就業規則に入れる四つの内容。人材派遣の会社設立で他業種の書式が使えない理由
就業規則を用意する方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、就業規則をどうすればよいかを知りたい方に向けた記事です。
労働者派遣事業の許可申請では、就業規則または労働契約の特定の箇所の写しを求められます。そして、その内容には基準があります。
市販のひな形や他業種の会社設立で使われる書式には、この内容が入っていないことがほとんどです。そのまま出せば、指摘を受けます。
許可申請で、就業規則の写しを求められます

労働者派遣事業の許可申請では、就業規則または労働契約の該当箇所の写しを提出します。
厚生労働省の資料は、法人・個人に共通の添付書類として次のように挙げています。就業規則又は労働契約の以下の該当箇所の写し。
そして、その「以下の該当箇所」として四つの内容が示されています。この記事では、その四つを順に見ていきます。
ここで押さえておきたいのは、就業規則そのものを全部提出するのではなく、特定の内容を規定した箇所の写しを提出するということです。
ただし、その内容が就業規則に入っていなければ、写しを取ることもできません。結局のところ、就業規則にこれらの内容を入れておく必要があるということです。
人材派遣の会社設立では、この就業規則を会社設立の準備の段階から用意することになります。役所で取る書類と違って、自分で中身を考える必要があるからです。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
一つ目|教育訓練の受講時間の取扱い

一つ目が、教育訓練の受講時間の取扱いです。
厚生労働省の資料は、就業規則または労働契約の該当箇所として次のように挙げています。教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分。
そして許可基準は、実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであることを求め、教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする、と説明しています。
あわせて、これらの取扱いは就業規則又は労働契約等に規定することとする、とも書かれています。
つまり、教育訓練を有給で行うということを、就業規則に書いておく必要があるということです。実際に有給で行っていても、規定がなければ写しを提出できません。
人材派遣の会社設立で就業規則を作るとき、この条項を必ず入れてください。他業種の書式には、まず入っていない内容です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
二つ目|無期雇用の派遣労働者の解雇

二つ目が、無期雇用の派遣労働者の解雇に関する規定です。ここが、他業種の書式をそのまま使えない最大の理由になります。
厚生労働省の許可基準は、派遣元事業主に関する判断として次のように定めています。無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
「規定がないこと」という書き方に注意してください。何かを書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があるということです。
市販の就業規則のひな形や、他業種の会社設立で使われる書式には、契約の終了によって解雇できるという趣旨の条項が入っていることがあります。そのまま提出すれば、指摘を受けます。
この規定が置かれている理由は、派遣スタッフの雇用の安定にあります。派遣先との契約が終わったからといって、雇用そのものを終わらせることはできない、という考え方です。
そして、これは会社の資金繰りに直結します。派遣先との契約が終わっても、派遣スタッフの雇用は続きます。次の派遣先が見つかるまでのあいだ、人件費は出ていきます。
この条項の有無は、許可の審査で確認されます。そして許可を受けたあとも、就業規則を変更する場合には同じ基準が働きます。契約終了で解雇できる条項をあとから入れることはできない、ということです。
人材派遣の会社設立で就業規則を作るとき、この点を理解したうえで作ってください。単に条項を削るのではなく、そういう事業なのだと理解しておく必要があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
三つ目|有期雇用の派遣労働者の解雇

三つ目が、有期雇用の派遣労働者についての同じ規定です。
厚生労働省の許可基準は、次のように定めています。有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
ここで区別が必要です。労働者派遣契約と労働契約は、別のものです。
- 労働者派遣契約
- 派遣元と派遣先のあいだの契約。この派遣スタッフをこの条件で派遣する、という内容です
- 労働契約
- 派遣元と派遣スタッフのあいだの契約。雇用の契約です
- 対象になる場合
- 労働者派遣契約が終わっても、労働契約がまだ続いている場合
- 求められること
- 労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
つまり、労働契約の期間がまだ残っているのに、派遣先との契約が終わったという理由だけで解雇することはできない、ということです。
この点も、会社の資金繰りに関わります。労働契約の期間が残っていれば、その期間は雇用が続きます。
そして、労働者派遣法には雇用安定措置という仕組みもあります。同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがある派遣労働者について、派遣元事業主が講ずべき措置が定められています。
この雇用安定措置についても、許可の更新の審査で実施状況が確認されます。会社設立の段階では書類の話に見えますが、実際の運用として続いていくものです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
四つ目|休業手当を支払う旨

四つ目が、休業手当に関する規定です。
厚生労働省の許可基準は次のように定めています。無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があること。
前の二つとつながっています。派遣契約が終わっても解雇できない。では、次の派遣先が見つかるまでどうするのか。休業させる場合には手当を払う、というのがこの規定です。
労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中の労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない、と定めています。
この三つの規定を合わせると、人材派遣という事業の性質が見えてきます。派遣先との契約が終わっても、雇用と賃金の支払いが続くということです。
人材派遣の会社設立で資金計画を立てるとき、この点を必ず入れてください。稼働がゼロでも人件費が止まらない事業だということです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労働者派遣契約の終了・変更・解雇に関する事項

厚生労働省の資料は、もうひとつの該当箇所を挙げています。労働者派遣契約の終了に関する事項、変更に関する事項及び解雇に関する事項について規定した就業規則又は労働契約の該当箇所の写し等。
これは、前の三つとまとめて確認される内容です。労働者派遣契約が終わったとき、変わったとき、そして解雇について、就業規則にどう書かれているかということです。
人材派遣に固有の内容なので、他業種の就業規則には出てきません。会社設立の段階で、新しく書き加えることになります。
そして、これらの規定は実際の運用にも関わります。派遣先との契約が終わったときに、派遣スタッフにどう対応するのか。就業規則に書いたとおりに運用する必要があります。
形式を整えるだけでなく、実際に運用できる内容にしておいてください。運用できない規定を書いても、あとで困ることになります。
人材派遣の会社設立では、この就業規則が事業の運営そのものを規定します。作成の段階から、実務を想定して作ってください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
なぜ他業種の書式が使えないのか

ここまで見てきた内容は、いずれも人材派遣に固有のものです。他業種の就業規則には出てきません。

そして、右側の二つ目は「規定がないこと」を求められる項目です。書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があるということです。
市販のひな形には、契約の終了によって解雇できるという趣旨の条項が入っていることがあります。これを削る必要があります。
人材派遣の会社設立で就業規則を用意するとき、既存の書式をそのまま使わないでください。一度、この四つの観点で確かめてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
作成は社会保険労務士の業務です

就業規則の作成や労働社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務です。
人材派遣の会社設立では、労働者派遣事業の許可申請の書類作成・提出代行も社会保険労務士の業務です。あわせて依頼できるため、相性のよい組み合わせになります。
会社設立の設計の段階から相談しておけば、就業規則の整備も早く進みます。そして、許可申請の準備も一緒に見てもらえます。
自分で作る場合も、最終的には所管の都道府県労働局の確認を受けることになります。要件を満たしているかどうかの判断は、労働局が行うからです。
この記事は、何を依頼するのかを知っていただくために基準の中身を書いています。実際の作成は、専門家にご相談ください。
そして、就業規則は作って終わりではありません。法改正への対応や、実際の運用に合わせた見直しが必要になります。継続的な相談先を持っておくと安心です。
あわせて、就業規則の作成や変更にあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の意見を聴くこととされています。この手続きも必要になります。
人材派遣の会社設立では、派遣スタッフを雇い始めてからこの手続きが関わってきます。会社設立の段階で就業規則を作っておき、雇用が始まったら届出という流れになります。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|就業規則に入れる内容

人材派遣の会社設立で用意する就業規則について、まとめます。
- 許可申請で該当箇所の写しを提出する。 就業規則そのものではなく、特定の内容を規定した箇所です。
- 一つ目:教育訓練の受講時間の取扱い。 労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする旨。
- 二つ目:無期雇用の派遣労働者の解雇。 労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
- 三つ目:有期雇用の派遣労働者の解雇。 契約終了時に労働契約が存続している者について同じです。
- 四つ目:休業手当。 使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨。
- 「規定がないこと」に注意。 書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があります。
- 他業種の書式は使えない。 人材派遣に固有の内容だからです。
- 作成は社会保険労務士の業務。 許可申請の書類作成もあわせて依頼できます。
この四つの内容は、人材派遣という事業の性質を表しています。派遣先との契約が終わっても、雇用と賃金の支払いが続くということです。
人材派遣の会社設立で資金計画を立てるとき、この点を必ず入れてください。稼働がゼロでも人件費が止まらない事業だからです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
作成は社会保険労務士の業務です
就業規則の作成や労働社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務です。この記事は、何を依頼するのかを知っていただくために基準の中身を書いています。
人材派遣の会社設立では、この就業規則が許可の要件に関わります。会社設立の設計の段階から相談しておけば、あとが早く進みます。
内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
この記事のタグ
この記事は判断の材料になりましたか?