人材紹介と人材派遣を兼業するなら。会社設立からの順番と負担
両方やろうと考えている方へ
人材のビジネスで会社設立を考えていて、人材紹介と人材派遣の両方を扱おうとしている方に向けた記事です。
両方を行うには、それぞれの許可が必要です。定款の事業目的にも両方を書くことになります。
同時に取るのか、片方から始めるのか。順番によって、会社設立のときに用意する金額も変わります。
両方やるには、二つの許可が必要です

人材紹介と人材派遣の両方を行うには、それぞれの許可が必要です。
労働者派遣法第5条第1項は、労働者派遣事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。
職業安定法第30条第1項は、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。
この二つは別の許可です。労働者派遣事業の許可を持っていても、有料職業紹介事業はできません。逆も同じです。
そして、許可を受けないで労働者派遣事業を行えば、労働者派遣法第59条第2号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります。
人材派遣の会社設立で両方を計画している場合、それぞれの申請が必要になる点を最初に理解しておいてください。
申請の窓口も、それぞれの手続きがあります。同じ都道府県労働局に提出することになりますが、書類は別です。
手数料も、それぞれにかかります。労働者派遣事業では収入印紙12万円と登録免許税9万円です。有料職業紹介事業の手数料の額は、厚生労働省の案内でご確認ください。
そして、それぞれの制度に禁止規定があります。労働者派遣事業では港湾運送業務、建設業務、警備業務などについて労働者派遣事業を行ってはならないとされ、有料職業紹介事業でも取り扱ってはならない職業が定められています。
人材派遣の会社設立で扱う分野を決めるとき、両方の禁止規定を確かめてください。片方では扱えても、もう片方では扱えないという場合があり得ます。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
定款の事業目的をどう書くか

会社設立のときに作る定款には、事業目的を記載します。
労働者派遣事業の許可を受けるには、定款の事業目的に労働者派遣事業を行う旨が記載されていることが求められます。
有料職業紹介事業についても同じです。事業目的に記載がなければ、許可申請の段階で指摘されます。
そして、あとから追加するには定款変更の手続きが必要です。
- 株式会社の場合
- 株主総会の特別決議が必要です
- 合同会社の場合
- 総社員の同意が必要です(定款に別段の定めがある場合を除く)
- 登記
- 目的の変更登記を申請します
- 登録免許税
- 変更登記にかかります。金額は法務局の案内でご確認ください
- 期間
- 決議から登記完了まで、数日から数週間かかります
- 許可申請への影響
- 登記が終わるまで、許可申請の準備が進みません
最後の行が重要です。定款を直している間、許可申請は待つことになります。事業開始の時期が後ろにずれるということです。
人材派遣の会社設立では、扱う事業を先に決めて、最初から定款に書いてください。将来やるかもしれない事業を書いておくこともできます。
ただし、事業目的をむやみに増やすと、金融機関や取引先から見たときに事業内容が分かりにくくなります。ここは判断が要る部分です。
なお、事業目的の記載ぶりについては、所管の都道府県労働局が確認します。表現が適切かどうか不安があれば、定款を作る前に相談しておくと確実です。
出典商業・法人登記の申請書様式 (法務局/2026年8月27日確認)
資産の要件は、それぞれにあります

両方の許可を取る場合、資産の要件もそれぞれに満たすことになります。
労働者派遣事業では、基準資産額が2,000万円に事業所数を乗じた額以上であること、基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること、事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に事業所数を乗じた額以上であることが求められます。
有料職業紹介事業にも財産的基礎に関する要件があります。水準は労働者派遣事業と異なります。詳しくは厚生労働省の案内でご確認ください。
両方を行う場合の資産要件の考え方については、所管の都道府県労働局に確認してください。事業ごとに別々に積み増すのか、どう扱われるのかは、確認して進めるのが確実です。
いずれにしても、会社設立のときに用意する資本金は、労働者派遣事業の水準を基準に考えることになります。
そして、これは維持するものです。厚生労働省の業務取扱要領は、更新申請の際にも許可の基準を満たすことが必要である旨を示しています。
人材派遣の会社設立では、資本金を決める前に所管の都道府県労働局に相談してください。前提が変われば、必要な額も変わります。
そして、事業所を複数持つ場合、労働者派遣事業の資産要件は事業所の数を乗じた額で見られます。拠点を増やす計画があるなら、その分の資産も必要になります。
会社設立の段階では事業所を一つにしておき、事業が軌道に乗ってから増やすという進め方が現実的です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
責任者も、それぞれに必要です

責任者についても、それぞれに定めがあります。
労働者派遣事業では、派遣元責任者の選任が必要です。労働者派遣法第36条の定めによります。
要件としては、未成年者でなく欠格事由に該当しないこと、成年に達した後3年以上の雇用管理の経験を有する者などに該当すること、派遣元責任者講習を受講していること、不在時の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていることが求められます。
講習は、申請の受理の日前3年以内の受講に限るとされています。
有料職業紹介事業では、職業紹介責任者の選任が必要です。こちらにも講習の受講に関する定めがあります。
つまり、両方を行う場合、それぞれの責任者の要件を満たすことになります。講習も別々に受けることになります。
人材派遣の会社設立が一人での立ち上げである場合、代表者が両方を兼ねられるかどうかを確認してください。判断は所管の都道府県労働局が行います。
そして、講習の日程は限られています。受けたいときにすぐ受けられるとは限りません。会社設立の準備と並行して、早めに予定を押さえてください。
さらに、労働者派遣事業では派遣元責任者の不在時に備えて、臨時の職務代行者をあらかじめ選任しておくことも求められます。一人での立ち上げでは、ここも検討が要ります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事務の負担が二倍になります

許可を受けたあとの事務も、それぞれに発生します。

四つ目の更新に注目してください。それぞれの許可に有効期間があり、それぞれに更新の時期が来ます。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。更新の申請は、有効期間が満了する日の3か月前までに提出する必要があります。
有効期間の管理を誤れば、事業を続けられなくなります。人材派遣の会社設立では、この管理の仕組みも作っておいてください。
そして、これらの事務は決算のあとに集中します。決算・申告、事業報告書、情報提供の更新。年間のリズムを決めておかないと、後回しになります。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
片方から始めるという選択

両方を同時に始めるか、片方から始めるか。
同時に始めれば、両方の収益の道が開けます。ただし、準備も費用も二倍です。
片方から始めれば、準備は軽くなります。ただし、あとから追加するときに、あらためて申請の準備をすることになります。
判断の材料を整理します。
- 用意できる資金。 労働者派遣事業の資産要件を満たせるかどうかが最初の壁です。
- 人を雇う体制。 人材派遣は雇用の責任を負う事業です。社会保険の事務も発生します。
- 営業の見込み。 どちらの案件が先に取れそうかという実際的な問題です。
- 事務を担える人数。 二つ分の事務を回せるかどうかです。
- 開業までの期間。 準備が増えれば、事業開始も遅くなります。
資金が限られているなら、人材紹介から始めて資金を貯め、あとから人材派遣に進むという道があります。
逆に、資金があり、人を雇う体制も整っているなら、同時に取るほうが効率的です。定款も一度で済みます。
人材派遣の会社設立では、どちらにしても定款の事業目的には両方を書いておくことをおすすめします。あとから足すより安く済みます。
そして、営業の面では相乗効果もあります。派遣先として付き合いのある会社から、直接雇用の求人をいただくこともあるからです。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
紹介予定派遣を行う場合

紹介予定派遣を行う場合は、両方の許可が前提になります。
紹介予定派遣は、労働者派遣のうち、派遣先に職業紹介をすることを予定して行うものです。一定期間派遣として就業したあと、直接雇用に移ることを予定しています。
派遣の部分には労働者派遣事業の許可が、紹介の部分には有料職業紹介事業の許可が必要です。
そして、労働者派遣法施行令第2条は、適用除外業務のうち医療関係の業務について、紹介予定派遣をする場合を除くとしています。
ただし、これは条件付きの例外です。紹介予定派遣にすればどの業務でもよいということではありません。
人材派遣の会社設立で紹介予定派遣を中心に考えている場合、両方の許可の準備を同時に進めることになります。
そして、派遣期間中の待遇と、直接雇用に移ったあとの待遇の両方を設計することになります。派遣スタッフへの説明も必要です。
出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の日程を組む

両方の許可を目指す場合の日程を組んでみます。

四つ目の並行の行が大切です。責任者講習の受講、就業規則の作成、教育訓練の実施計画の作成は、登記を待たずに進められます。
そして、五つ目の申請から七つ目の開始までのあいだ、売上はありません。その期間の固定費を用意しておいてください。
人材派遣の会社設立では、この日程を先に引いてください。いつ事業を始められるのかが分かれば、必要な資金も見えてきます。
両方の許可を目指す場合、準備する書類も増えます。日程には余裕を持たせてください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|兼業するときの会社設立

人材紹介と人材派遣を兼業するときの会社設立について、まとめます。
- それぞれの許可が必要。 片方の許可では、他方の事業を行えません。
- 定款の事業目的には両方を書く。 あとから追加すれば、手続きと費用がかかります。
- 資産の要件はそれぞれにある。 両方を行う場合の扱いは所管の都道府県労働局にご確認ください。
- 責任者もそれぞれに必要。 講習も別々に受けることになります。
- 事務の負担が二重になる。 事業報告書も更新も、それぞれに来ます。
- 片方から始める道もある。 定款に書いておいて、許可はあとから取れます。
- 紹介予定派遣には両方の許可が前提。
両方をやると決めたなら、定款の事業目的には両方を書いておいてください。許可は必要になったときに取ればよいのです。
そして、事務の負担を軽く見ないでください。人材派遣の会社設立が少人数での立ち上げなら、誰が担うのかを決めてから始めてください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。許可の可否は行政が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
順番を決めてから、定款を作ってください
両方をやると決めたなら、定款の事業目的には両方を書いておいてください。あとから追加すれば、定款変更の手続きと費用がかかります。
ただし、事業目的に書いてあるだけでは許可は下りません。それぞれの要件を満たし、それぞれに申請することになります。
許可の可否は行政が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行は行いません。
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