許可の更新は、1年前から準備する。人材派遣の会社設立から3年後にやること
更新の準備を始める方へ
人材派遣の会社設立から3年が近づき、労働者派遣事業の許可の更新を控えている方に向けた記事です。
これから会社設立をする方にも読んでいただけます。3年後に何が必要になるかが分かれば、いまの設計に反映できるからです。
更新申請の期限は有効期間が満了する日の3か月前で、申請日の超過は認められません。この期限から逆算して準備することになります。
逆算すると、1年前から準備が始まります

労働者派遣事業の許可の更新は、いつから準備を始めればよいのか。期限から逆算してみます。
更新申請の期限は、許可の有効期間が満了する日の3か月前です。厚生労働省の業務取扱要領は、申請日の超過は認められない、としています。
この期限から逆算すると、次のようになります。

いちばん上の「12か月前」に資産要件の確認を置いたのは、足りない場合の対応に時間がかかるからです。
基準資産額が2,000万円を割り込んでいたら、増資をするか、事業で利益を出して回復させるかになります。増資には手続きと変更登記が必要で、しかも決算書に反映されるのは次の決算のときです。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
12か月前|資産要件を計算する

最初にやることは、資産要件の確認です。直近の決算書で、三つの要件を計算します。
| 要件 | 計算 | 事業所1か所の基準 |
|---|---|---|
| 基準資産額 | 資産の総額 − 繰延資産 − 営業権 − 負債の総額 | 2,000万円以上 |
| 自己名義の現金・預金 | 貸借対照表の現金及び預金 | 1,500万円以上 |
| 負債比率 | 基準資産額 ≧ 負債の総額 ÷ 7 | 負債の総額の7分の1以上 |
事業所が複数ある場合は、それぞれの金額に事業所数を乗じます。
三つは別の要件なので、それぞれ計算してください。基準資産額だけを見て安心すると、現金・預金や負債比率で止まることがあります。
人材派遣は、事業が伸びるほど売掛金が増え、現金が減りやすい事業です。派遣スタッフの給与を先に払い、派遣料金を後から受け取る構造だからです。基準資産額を維持できていても、現金・預金が1,500万円を割り込むことがあります。
計算してみて足りないと分かったら、この時点で対応を考えてください。9か月前、6か月前と時間が経つほど、取れる対応が限られます。
会社設立の段階からこの依頼をしておけば、毎期の決算のたびに資産要件の状況が分かります。人材派遣の会社設立では、この習慣が3年後に効いてきます。
逆に、会社設立のときに一度計算しただけで、その後は見ていないという状態が危険です。累積の損益は毎期積み上がっていくため、気づいたときには要件を割り込んでいることがあります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
9か月前|足りない場合の対応を決める

資産要件が足りないと分かった場合、対応を決めるのがこの時期です。
対応の方向は、どの要件が足りないかによって変わります。
- 基準資産額が足りない:増資、役員借入金の資本組入れ、負債の圧縮、利益の積み上げ
- 自己名義の現金・預金が足りない:資産の内訳を見直し、現金として持つ資金を確保する
- 負債比率が足りない:負債の圧縮、または自己資本の増強
- 事業所数の掛け算で足りない:事業所を減らすことも選択肢になります
いずれの対応も時間がかかります。増資であれば、株式会社なら募集株式の発行の手続きと変更登記、合同会社なら定款変更と登記が必要です。決議から登記完了まで数週間かかることがあります。
そして、増資をしてもそれが決算書に反映されるのは決算のときです。更新申請の時点で直近になる決算書に反映されるかどうかを、確かめておく必要があります。
この手続きを使う場合も、公認会計士や監査法人への依頼、決算書の作成、手続きの実施という段取りが必要です。更新申請の期限から逆算して、余裕をもって動いてください。
そして、足りないと分かった時点で所管の都道府県労働局に相談してください。早めに相談するほうが、取れる対応が残ります。
なお、申請の直前だけ数字を作るような対応は勧められません。資産要件は許可の更新のたびに確かめられるため、次の更新でまた同じ問題が起きるからです。会社設立のときと同じで、事業として資産を積み上げていくことが結局いちばん確実です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
6か月前|書類と記録を整える

この時期にやるのが、書類と記録の整理です。更新の審査では、3年間の実施状況が見られるからです。
厚生労働省の業務取扱要領は、更新の判断についてこう書いています。キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとともに必要な指導を行い、計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする。

この段階で不足に気づけば、まだ対応の余地があります。教育訓練を実施していなかったなら、残りの期間で実施することもできます。
逆に、申請の直前に気づいても間に合いません。3年間の実施状況は、あとから作れないからです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
6か月前|派遣元責任者講習を受け直す

更新のときにも、派遣元責任者講習の受講が必要です。
厚生労働省の資料は、更新申請の添付書類として「派遣元責任者講習受講証明書(許可の有効期間が満了する日前3年以内の受講日のものに限る)」の写しを挙げています。
新規の許可では「申請の受理の日前3年以内」でしたが、更新では「有効期間が満了する日前3年以内」です。基準となる日が違うので注意してください。
講習は各地で開催されていますが、日程が埋まることがあります。受講できる日が1か月先になれば、その分だけ更新申請の準備が後ろにずれます。
そして、更新申請の期限は有効期間が満了する日の3か月前で、超過は認められません。講習が受けられずに期限を過ぎる、という事態は避けたいところです。
職務代行者についても、あらかじめ選任されている必要があります。人材派遣の会社設立のときと同じ要件です。人の異動があった場合は、体制を確かめておいてください。
あわせて、キャリアコンサルティングの相談窓口の担当者も確かめておいてください。キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングの知見を有する者、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者のいずれかを配置する必要があります。
会社設立のときに決めた体制が、3年のあいだに変わっていることはよくあります。更新の前に、いまの体制が要件を満たしているかを確かめてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
4か月前|申請書類を作成する

書類と記録が整ったら、申請書類の作成に入ります。
提出する書類の中心は、労働者派遣事業許可有効期間更新申請書(様式第1号)と、事業所ごとの事業計画書(様式第3号、様式第3号-2、様式第3号-3)です。
様式第3号-3は、派遣労働者のうち雇用保険または健康保険・厚生年金保険の未加入者がいる場合にのみ提出するものとされています。
添付書類のうち、定款、登記事項証明書、役員の住民票と履歴書、キャリア形成支援に関する規程、就業規則の該当箇所などは、既に提出されているものに変更があった場合に限る、とされています。
一方、最近の事業年度における貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書、法人税の確定申告書の写しと納税証明書は、更新のたびに提出することになります。資産要件の判定に使われるからです。
申請書類の作成を社会保険労務士に依頼する場合は、この時期までに相談しておいてください。打ち合わせと作成に時間がかかります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
3か月前|申請する

更新申請の期限は、許可の有効期間が満了する日の3か月前です。この日までに、事業主管轄労働局に提出します。
厚生労働省の業務取扱要領は、申請日の超過は認められない、としています。うっかり期限を過ぎた場合の救済は想定されていません。
提出先は、事業主の主たる事務所を管轄する都道府県労働局です。新規の許可申請と同じです。
そして、事業主管轄労働局は、管轄以外の地域で派遣事業を実施する内容の申請を受けた場合、各事業所の事業所管轄労働局に対して申請書の写しと各事業所に関する書類を送付することとされています。
申請したあとは、審査に入ります。3年間の実施状況と資産要件が確かめられ、必要に応じて指導が行われます。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
これから会社設立をする方へ

これから人材派遣の会社設立をする方にとって、この記事の内容は3年先の話です。ただ、いまの設計に反映できることがあります。
| 会社設立で決めること | 更新への影響 |
|---|---|
| 資本金の額 | 基準資産額の出発点。余裕があれば初年度の赤字を吸収できます |
| 決算期 | 更新申請の時点でどの決算書が直近になるかが決まります |
| 役員報酬 | 高く設定すれば利益が減り、基準資産額の回復が遅れます |
| 事業所の数 | 資産要件が事業所数を乗じた額になります |
| 教育訓練計画 | 実行できる内容にしておかないと、更新で問題になります |
| 記録の仕組み | 労働契約終了後3年間の保存。最初に決めておくと楽です |
| 誰が担当するか | 教育訓練、記録、情報提供。担当を決めておかないと後回しになります |
いずれも会社設立の段階で決まる項目です。あとから変えるには手続きと費用がかかります。
とくに、いちばん下の「誰が担当するか」を決めておいてください。教育訓練も記録も情報提供も、売上に直結しないため後回しになりがちです。
一人で人材派遣の会社設立をする場合、これらをすべて自分でこなすことになります。営業と採用に追われて後回しにすると、3年後の更新で問題になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|更新の準備

労働者派遣事業の許可の更新の準備について、まとめます。
- 期限は満了の3か月前。 申請日の超過は認められません。
- 12か月前に資産要件を計算する。 基準資産額・現金預金・負債比率の三つを別々に。
- 9か月前に対応を決める。 増資には手続きと時間がかかり、決算書への反映も次の決算のときです。
- 6か月前に書類と記録を整える。 3年間の実施状況は、あとから作れません。
- 6か月前に講習を受け直す。 有効期間が満了する日前3年以内の受講日のものが必要です。
- 4か月前に申請書類を作成する。 資産の状況を示す書類は、更新のたびに提出します。
- 3か月前に申請する。 超過は認められません。
この逆算からも分かるとおり、更新の準備は1年前から始まります。そして日々の運営、つまり教育訓練の実施や記録の保存は、許可を受けた日から続いています。
人材派遣の会社設立の段階で、これらを続けられる体制を作っておいてください。3年後に慌てないためです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。更新の要件と手続きは所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、資産の維持に関わる設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
逆算すると、1年前から始まります
更新申請の期限は満了の3か月前です。そこから、資産要件の確認、書類の整備、講習の受講、記録の整理を逆算していくと、1年前から準備を始めることになります。
とくに資産要件が足りない場合、対応には時間がかかります。増資には手続きと期間が必要で、しかも決算書に反映されるのは次の決算のときだからです。
更新の要件と手続きは所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、資産の維持に関わる設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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