事業所の実地確認では何を見られるのか。人材派遣の会社設立で整えておくこと
実地確認を控えている方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、労働者派遣事業の許可申請の実地確認を控えている方に向けた記事です。
これから事業所を探す方にも読んでいただけます。何を見られるかが分かれば、物件を選ぶ基準も決まるからです。
実地確認は、書類だけでは分からない部分を確かめるための手続きです。事業所としての実体があるかどうかが見られます。
実地確認は、審査の一部です

労働者派遣事業の許可の審査は、二つの面で行われます。提出された書類の確認と、事業所の実地確認です。
多くの許認可は書類の審査だけで完結しますが、人材派遣では現地を見られます。これは、事業所に面積や設備の要件があるためです。
厚生労働省の許可基準は、事業所について「事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること」としています。
この「事業に使用し得る面積」や「位置、設備等」は、書類だけでは確かめられません。だから現地を見ることになります。
人材派遣の会社設立を進めるとき、この実地確認があることを前提に事業所を用意してください。図面上の数字だけを見て契約すると、あとで問題になります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
面積|事業に使用し得る面積

実地確認でいちばん基本になるのが面積です。厚生労働省の許可基準は、労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あること、としています。
「事業に使用し得る面積」という書き方に注意してください。契約書に書かれた面積ではなく、実際に労働者派遣事業に使える面積です。
賃貸物件の契約書に書かれた面積には、共用部分が含まれていることがあります。エレベーターホールや廊下、給湯室といった部分です。これらは事業に使用し得る面積には含まれないと考えられます。
また、他の事業と共用している部分がある場合も、その扱いが問題になります。人材派遣以外の事業もしている会社では、この点を確かめておいてください。
会社設立の段階で物件を選ぶとき、実際に使える面積が20平方メートル以上あるかを、間取り図と現地の両方で確かめてください。
人材派遣の会社設立で物件を選ぶとき、ぎりぎりの面積の物件を選ぶのは避けたほうが安全です。20平方メートルちょうどの物件では、共用部分の扱いや区画の配置で足りなくなることがあります。
会社設立の資金計画では、この面積の分の家賃を見込んでおいてください。おおむね20平方メートル以上という条件がある以上、家賃を極端に抑えることはできません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
区画|面談できる場所があるか

面積とあわせて見られるのが、区画です。派遣スタッフと面談できる場所があるかどうかです。
労働者派遣事業の許可の要件には、キャリアコンサルティングの相談窓口の設置が含まれています。そして、個人情報を適正に管理するための措置も求められます。
派遣スタッフの相談を受けるとき、他の人に聞かれない場所が必要になります。オープンなスペースだけでは足りません。
区画をつくる方法はいくつかあります。
- 独立した個室を用意する
- パーテーションで仕切る
- 共用の会議室を使えるようにする(ただし独立性の判断が問題になることがあります)
- 時間を区切って専用に使える場所を確保する
どの方法が認められるかは、物件の状況によって変わります。所管の都道府県労働局にご確認ください。
人材派遣の会社設立で物件を選ぶとき、床面積の数字だけでなく、この配置ができるかどうかを見てください。
たとえば、20平方メートルのワンルームであれば、机を二つ置いて、キャビネットを置いて、そのうえで面談できる区画を取る必要があります。パーテーションで仕切るとしても、話が聞こえない程度の距離が要ります。
会社設立の準備で内見に行くとき、この配置を想像しながら見てください。図面だけでは判断が難しい部分です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
独立性|他社と共用していないか

事業所としての独立性も見られます。他社と同じ部屋を共有していないかという点です。
シェアオフィスやコワーキングスペースを事業所にできるかという問いは、ここに関わります。
独立性が問題になるのは、二つの理由からです。ひとつは個人情報の管理、もうひとつは事業所としての実体です。
個人情報については、取り扱う職員以外の者によるアクセスを防止するための措置が求められます。他社の人が自由に出入りする空間では、この措置が難しくなります。
事業所としての実体については、その場所が労働者派遣事業のために使われていることが分かる必要があります。誰でも使える共用スペースでは、判断が難しくなります。
会社設立の段階でシェアオフィスを検討している場合、契約の前に労働局に相談してください。物件の間取り図と契約の形態を持って行けば、具体的な話ができます。
独立性の判断は、契約の形態にも関わります。専有の区画を借りる契約なのか、共用スペースの利用権を得る契約なのか。前者であれば独立性を主張しやすくなりますが、後者では難しくなります。
人材派遣の会社設立で費用を抑えたいという気持ちは分かります。ただ、事業所の要件は許可の要件のひとつです。ここを削ろうとすると許可が下りず、結果として高くつきます。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
備品|施錠できる保管場所

実地確認では、備品も見られます。とくに、個人情報を保管する場所です。
厚生労働省の許可基準は、個人情報管理の措置として次のような内容を求めています。個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置、紛失・破壊及び改ざんを防止するための措置、取り扱う事業所内の職員以外の者によるアクセスを防止するための措置、保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置。
三つ目の「アクセスを防止するための措置」に対応するのが、施錠できる保管場所です。鍵のかかるキャビネットや書庫がこれにあたります。
人材派遣は、派遣スタッフの履歴書や職務経歴、資格、健康情報といった個人情報を大量に扱う事業です。この管理の仕組みは、実地確認でも見られます。
会社設立の開業準備の費用に、この備品を入れておいてください。事業所の要件に関わる部分なので、削れません。
あわせて、個人情報適正管理規程も作成することになります。個人情報を取り扱う職員の範囲、職員への教育、開示・訂正の取扱い、苦情処理の体制。これらを含む規程です。
実地確認では、この規程に沿った措置が実際に講じられているかも見られます。会社設立の段階で規程を作り、それに合わせた備品と運用を用意しておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
表示|事業所であることが分かるか

事業所であることが分かる表示も、実地確認で見られる項目です。
入口や郵便受けに社名が表示されているか、その場所が会社の事業所として使われていることが外から分かるか、といった点です。
これは、事業所としての実体を確かめるためのものと考えられます。住所だけを借りている形態では、この表示ができないことがあります。
会社設立の段階で物件を決めるとき、社名の表示ができるかどうかも確かめておいてください。賃貸物件では、表示について制限があることもあります。
あわせて、許可を受けたあとには許可証を事業所に備え付けることになります。この場所も考えておいてください。
会社設立の登記では、本店所在地を定款に書き、登記事項として公示します。この住所は登記事項証明書に載り、誰でも確認できます。一方、労働者派遣事業の事業所は労働局への届出の対象です。
二つを一致させれば、手続きも管理も簡単になります。分ける場合は、それぞれの要件と手続きを別に考えることになります。会社設立の段階で、どちらにするかを決めておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
人|派遣元責任者と職務代行者の席

実地確認では、人の体制も見られます。派遣元責任者と職務代行者がそこで仕事をする形になっているかどうかです。
厚生労働省の許可基準は、組織的基礎について「派遣労働者数に応じた派遣元責任者が配置される等組織体制が整備されるとともに、労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、指揮命令に混乱の生ずるようなものではないこと」としています。
つまり、派遣元責任者がその事業所で仕事をする体制であることが分かる状態にしておく必要があります。
具体的には、派遣元責任者の席、職務代行者の席が用意されているかといった点です。名前だけの選任ではないことを、現地で確かめられることになります。
人材派遣の会社設立で、派遣元責任者や職務代行者を名義だけで置こうとする発想があれば、この段階で問題になります。許可基準は名義貸しを明確に否定しています。
会社設立の段階で、誰が派遣元責任者になり、誰が職務代行者になるかを決めておいてください。そして、その人たちがその事業所で仕事をする形にしておいてください。
事業所を複数持つ計画がある場合は、事業所ごとに派遣元責任者を選任する必要があります。それぞれの事業所で実地確認が行われることになります。会社設立の段階で複数拠点を計画している場合、この負担も見込んでおいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実地確認までに整えるチェックリスト

実地確認までに整えておくことを、一覧にします。

この九つのうち、上の三つは物件そのものに関わります。契約する前に確かめておかないと、あとから直せません。
下の六つは、備品や表示の話です。会社設立の開業準備で用意することになります。費用としては大きくありませんが、忘れると実地確認で指摘を受けます。
人材派遣の会社設立では、この準備を許可申請の前から進めておいてください。申請してから実地確認まで数週間ですが、備品の調達には時間がかかることもあります。
そして、これらの費用を資本金から支払えば、その分だけ基準資産額と自己名義の現金・預金が減ります。人材派遣の会社設立では、この目減りを見込んで資本金に余裕を持たせてください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|実地確認で見られること

事業所の実地確認について、まとめます。
- 実地確認は審査の一部。 書類だけでは確かめられない部分を、現地で見ます。
- 面積は「事業に使用し得る面積」。 契約書の数字ではなく、実際に使える面積です。
- 面談できる区画が必要。 個人的な秘密を保持できる場所です。20平方メートルにこの分が含まれます。
- 事業所としての独立性。 他社と同じ部屋を共有していると、判断が難しくなります。
- 施錠できる保管場所。 個人情報の管理に関する措置です。
- 社名の表示。 事業所としての実体を示します。
- 派遣元責任者と職務代行者の席。 名前だけの選任ではないことを確かめられます。
実地確認で見られるのは、事業所としての実体があるかどうかです。書類の上では整っていても、現地で確かめられます。
会社設立の段階で物件を選ぶとき、この観点を持っておいてください。契約してから要件を満たさないと分かると、移転か区画の追加という手戻りになります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。事業所の要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実体があるかどうかが見られます
実地確認で見られるのは、事業所としての実体があるかどうかです。面積、区画、備品、表示。書類の上では整っていても、現地で確かめられます。
会社設立の段階で物件を選ぶとき、この観点を持っておいてください。契約してから要件を満たさないと分かると、移転か区画の追加という手戻りになります。
事業所の要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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