就業規則の届出と、その後の運用。人材派遣の会社設立から続く手続き
届出と運用を知りたい方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、就業規則の届出や運用について知りたい方に向けた記事です。
就業規則には二つの手続きがあります。労働者派遣事業の許可申請で写しを提出することと、労働基準監督署に届け出ることです。この二つは別のものです。
そして、作って終わりではありません。法改正への対応や、実際の運用に合わせた見直しが続きます。
就業規則には、二つの手続きがあります

人材派遣の会社設立で就業規則を用意するとき、二つの手続きが関わってきます。
- 許可申請での写しの提出
- 労働者派遣事業の許可申請の添付書類として、特定の内容を規定した箇所の写しを提出します
- 労働基準監督署への届出
- 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成して届け出る必要があります
- 窓口
- 前者は都道府県労働局、後者は労働基準監督署
- 時期
- 前者は許可申請のとき、後者は常時10人以上になったとき
- 根拠
- 前者は労働者派遣事業の許可基準、後者は労働基準法
この二つは別の手続きです。許可申請で写しを提出したからといって、労働基準監督署への届出が済むわけではありません。
そして、時期も違います。許可申請は会社設立の直後ですが、労働基準監督署への届出は常時10人以上の労働者を使用する事業場になったときです。
人材派遣の会社設立の直後は、派遣スタッフがまだいません。それでも就業規則は用意することになります。許可申請で写しを提出するからです。
そして事業が始まり、派遣スタッフが増えれば、労働基準監督署への届出も必要になります。会社設立の段階で、この二つを分けて理解しておいてください。
そして、就業規則があることは派遣スタッフにとっての安心にもつながります。労働条件が明文化されていれば、就業条件の説明もしやすくなります。人材派遣は人を集める事業なので、この点も無視できません。
会社設立の段階では、まだ派遣スタッフがいません。それでも、雇い始めたときのことを想定して作ることになります。実務を想像しながら作ってください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可申請では、何を提出するのか

労働者派遣事業の許可申請では、就業規則そのものではなく、特定の内容を規定した箇所の写しを提出します。
厚生労働省の資料が挙げる該当箇所を並べます。
- 教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分
- 無期雇用の派遣労働者を、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類。また、有期雇用の派遣労働者についても、契約終了時に労働契約が存続している者について同様である旨を証する書類
- 労働者派遣契約の終了に関する事項、変更に関する事項及び解雇に関する事項について規定した就業規則又は労働契約の該当箇所の写し等
- 使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に、労働基準法第26条に基づく手当を支払うことを規定した部分
これらの内容が就業規則に入っていなければ、写しを取ることもできません。結局のところ、就業規則にこれらを入れておく必要があるということです。
そして、二つ目は「解雇できる旨の規定がないこと」という形で許可基準に定められています。書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があるということです。
人材派遣の会社設立で就業規則を作るとき、既存の書式をそのまま使わないでください。この四つの観点で確かめる必要があります。
実務的には、就業規則にまとめておくほうが管理しやすいでしょう。変更のときも、就業規則を直せば全員に及びます。個々の労働契約に書いていると、全員分を直すことになります。
人材派遣の会社設立で、どちらの形にするかを決めておいてください。派遣スタッフの人数が増えることを想定すると、就業規則にまとめるほうが現実的です。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労働基準監督署への届出

労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して行政官庁に届け出ることを求めています。届出先は労働基準監督署です。
この「常時10人以上」は事業場ごとに数えます。人材派遣の場合、派遣スタッフをどう数えるかという問題が出てきます。取扱いは労働基準監督署にご確認ください。
届出には、就業規則そのものに加えて、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の意見を記した書面を添えることとされています。
そして、就業規則を変更した場合も同じ手続きが必要です。変更のたびに届け出ることになります。
人材派遣の会社設立では、事業が始まって派遣スタッフが増えたときに、この手続きが関わってきます。会社設立の直後は人数が少なくても、伸びれば必要になります。
届出の手続きも社会保険労務士に依頼できます。就業規則の作成とあわせて頼めば、一貫して見てもらえます。
出典全国労働局・労働基準監督署所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣スタッフへの周知をどうするか

就業規則は、労働者に周知する必要があります。ところが人材派遣では、派遣スタッフが派遣先で働いているため、事業所に掲示するだけでは届きません。
周知の方法としては、次のようなものが考えられます。
- 雇用契約を結ぶときに、書面で交付する
- 電子的な方法で提供し、いつでも見られるようにする
- 事業所の見やすい場所に掲示する(面談で来所したときに見られます)
- 採用時の説明で内容を伝える
そして、教育訓練計画についても周知が求められています。厚生労働省の許可基準は、派遣元事業主は教育訓練計画について、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約を締結する時までに周知するよう努めること、としています。
あわせて、教育訓練計画は事業所に備え付ける等の方法により派遣労働者に周知するとともに、計画に変更があった際にも派遣労働者に周知するよう努めること、ともされています。
人材派遣の会社設立では、この周知の方法も決めておいてください。雇用契約を結ぶときにまとめて渡すという形が、実務的には分かりやすいでしょう。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
就業規則を変更するとき

就業規則は、作って終わりではありません。法改正への対応や、実際の運用に合わせた見直しが必要になります。
変更の手続きは、作成のときと同じです。労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見を記した書面を添えて労働基準監督署に届け出ます。
そして、変更した内容を労働者に周知する必要もあります。
人材派遣で就業規則を変更する場面としては、次のようなものが考えられます。
- 法改正への対応
- 同一労働同一賃金の方式を変更する場合(労使協定方式と派遣先均等・均衡方式)
- 賃金の決め方を見直す場合
- 教育訓練の内容を見直す場合
- 事業の規模が変わり、運用を見直す場合
二つ目に注目してください。労使協定方式を選んでいる場合、労使協定は毎年締結し直すことが通例です。就業規則との整合も確かめておく必要があります。
出典全国労働局・労働基準監督署所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労使協定方式を選ぶ場合

同一労働同一賃金への対応として労使協定方式を選ぶ場合、就業規則とは別に労使協定を締結することになります。
派遣元事業主は、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のいずれかによって、派遣労働者の待遇を確保することとされています。
労使協定方式を選ぶ場合、賃金は同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上でなければならないとされています。その水準は、厚生労働省職業安定局長の通達で示されます。
この通達は毎年出されるため、労使協定も毎年締結し直すことが通例です。そして、協定の内容と就業規則の内容が整合している必要があります。
人材派遣の会社設立で、どちらの方式を選ぶかは重要な判断です。人件費の設計そのものが変わるからです。会社設立の段階で、社会保険労務士と相談しながら決めてください。
詳しくは、同一労働同一賃金についてのカテゴリーの記事をご覧ください。この記事では、就業規則との関係にとどめます。
なお、労使協定を締結しているか否かの別は、情報提供の対象にもなっています。事業所ごとに公開することになるため、どちらの方式を選んでいるかは外から分かる情報です。
人材派遣の会社設立で方式を選ぶとき、この点も踏まえて決めてください。公開される情報である以上、説明できる形にしておく必要があります。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
運用できる内容にしておく

就業規則は、書いたとおりに運用する必要があります。当たり前のことですが、人材派遣では特に重要です。
労働者派遣事業の許可の更新では、実施状況が見られるからです。厚生労働省の業務取扱要領は、キャリア形成支援制度について、計画はあっても実施されておらず指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする、としています。
教育訓練を有給で行うと就業規則に書いたなら、実際にそう運用する必要があります。書いただけで実施していなければ、更新のときに問題になります。
同じように、契約の終了のみを理由として解雇しないと書いたなら、そう運用する必要があります。
人材派遣の会社設立で就業規則を作るとき、運用できる内容にしておいてください。立派な内容を書いても、実行できなければ意味がありません。
そして、運用の記録も残しておいてください。教育訓練等の情報を管理した資料は、労働契約終了後3年間の保存が求められます。
人材派遣の会社設立では、就業規則・個人情報適正管理規程・教育訓練計画・派遣先の提供のための事務手引という四つの書類を自分で作ることになります。いずれも運用がセットです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立から続く、就業規則の作業

就業規則をめぐる作業を、時系列で並べます。

この図で見ていただきたいのは、いちばん上とその下です。会社設立の準備の段階で作り、許可申請で写しを提出する。ここまでが最初の山です。
そのあとは、採用のたびの周知、人数が増えたときの届出、変更のたびの手続きと続きます。事業を続けるかぎり、関わり続けるということです。
人材派遣の会社設立では、この作業を誰が担うのかも決めておいてください。社会保険労務士に継続的に依頼するという方法もあります。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|就業規則の届出と運用

人材派遣における就業規則の届出と運用について、まとめます。
- 二つの手続きがある。 許可申請での写しの提出と、労働基準監督署への届出です。
- 許可申請では該当箇所の写しを提出する。 就業規則そのものではありません。
- 労働基準監督署への届出は常時10人以上の事業場で。 意見を記した書面を添えます。
- 周知の方法を工夫する。 派遣スタッフは派遣先で働いているため、掲示だけでは届きません。
- 変更のたびに手続きが必要。 意見聴取と届出、そして周知です。
- 労使協定方式なら毎年の締結も。 就業規則との整合を確かめます。
- 運用できる内容にする。 更新の審査では、実施状況が見られます。
就業規則は、会社設立の準備から始まって、事業を続けるかぎり関わり続ける書類です。作って終わりではありません。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。作成と届出は社会保険労務士へ、許可申請での取扱いは所管の都道府県労働局へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典全国労働局・労働基準監督署所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
二つの手続きを、分けて考えてください
許可申請での写しの提出と、労働基準監督署への届出は別の手続きです。どちらも必要になりますが、時期も窓口も違います。
そして、就業規則は作って終わりではありません。派遣スタッフが増えれば届出が必要になり、法改正があれば見直しが必要になります。
作成と届出は社会保険労務士へ、許可申請での取扱いは所管の都道府県労働局へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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