教育訓練は有給かつ無償。人材派遣の会社設立で見込んでおく費用
教育訓練の費用を見込みたい方へ
人材派遣の会社設立で、教育訓練にかかる費用をどう見込めばよいかを知りたい方に向けた記事です。
教育訓練は労働者派遣事業の許可の要件です。しかも有給かつ無償で行うことが原則とされています。つまり、実施すれば必ず費用がかかります。
会社設立の収支計画に、この費用を最初から入れておいてください。あとから足すと、計画が合わなくなります。
有給かつ無償とは、どういうことか

キャリアアップに資する教育訓練について、厚生労働省の許可基準は「実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること」を求めています。
そして説明が続きます。教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする。
つまり、次のようになります。
- 有給
- 教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払います
- 無償
- 受講にかかる費用を派遣労働者に負担させません
- 結果
- 実施すれば、賃金と費用の両方が会社の負担になります
人材派遣の会社設立で収支計画を立てるとき、この点を見込んでおいてください。教育訓練を実施すれば、必ず費用がかかります。
そして、これは許可の要件です。費用がかかるからやらない、という選択はできません。実施しなければ、許可の更新で問題になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
時間数から、費用を計算する

教育訓練にかかる費用を計算してみます。まず時間数です。
厚生労働省の許可基準は、実施時間数について次のように定めています。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること。
この時間数に人数を掛け、時給を掛ければ、賃金の概算が出ます。

この図は賃金だけの概算です。ここに、教材費や外部講師の費用、会場の費用が加わります。
そして、入職時の教育訓練は別に必要です。派遣労働者全員に対して必須とされているため、採用のたびに発生します。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
賃金以外にかかる費用

教育訓練にかかるのは、受講時間の賃金だけではありません。
- 教材費(テキスト、電子的な学習の教材など)
- 外部講師に依頼する場合の費用
- 会場を借りる場合の費用
- 自社の事業所で行う場合も、その場所の維持費
- 訓練を企画し、資料をつくる時間の人件費
- 実施記録を作成し、保存する手間
- キャリアコンサルティングの相談窓口の担当者の人件費
- 受講のための交通費(派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元の負担)
最後の項目には定めがあります。厚生労働省の許可基準は、派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元事業主において負担すべきものであること、としています。
そして五つ目の「企画する時間の人件費」も見落とされやすい項目です。訓練の内容を考え、資料をつくる作業には時間がかかります。
人材派遣の会社設立で一人に近い体制を考えている場合、この作業も自分でこなすことになります。売上に直結しない時間ですが、許可の要件です。
会社設立の収支計画では、この時間も人件費として見込んでおいてください。自分の時間を使うから費用はゼロ、と考えると計画が甘くなります。その時間を営業に使えば売上になったはずだからです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
助成金という選択肢

教育訓練にかかる費用については、助成金という制度があります。
厚生労働省は、事業主向けの雇用関係助成金をいくつも用意しています。人材派遣と相性のよいものとしては、キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金が挙げられます。
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者について、正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進するため、雇用する労働者に対して職業訓練などを実施した事業主に対して助成する制度です。
ただし、助成金を会社設立の資金計画に組み込むときは注意が要ります。
ですから助成金は、資金計画の柱ではなく、うまくいけば戻ってくるものとして位置づけるのが安全です。人材派遣の会社設立で「助成金があるから資本金は少なくていい」と考えるのは、順序が逆になります。
一方で、教育訓練はどのみち実施しなければなりません。それなら使える助成金は調べておいたほうがよい、という考え方は成り立ちます。
出典事業主の方のための雇用関係助成金 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
助成金を使うときの注意点

助成金を使う場合の注意点を整理します。
- 要件が細かく定められています。 対象となる取組、対象となる労働者、実施の方法、記録の残し方。どれかが欠ければ支給されません。
- 計画の届出が必要な場合があります。 取組を実施する前に計画を届け出る制度もあります。あとから申請しても間に合いません。
- 支給は後払いです。 先に費用を支出し、実施を確認したうえで支給されます。
- 要件は年度ごとに見直されます。 制度が変わることも、廃止されることもあります。
- 雑収入として計上されます。 受け取った期の利益が増えれば、その分の法人税等がかかります。
五つ目について補足します。助成金は原則として返済不要ですが、税務上は収入として扱われます。基準資産額という観点では利益が増えるのは歓迎できますが、納税資金は別に用意しておく必要があります。
そして、助成金の申請には手続きの負担があります。計画の届出、実施、支給申請という段取りがあり、書類の作成に時間がかかります。
人材派遣の会社設立では、社会保険労務士に許可申請の書類作成を依頼することがあります。そのときに、使える助成金についてもあわせて相談してみるとよいでしょう。
出典事業主の方のための雇用関係助成金 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
教育訓練を、採用の材料にするという考え方

教育訓練は許可の要件ですが、それだけではありません。派遣スタッフを集めるときの材料にもなります。
人材派遣は、人を集め続ける事業です。求人を出したとき、応募する側は仕事の内容、勤務地、賃金、就業条件を見ます。そして、その会社で働くことでどう成長できるかも見ます。
キャリアアップに資する教育訓練を用意していること、キャリアコンサルティングの相談窓口があることは、この点で伝えられる情報になります。
そして、教育訓練に関する情報は、情報提供の対象にもなっています。派遣元事業主には、派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項について情報提供することが求められます。
つまり、この情報は公開されるものだということです。人材派遣の会社設立で教育訓練計画を作るとき、公開される前提で考えてください。
義務として最低限を満たすのか、採用の材料になる内容にするのか。ここは考え方が分かれるところです。会社設立の段階で、事業の方向性とあわせて決めてください。
最低限を満たす形にすれば費用は抑えられますが、採用の面では差がつきません。充実した内容にすれば費用は増えますが、派遣スタッフが集まりやすくなるかもしれません。
人材派遣は人を集める事業です。会社設立の段階でこの方向性を決めておくと、教育訓練計画の中身も決まります。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
費用を、収支計画にどう組み込むか

教育訓練の費用を、人材派遣の会社設立の収支計画にどう組み込むかを整理します。
| 項目 | 計上のしかた |
|---|---|
| 受講時間の賃金 | 派遣スタッフの人数×年8時間×時給。毎年発生します |
| 社会保険料の事業主負担 | 受講時間分の賃金にも乗ります |
| 入職時の教育訓練 | 採用のたびに発生します。採用計画から見積もります |
| 教材費・講師の費用 | 訓練の内容によって変わります |
| 企画・記録の人件費 | 内勤の人件費の一部として見込みます |
| 相談窓口の担当者の人件費 | 同じく内勤の人件費として |
| 交通費 | 派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元の負担 |
金額は事業の規模と訓練の内容によって変わります。ご自身の事業計画の数字で計算してください。
この費用は、派遣スタッフの人数に比例して増えます。事業が伸びれば、教育訓練の費用も増えるということです。
そして、この費用は利益を圧迫します。利益が減れば基準資産額の積み上がりが遅くなり、許可の更新に影響します。
人材派遣の会社設立で収支計画を立てるとき、マージンからこの費用を引いた残りで考えてください。派遣料金から派遣スタッフの賃金を引いた部分が、そのまま利益になるわけではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実施しなければ、更新で問題になります

教育訓練の費用がかかるからといって、実施しないという選択はできません。許可の要件だからです。
厚生労働省の業務取扱要領は、更新の判断についてこう書いています。キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとともに必要な指導を行い、計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする。
つまり、実施していなければ許可を失う可能性があるということです。
そして、実施したことを示すには記録が必要です。教育訓練等の情報を管理した資料は、労働契約終了後3年間保存することとされています。労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間です。
記録の管理には、派遣元管理台帳を活用することが原則とされています。人材派遣の会社設立の段階で、この仕組みを決めておいてください。
会社設立から3年後の更新のときには、3年分の記録があることになります。この積み重ねが、許可の維持につながります。
逆に言えば、会社設立から3年のあいだに教育訓練を実施していなければ、更新のときに記録がないということです。あとから作ることはできません。
人材派遣の会社設立を進めるとき、許可を取ることに意識が向きます。ただ、許可を取ったあとの3年間の運営が、次の更新を決めます。会社設立の段階で、続けられる体制を作っておいてください。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|教育訓練の費用

教育訓練にかかる費用について、まとめます。
- 有給かつ無償が原則。 受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払います。
- 時間数は毎年概ね8時間以上。 フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、最初の3年間です。
- 入職時の教育訓練は全員に必須。 採用のたびに発生します。
- 賃金以外の費用もかかる。 教材費、講師の費用、企画と記録の人件費、交通費。
- 助成金は柱にできない。 後払いで、要件を満たさなければ支給されません。
- 費用は人数に比例する。 事業が伸びれば、教育訓練の費用も増えます。
- 実施しなければ更新で問題になる。 記録がなければ、実施していないと判断されかねません。
教育訓練は労働者派遣事業の許可の要件です。費用がかかるからやらない、という選択はできません。人材派遣の会社設立の収支計画に、最初から入れておいてください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。教育訓練の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、助成金の要件は所管の労働局または社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実施しない選択肢はありません
教育訓練は労働者派遣事業の許可の要件です。実施しなければ、許可の更新で問題になります。費用がかかるからやらない、という選択はできません。
だからこそ、会社設立の収支計画に最初から入れておいてください。派遣スタッフが増えれば、この費用も比例して増えます。
教育訓練の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、助成金の要件は所管の労働局または社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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