労働者派遣法第36条で派遣元事業主に選任が義務づけられている役割です。派遣スタッフからの苦情の処理、派遣先との連絡調整、派遣元管理台帳の作成、教育訓練やキャリア相談の機会の確保などを担います。「派遣元責任者 資格」と検索されますが、国家試験があるわけではなく、会社が要件を満たす人を選任する仕組みです。
厚生労働省の許可基準が挙げる要件のうち、会社設立の段階でとくに確かめておきたいのは次の点です。
「雇用管理の経験」とは、人事・労務の担当者であったと評価できること、または労働者派遣事業で派遣労働者や登録者の労務の担当者であったことを指します。法人の役員や支店長・工場長など、労働基準法第41条第2号の管理監督者の立場にあった期間も含まれます。営業や現場の経験だけで足りるかどうかは、職務の中身で判断されるため、迷ったら所管の労働局に確かめてください。

人材派遣の会社設立で一番のネックになりやすいのは、講習よりも3年以上の雇用管理の経験です。代表者に人事・労務の経験がない場合は、経験のある人を雇用するか役員に迎えて派遣元責任者に選任することになり、その人件費は許可が下りる前から発生します。
この見出しを詳しく書いた記事
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣 資格 講習」「資格 取得」「資格 費用」と検索されるのは、ほとんどがこの派遣元責任者講習のことです。講習は施行規則第29条の2にもとづき、厚生労働大臣が定めた講習機関(平成27年厚生労働省告示第392号)が実施します。厚生労働省のページに講習機関の一覧と日程表が載っていて、申込みは各講習機関へ直接行います。
講習を修了すると受講証明書が交付され、許可申請ではその写しを添付します。厚生労働省の手続の案内は、申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があるとしています。会社設立の登記が終わってから講習を探し始めると、日程の空きしだいで申請がその分だけ遅れます。

受講料は講習機関ごとに決まっていて、法律で一律に定められた金額はありません。会場で受ける形とオンラインの形のどちらがあるか、受講料、開催日は講習機関によって違うため、厚生労働省のページから各講習機関の日程表を開いて確かめてください。資格の費用として見積もるなら、受講料のほかに受講日の人件費や交通費も入れておくと、会社設立の資金計画とずれにくくなります。
講習を受けたこと自体で、派遣元責任者の要件がすべて満たされるわけではありません。前の見出しの雇用管理の経験がない人が講習だけ受けても、派遣元責任者には選任できません。講習は「資格の取得」というより、選任の条件のひとつを満たす手続きと考えるほうが実態に近いでしょう。
この見出しを詳しく書いた記事
出典派遣元責任者講習の日程及び講習機関等について (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「派遣元責任者 有効期限」「派遣元責任者 更新」というサジェストがあるように、講習の効力がいつまで続くのかもよく調べられています。根拠になるのは施行規則第29条の2です。派遣元責任者の基準として、過去3年以内に厚生労働大臣が定める講習を修了していることが挙げられています。
この「過去3年以内」は、許可を申請するときだけの条件ではありません。派遣元責任者として選任されている間、ずっと満たしている必要がある基準です。そのため、派遣元責任者を続ける人は、前回の受講から3年が経つ前に講習を受け直すことになります。
| 場面 | 求められる受講の時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規の許可申請 | 申請の受理の日前3年以内 | 許可基準・業務取扱要領 |
| 派遣元責任者を続ける間 | 過去3年以内に修了していること | 施行規則第29条の2第1号 |
| 許可の有効期間の更新 | 有効期間が満了する日前3年以内の受講日のもの | 業務取扱要領(更新の添付書類) |
| 派遣元責任者を替えるとき | 新しく選任する人の受講証明書を変更届に添付 | 施行規則第8条・業務取扱要領 |
e-Gov法令検索の施行規則と厚生労働省の業務取扱要領で2026年10月18日に確認。
労働者派遣事業の許可そのものにも有効期間があります。初めての許可は3年、一度更新したあとは5年で、更新の申請は有効期間が満了する日の3か月前までに出さなければなりません。会社設立から3年後の更新の時期と、派遣元責任者の講習の受け直しの時期が重なることが多いので、二つを同じ予定表に書いておくと漏れにくくなります。

更新のときには資産要件もあらためて確かめられます。会社設立のときに資本金で基準資産額を満たしていても、その後の赤字で2,000万円を割り込めば、講習を受け直していても更新の要件を満たせません。人の要件と資金の要件は、許可を取った後も同時に維持していくものです。
講習を受ける時期と、更新での受け直しを詳しく書いた記事
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年10月18日確認)

派遣元責任者は会社に一人いればよいわけではありません。施行規則第29条は、事業所ごとに、その事業所に専属の派遣元責任者を選任するよう定めています。自己の雇用する労働者の中から選ぶのが原則ですが、派遣元事業主(法人ならその役員)を派遣元責任者にすることもできます。
人数は、その事業所の派遣労働者の数で決まります。100人以下なら1人以上、100人を超え200人以下なら2人以上、200人を超えるときは100人を超えるごとに1人を加えた数以上です。物の製造の業務に派遣する事業所では、このうち所定の数を製造業務専門派遣元責任者にする必要があります。
| 事業所の派遣労働者の数 | 派遣元責任者の人数 | 会社設立時の目安 |
|---|---|---|
| 100人以下 | 1人以上 | 多くの会社設立はここから始まります |
| 100人超〜200人以下 | 2人以上 | 二人目の候補を育てておく時期 |
| 200人超 | 100人を超えるごとに1人を加える | 例:250人なら3人以上 |
労働者派遣法施行規則第29条第2号(e-Gov法令検索で2026年10月18日に確認)。
派遣元責任者の氏名や住所が変わったときは、変更の届出が要ります。業務取扱要領によると、派遣元責任者の氏名・住所の変更は、変更のあった日の翌日から起算して30日以内に届け出ます。代表者や役員の氏名など、ほかの多くの変更は10日以内(登記事項証明書を添付する場合は30日以内)です。新しい派遣元責任者については、住民票の写し・履歴書・受講証明書などを添えます。
許可基準は、派遣元責任者が不在のときの臨時の職務代行者をあらかじめ選任しておくことを求めています。許可基準の文言には、職務代行者に派遣元責任者と同じ経験や講習を求める定めは書かれていません。ただ、不在のときに苦情処理や派遣先との連絡調整を実際に代わって行える人である必要があるので、誰を選べば足りるかは所管の労働局に確かめてください。

この見出しを詳しく書いた記事
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年10月18日確認)

「人材派遣 資格 種類」「資格 有利」「コーディネーター 資格」といったサジェストもあります。人材派遣の会社設立や運営に関係する資格はいくつかありますが、どれも許可の必須条件ではありません。ここを取り違えて、資格の勉強に時間を使い、派遣元責任者や資本金の準備が遅れるのは避けたいところです。
| 資格・役割 | 人材派遣での位置づけ | 必須かどうか |
|---|---|---|
| キャリアコンサルタント | キャリアコンサルティングの相談窓口の担当者になりうる | 必須ではない |
| 社会保険労務士 | 許可申請の書類作成・提出や、労働・社会保険の手続きを依頼する専門家 | 自社で取る必要はない |
| 派遣コーディネーター | 派遣スタッフと派遣先の調整をする職種名。法律上の資格ではない | 資格は存在しない |
| 派遣元責任者 | 許可の要件。経験と講習で選任する | 必須(資格ではなく選任) |
厚生労働省の許可基準とキャリアコンサルタント制度の案内で2026年10月18日に確認。
許可基準では、キャリア形成支援制度の一部としてキャリアコンサルティングの相談窓口を置くことが求められます。窓口の担当者は、キャリアコンサルタント(有資格者)のほか、職業能力開発推進者や3年以上の人事担当の職務経験がある人などキャリアコンサルティングの知見を有する人、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者でもよいとされています。キャリアコンサルタントは登録をして名乗る名称独占の国家資格で、持っていれば窓口の体制を説明しやすくなりますが、なければ許可が取れないものではありません。

社会保険労務士については、自分で資格を取る必要はありません。人材派遣では、派遣スタッフの社会保険・労働保険の加入、就業規則、同一労働同一賃金の労使協定方式か派遣先均等・均衡方式かの選択など、労務の論点が許可の後も続きます。こうした部分は社会保険労務士に依頼するのが一般的で、許可の申請書類の作成・提出の代行も社会保険労務士の業務です。
営業やコーディネーターの仕事に資格はありませんが、派遣と請負・業務委託の区別を知らずに契約を取ると、偽装請負として問題になることがあります。昭和61年労働省告示第37号の区分基準は、資格の有無にかかわらず、人材派遣の会社設立をする人が一度は読んでおきたい資料です。
出典キャリアコンサルタントになりたい方へ (厚生労働省/2026年10月18日確認)

人材派遣の会社設立に、代表者が持っていなければならない国家資格はありません。要るのは、会社設立の登記のあとに受ける労働者派遣事業の許可と、その要件のひとつである派遣元責任者です。派遣元責任者は試験で取る資格ではなく、経験と講習などの要件を満たす人を事業所ごとに選任するものでした。
許可を取ったあとも、派遣スタッフの社会保険・労働保険の加入、キャリアアップに資する教育訓練、マージン率などの情報提供、同一労働同一賃金への対応といった義務が続きます。赤字の年でも法人住民税の均等割(標準税率で年7万円。自治体により異なります)はかかり、違反があれば改善命令や許可の取消に至ることもあります。人材派遣は、許可の後に管理することの多い事業です。
この記事の内容は2026年10月18日に、厚生労働省の許可基準・業務取扱要領と、e-Gov法令検索の労働者派遣法施行規則で確かめたものです。制度は改正されることがあるので、会社設立と許可申請を進めるときは、出典のページで最新の内容を確かめ、迷う点は所管の労働局に相談してください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年10月18日確認)
人材派遣の会社設立で「資格」を調べ始めた方の多くは、実は試験を探しているのではなく、自分がこの事業を始めてよい立場にあるのかを確かめたいのだと思います。その答えは、派遣元責任者になれる人がいるか、講習を申請の前に受けられるか、そして資産要件を満たす資本金を用意できるか、の三つで決まります。
派遣元責任者の要件は、時間をかければ満たせるものと、すぐには満たせないものに分かれます。講習は日程を押さえれば受けられますが、成年に達した後3年以上の雇用管理の経験は、後から短縮できません。会社設立の登記を急ぐ前に、誰を派遣元責任者にし、誰を職務代行者にするかを紙に書き出してみてください。
許可が下りるかどうかは所管の都道府県労働局の審査によります。申請書類の作成や提出の代行は社会保険労務士、役員報酬や決算期など税額にかかわる判断は税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の相談ではありません。
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派遣業は、許可が下りてからが本番。役員報酬と社会保険の設計を任せられる所
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