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人材派遣 キャリア形成支援制度

キャリア形成支援制度は許可の要件です。人材派遣の会社設立で用意するもの

何を用意すればよいか知りたい方へ

人材派遣の会社設立を進めていて、キャリア形成支援制度として何を用意すればよいかを知りたい方に向けた記事です。

これは労働者派遣事業の許可の要件のひとつです。厚生労働省の許可基準に、含めるべき内容が細かく定められています。

そして、許可を取ったあとには実際に運用する必要があります。更新の審査では、実施状況が見られます。

キャリア形成支援制度は、許可の要件です

キャリア形成支援制度が許可の要件であることを表したイラスト
この制度がなければ、許可を受けられません。

キャリア形成支援制度は、労働者派遣事業の許可の要件のひとつです。

労働者派遣法第7条第1項第2号は、申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであることを求めています。

そして厚生労働省の許可基準は、この「厚生労働省令で定める基準に適合するもの」を二点に整理しています。

  1. 派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る)を有すること
  2. そのほか、派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制が整備されていること

一つ目がキャリア形成支援制度です。つまり、この制度がなければ許可を受けられないということです。

人材派遣の会社設立では、この制度を会社設立の準備の段階から作ることになります。許可申請の添付書類として、キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)を提出するからです。

五つの要素があります厚生労働省の許可基準は、キャリア形成支援制度について五つの要素を挙げています。段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画、キャリアコンサルティングの相談窓口、キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続、教育訓練の時期・頻度・時間数、教育訓練計画の周知等です。この記事では、これらを順に見ていきます。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

一つ目|段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画

教育訓練計画の内容を表したイラスト
対象・費用の扱い・内容・入職時訓練。すべてに基準があります。

一つ目が、段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画です。この計画には、いくつもの要件があります。

厚生労働省の許可基準が挙げる、教育訓練計画の内容についての判断を並べます。

  • 実施する教育訓練が、その雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること
  • 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること
  • 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること
  • 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであること
  • 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること

二つ目の「有給かつ無償」について、許可基準は説明を置いています。教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする、とされています。

三つ目の「キャリアアップに資する内容」については、派遣元事業主が説明できなければならないとされています。具体的に資する理由は、キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)において記述することとされています。

キャリア形成に無関係なものは含まれませんヨガ教室や趣味的な英会話教室、面接対策とは異なるメイクアップ教室のような、派遣労働者の福利厚生を目的とした明らかにキャリア形成に無関係なものは含まれない、と許可基準に書かれています。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

受講済みとして扱える例外

受講済みとして扱える例外を表したイラスト
限定的な例外です。広く読まないでください。

教育訓練は、雇用するすべての派遣労働者を対象とすることが原則です。ただし、例外があります。

厚生労働省の許可基準は、実際の教育訓練の受講にあたり、次の者については当該教育訓練は受講済みであるとして取り扱うことができる、としています。

  1. 過去に同内容の教育訓練を受けたことが確認できる者
  2. 当該業務に関する資格を有している等、明らかに十分な能力を有している者

ただし、受講済みとして取り扱うことができる派遣労働者であっても、当該派遣労働者が当該教育訓練の受講を希望する場合は、受講させることが望ましいとされています。

この例外は限定的なものです。「過去に同内容の教育訓練を受けたことが確認できる」「明らかに十分な能力を有している」という条件があるからです。

人材派遣の会社設立で教育訓練計画を作るとき、この例外を広く読まないでください。原則はすべての派遣労働者を対象とすることです。

会社設立の段階では、まだ派遣スタッフを雇っていません。それでも計画は作ることになります。どういう訓練を、いつ、誰に対して実施するのかを、あらかじめ決めておくということです。

実施形態にも幅があります教育訓練の実施形態は、通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練だけでなく、日常の業務につきながら行う教育訓練のうち計画的に行うものを含めていても差し支えないとされています。すべてを研修という形で行う必要はありません。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

二つ目|キャリアコンサルティングの相談窓口

キャリアコンサルティングの相談窓口を表したイラスト
窓口の形は自由ですが、担当者には要件があります。

二つ目が、キャリアコンサルティングの相談窓口です。厚生労働省の許可基準は、次の内容を求めています。

  • 相談窓口には、担当者が配置されていること
  • 相談窓口は、雇用するすべての派遣労働者が利用できること
  • 希望するすべての派遣労働者がキャリアコンサルティングを受けられること
  • キャリアコンサルティングは、実施に当たっての規程(事務手引、マニュアル等)に基づいて実施されることが望ましいこと

担当者については、要件があります。キャリアコンサルタント(有資格者)、キャリアコンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者等)、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者を配置する必要があります。

窓口の形は、事務所内に定められた相談ブースを設置することに限られません。電話による相談窓口の設置、電子メールでの相談の受付、専用のウェブサイトの相談窓口の設置などにより、雇用する派遣労働者がキャリアコンサルティングを申し込めるよう周知し、適切な窓口を提供することとされています。

実施の頻度についても、必ずしも常時行わなければならないわけではなく、たとえば毎週2回定期的に実施することや、派遣労働者の希望に応じ随時実施することも可能とされています。実施する場所も、事務所の内外を画一的に指定するものではないとされています。

事業所には面談できる場所が必要です相談窓口を電話や電子メールにできるとしても、事業所には派遣スタッフと面談できる、個人的な秘密を保持できる場所が必要です。事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上という要件には、この場所の分が含まれています。

会社設立の段階で事業所を探すとき、この面談の場所を確保できるかを確かめてください。相談窓口の要件と事業所の要件は、つながっています。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

三つ目|派遣先の提供を行う手続

派遣先の提供を行う手続を表したイラスト
どの派遣スタッフをどこに紹介するかの手順を定めます。

三つ目が、キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続です。

厚生労働省の許可基準は、次の内容を求めています。派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等が整備されていること。そして、派遣労働者への派遣先の提供は、これに基づいて行われるものであること。

これは、どの派遣スタッフをどの派遣先に紹介するかを、キャリア形成の観点から判断する手順を定めた文書です。

許可申請では、この事務手引・マニュアル等またはその概要の該当箇所の写しを提出することになります。

人材派遣の会社設立では、就業規則・個人情報適正管理規程・教育訓練計画に加えて、この文書も作ることになります。自分で中身を考える書類が四つあるということです。

会社設立の準備で早めに着手してください自分で中身を考える書類は、役所で取る書類と違って時間がかかります。人材派遣の会社設立では、これらに早く着手することが全体の期間を縮める鍵になります。会社設立の登記と並行して進めてください。

会社設立の登記そのものは1〜2週間で終わります。その待ち時間を、こうした書類の作成に充てられるかどうかが、許可申請までの期間を左右します。

就業規則の作成は社会保険労務士の業務です。会社設立の設計の段階から相談しておけば、これらの書類もあわせて整えてもらえます。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

四つ目|教育訓練の時期・頻度・時間数

教育訓練の時間数を表したイラスト
最初の3年間は、毎年概ね8時間以上です。

四つ目が、教育訓練の時期・頻度・時間数です。ここには具体的な数字が示されています。

厚生労働省の許可基準は、次のように定めています。

  1. 派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。また、教育訓練は、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要であり、その後も、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること
  2. 実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること
  3. 派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮しなければならない

二つ目の「毎年概ね8時間以上」が、いちばん具体的な基準です。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、最初の3年間は毎年です。

派遣スタッフが20人いれば、一人あたり年8時間で合計160時間分になります。しかも有給かつ無償で行うことが原則なので、その時間の賃金がかかります。

教育訓練にかかる年間の時間を人数別に示した棒グラフ
交通費の扱いにも定めがあります派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元事業主において負担すべきものであること、とされています。会社設立の収支計画では、この費用も見込んでおいてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

五つ目|計画の周知と、記録の保存

計画の周知と記録の保存を表したイラスト
記録は、労働契約終了後3年間の保存が求められます。

五つ目が、教育訓練計画の周知等です。ここには記録の保存も含まれます。

厚生労働省の許可基準が挙げる内容を並べます。

  • 教育訓練計画の策定に当たっては、派遣労働者との相談や派遣実績等に基づいて策定し、可能な限り派遣労働者の意向に沿ったものとなることが望ましいこと
  • 派遣元事業主は教育訓練計画について、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約を締結する時までに周知するよう努めること
  • 教育訓練計画は事業所に備え付ける等の方法により派遣労働者に周知するとともに、計画に変更があった際にも派遣労働者に周知するよう努めること
  • 段階的かつ体系的な教育訓練計画の内容についての情報を、インターネットの利用その他適切な方法により提供することが望ましいこと
  • 派遣労働者のキャリアアップ措置に関する実施状況等、教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること

五つ目の記録の保存が、実務上いちばん重い項目です。労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間とされています。

そして、この記録は許可の更新のときに見られます。厚生労働省の業務取扱要領は、キャリア形成支援制度に関連する情報(計画・実績等)を労働契約終了から3年間管理する体制を整備することを求めています。

会社設立の段階では、この記録がまだありません。3年後の更新のときに、3年分の記録があることになります。会社設立の準備で記録の仕組みを決めておく意味は、ここにあります。

記録の管理には、派遣元管理台帳を活用することが原則とされています。人事記録等でも構わないとされていますが、記載されていない場合には必要な指導を行うこととされています。

会社設立の段階で記録の仕組みを決める教育訓練の実施記録をどう残し、どう保存するかを、人材派遣の会社設立の段階で決めておいてください。紙で管理するのか、表計算で管理するのか、専用の仕組みを使うのか。あとから作れないものだからです。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

更新のときに、実施状況が見られます

更新のときに実施状況が見られることを表したイラスト
計画だけでは足りません。実施と記録が見られます。

キャリア形成支援制度は、許可を取るときだけの話ではありません。更新の審査で、実施状況が見られます。

厚生労働省の業務取扱要領は、更新の判断についてこう書いています。

キャリア形成支援制度を有することについては、その許可の基準の判断においてキャリアアップに資する教育訓練の内容となっていることや、希望する全ての派遣労働者に対するキャリアコンサルティングの相談窓口の設置を要することとなっている。このため、更新申請の直前の有効期間内において、これら「キャリア形成支援制度を有すること」について許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとともに必要な指導を行い、例えば、計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして、許可を更新しないこととする。

— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領

つまり、計画を作っただけでは足りません。実際に実施し、記録を残していたかが見られます。

人材派遣の会社設立の段階で教育訓練計画を作るとき、実行できる内容にしておく意味は、ここにあります。立派な計画を作っても、実施していなければ更新で問題になります。

許可基準を満たしていないと判断されることがあります業務取扱要領は「計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして、許可を更新しないこととする」としています。実施していなければ、許可を失う可能性があるということです。

そして、許可基準にはもうひとつ定めがあります。キャリア形成支援制度を適正に実施しようとしない者、または経過措置期間中の(旧)特定労働者派遣事業を実施していた者であって、キャリア形成支援制度を有する義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと。

出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

まとめ|キャリア形成支援制度で用意するもの

キャリア形成支援制度で用意するものをまとめたイラスト
作るだけでなく、運用していくものです。

キャリア形成支援制度として用意するものを、まとめます。

キャリア形成支援制度として用意するもののチェックリスト

この六つは、許可申請のために作るだけでなく、実際に運用していくものです。更新の審査で、実施状況が見られるからです。

人材派遣の会社設立の段階で、実行できる内容にしておいてください。そして、誰が担当するのか、どう記録するのかを決めておいてください。

あわせて、教育訓練にかかる費用も会社設立の収支計画に見込んでおいてください。受講時間の賃金、社会保険料の事業主負担、教材費や外部講師の費用、相談窓口の担当者の人件費。これらが毎年かかります。

人材派遣の会社設立では、この費用が利益を圧迫し、基準資産額の積み上がりにも影響します。許可の要件である以上、実施しないという選択肢はありません。最初から見込んでおいてください。

この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

作るだけでなく、運用します

キャリア形成支援制度は、許可申請のためだけに作る書類ではありません。派遣スタッフを雇い、実際に運用していくための土台です。

そして許可の更新のときには、この制度が基準を満たす実施状況であったかが確認されます。計画はあっても実施されていなければ、更新されないことがあります。

内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。

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