廃業と許可の取消し。人材派遣の会社設立の前に知っておく終わり方
始める前に、終わり方も知っておきたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、うまくいかなかった場合に何が起こるのかを知っておきたい方に向けた記事です。
労働者派遣事業には、改善命令、事業停止命令、許可の取消し、廃止の届出といった規定があります。始めるときだけでなく、終わるときにも手続きがあります。
そして、終わり方によっては、その後5年間、新たに許可を受けられないことがあります。始める前に知っておいてください。
行政の対応は、段階を踏みます

労働者派遣事業に問題があった場合、行政はどう動くのか。条文から整理します。

いちばん上の指導及び助言の段階で直せば、そこで終わります。
しかし、直さなければ次の段階に進みます。
法第14条第1項は、この法律若しくは職業安定法の規定又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したときなどに、許可を取り消すことができると定めています。
そして法第60条第1号は、法第49条の規定による処分に違反した者を6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。
人材派遣の会社設立では、この段階を理解しておいてください。最初の指導を軽く見なければ、取消しまで進むことは避けられます。
そして、法第51条第1項には立入り及び検査の定めがあります。法第61条第6号は、この立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者を30万円以下の罰金に処するとしています。
人材派遣の会社設立では、調査に応じられる体制を作っておいてください。記録が整っていれば、調査そのものは恐れるものではありません。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
許可が取り消されると何が起こるか

許可が取り消されれば、労働者派遣事業を続けることはできません。
労働者派遣法第5条第1項は、労働者派遣事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。許可がなければ行えないということです。
そして、許可を受けないで労働者派遣事業を行った者は、同法第59条第2号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります。
つまり、取消しのあとに事業を続ければ、無許可での事業になるということです。
実際には、次のことが同時に起こります。
- 派遣先との労働者派遣契約を続けられなくなります。
- 派遣スタッフの就業先がなくなります。
- 雇用契約が続いていれば、雇用の責任は残ります。
- 収入が止まりますが、賃金や家賃の支払いは残ります。
- 取引先や派遣スタッフからの信用を失います。
三つ目と四つ目に注目してください。事業が止まっても、雇用の責任がすぐに消えるわけではありません。
人材派遣の会社設立を考えるなら、この結末を視野に入れてください。人を雇う事業だからこそ、止まったときの影響が大きくなります。
そして、事業停止命令の段階でも影響は大きくなります。法第14条第2項は、期間を定めて労働者派遣事業の全部又は一部の停止を命ずることができると定めています。
停止の期間中も、雇用契約が続いていれば賃金の問題は残ります。人材派遣の会社設立では、この場面も想定しておいてください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
5年間、新たに許可を受けられません

取消しのあとにも制限があります。
労働者派遣法第6条第5号は、法第14条第1項の規定により労働者派遣事業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者を欠格事由としています。
そして第6号は、取り消された者が法人である場合において、取消しの処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員であった者で、取消しの日から起算して5年を経過しないものを欠格事由としています。
つまり、会社が取り消されれば、当時の役員個人も5年間は新たに許可を受けられないということです。
そして、第11号は、法人であって、その役員のうちに各号のいずれかに該当する者があるものを欠格事由としています。
したがって、その役員が別の会社を作っても、その会社が許可を受けられないことになります。
人材派遣の会社設立を考えている方にとって、これは重い規定です。一度の取消しが、5年間の制限になるからです。
役員の範囲も広く定められています。第6号は、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む、としています。
そして、法第6条第1号は、拘禁刑以上の刑に処せられた者などについても、一定の期間を経過しない者を欠格事由としています。労働者派遣法の罰則の対象になれば、この規定にも関わり得ます。
人材派遣の会社設立では、適法に事業を行うことが、そのまま将来の選択肢を守ることにもなります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
取消しを避けるための廃業も、定めの対象です

では、取消しの処分が来る前に自分から廃業すればどうか。
この点についても定めがあります。
労働者派遣法第6条第7号は、許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から、処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に、法第13条第1項の規定による労働者派遣事業の廃止の届出をした者について定めています。
当該事業の廃止について相当の理由がある者を除き、届出の日から起算して5年を経過しないものは欠格事由に当たるとされています。
そして第8号は、その期間内に廃止の届出をした者が法人である場合について、第7号の通知の日前60日以内に当該法人の役員であった者を対象としています。
つまり、処分を避けるために廃業しても、結果は変わらないということです。
人材派遣の会社設立を考えている方には、遠い話に思えるかもしれません。しかし、こうした規定があるということ自体が、この事業の性格を示しています。
退出のしかたまで規定されている。それが労働者派遣事業です。
人材派遣の会社設立を考える段階で、この点を知っておくことには意味があります。規制の設計思想が分かるからです。
労働者派遣事業は、許可を受けて始め、要件を維持しながら続け、決められた手続きで終える。その全体が制度になっています。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
普通に廃業する場合の手続き

問題があって取り消されるのではなく、事業を畳むという場合もあります。
労働者派遣法第13条第1項は、派遣元事業主は当該労働者派遣事業を廃止したときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならないと定めています。
そして同条第2項は、この届出があったときは第5条第1項の許可がその効力を失うと定めています。
つまり、廃業にも手続きがあるということです。
そして、事業を畳むということは、派遣スタッフの雇用をどうするかという問題でもあります。
雇用契約が続いていれば、その扱いを決めることになります。労働基準法や労働契約法の定めに従うことになるため、社会保険労務士にご相談ください。
派遣先との契約も、終了の手続きが必要です。
人材派遣の会社設立では、始めるときだけでなく、畳むときにも手続きと責任があると理解しておいてください。
そして、廃業を決めるまでにも段階があります。資金が尽きる前に判断できれば、派遣スタッフの次の就業先を探す時間も取れます。
人材派遣の会社設立では、どこまで下がったら畳むかという線を、あらかじめ考えておくという方法もあります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
更新できないという終わり方もあります

取消しでも廃業でもなく、更新できずに終わるということもあります。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。
更新の申請は、当該許可の有効期間が満了する日の3か月前までに事業主管轄労働局に提出しなければならないとされています。申請日の超過は認められません。
つまり、期限を過ぎれば申請できないということです。
そして、申請しても要件を満たしていなければ更新されません。厚生労働省の業務取扱要領は、更新申請の際にも許可の基準を満たすことが必要である旨を示しています。
基準資産額が2,000万円に事業所数を乗じた額以上であること。基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること。事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に事業所数を乗じた額以上であること。
会社設立のときに積んだ資本金も、赤字が続けば減っていきます。
人材派遣の会社設立では、更新の時期を年間の予定に組み込んでください。そして、利益が残る価格設計にしておいてください。
そして、更新の審査では運営状況も見られます。厚生労働省の業務取扱要領は、キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の許可の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとしています。
教育訓練を実施し、記録を残していなければ、ここで問題になります。会社設立の段階で、この仕組みを作っておいてください。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
始める前に、引き受けるものを確かめる

ここまでを踏まえて、人材派遣の会社設立で引き受けるものを整理します。

これらをすべて引き受けるのが、人材派遣の会社設立です。
そのうえで、継続的な収入が積み上がるという利点があります。派遣スタッフが増えれば、毎月の収入も増えます。
しかし、それは負担も同時に増えるということです。
人材派遣の会社設立では、この両面を見て判断してください。良い面だけを見て始めれば、あとで困ります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
それでも進むなら、備えることです

引き受けると決めたなら、備えることです。
資金を厚く用意する。資産要件を満たす額に加えて、許可までの固定費と賃金の立替資金を用意します。
記録の仕組みを作る。派遣元管理台帳、教育訓練の記録、就業条件の明示、情報提供の元になる集計。
年間の予定を作る。決算、申告、事業報告書、情報提供の更新、労使協定の締結、許可の更新。
月次で数字を見る。現金・預金の残高、純資産の額、粗利、稼働率。
相談先を決める。税理士、社会保険労務士、そして所管の都道府県労働局。
これらは、会社設立の準備期間に作れます。許可が下りるまでの期間は、この作業に使える時間です。
人材派遣の会社設立では、この時間を無駄にしないでください。準備が整っていれば、許可が下りた翌日から動けます。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|終わり方から見た人材派遣

人材派遣の会社設立と、事業の終わり方について、まとめます。
- 行政の対応は段階を踏む。 指導、勧告、改善命令、事業停止命令、許可の取消し。
- 取消しになれば事業は止まる。 それでも雇用の責任は残ります。
- 取消しから5年間、新たに許可を受けられない。 当時の役員個人も対象になります。
- 取消しを避けるための廃業も定めの対象。 相当の理由がある場合を除きます。
- 普通の廃業にも届出が要る。 届出があれば許可は効力を失います。
- 更新できずに終わることもある。 期限を過ぎれば申請できません。
- 引き受けるものを先に確かめる。 資金、雇用、記録、要件の維持、行政の監督。
労働者派遣事業は、人の雇用に直接関わる事業です。だからこそ、始めるときも続けるときも終わるときも規定があります。
人材派遣の会社設立を考えるなら、この全体を見てから判断してください。そして、進むと決めたら、備えることです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の公表資料により確認したものです。法令は改正されます。個別の事案の判断は所管の都道府県労働局が行います。労務の手続きは社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
終わり方まで見てから、始めてください
労働者派遣事業は、人の雇用に直接関わる事業です。だからこそ、始めるときも続けるときも終わるときも規定があります。
人材派遣の会社設立を考えるなら、この全体を見てから判断してください。良い面だけを見て始めれば、あとで困ります。
個別の事案の判断は所管の都道府県労働局が行います。労務の手続きは社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。
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