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人材派遣 許可 資産要件

人材派遣の許可の資産要件は三つ。すべてを同時に満たす必要があります

資産要件を確かめたい方へ

人材派遣の会社設立を考えていて、自分が資産要件を満たせるのかを確かめたい方に向けた記事です。

資産要件は三つあります。基準資産額、自己名義の現金・預金、そして負債比率です。この三つは選択ではなく、すべてを同時に満たす必要があります。

この記事では、それぞれの中身と、会社設立でどう設計するかを整理します。数字はすべて厚生労働省の公表資料で確認したものです。

資産要件は三つ。選択ではありません

三つの資産要件を表したイラスト
三つとも同時に満たす必要があります。

労働者派遣事業の許可の要件のうち、財産的基礎に関する判断を資産要件と呼びます。厚生労働省の業務取扱要領は、許可申請事業主についての財産的基礎を三つ示しています。

労働者派遣事業の許可の資産要件(2026年8月27日時点、厚生労働省の業務取扱要領による)
要件 内容 事業所1か所の場合
基準資産額 資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額が、2,000万円に事業所数を乗じた額以上 2,000万円以上
負債比率 基準資産額が、負債の総額の7分の1以上 負債が1億4,000万円を超えると2,000万円では足りません
現金・預金 事業資金として自己名義の現金・預金の額が、1,500万円に事業所数を乗じた額以上 1,500万円以上

事業所を2か所にすると、基準資産額は4,000万円、現金・預金は3,000万円になります。

この三つは選択ではありません。すべてを同時に満たす必要があります。ひとつでも欠ければ、許可の要件を満たしません。

人材派遣の会社設立でつまずくのは、たいていこの資産要件です。書類の整え方でどうにかなるものではなく、決算書の数字そのものが問われるからです。

だからこそ、人材派遣の会社設立を考えるときは、この三つをいちばん最初に確かめてください。手続きの流れを調べる前に、ここです。

事業所数を乗じます基準資産額も自己名義の現金・預金も、労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であることが求められます。会社設立の段階で複数拠点を計画している場合、この掛け算を先に確かめてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

一つ目|基準資産額2,000万円

基準資産額を表したイラスト
借入では基準資産額は増えません。

一つ目が基準資産額です。厚生労働省の業務取扱要領は、次のように定義しています。

資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額

— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)

この定義に、二つのポイントがあります。ひとつは「負債の総額を控除する」こと。もうひとつは「繰延資産及び営業権を除く」ことです。

前者から導かれるのは、借入では基準資産額が増えないということです。借りれば預金は増えますが、同時に負債も増えるため、差し引きは変わりません。

後者は、会社設立の初年度に効いてくることがあります。創業費や開業費を繰延資産として計上していると、その分は資産に数えられません。営業権(のれん)も同じです。

業務取扱要領は、繰延資産について会社計算規則第74条第3項第5号に規定する繰延資産、営業権について無形固定資産の一つである会社計算規則の「のれん」をいう、と説明しています。

確認方法は貸借対照表です基準資産額は、厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表、または労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「3 資産等の状況」欄により確認するとされています。銀行口座にいくら入っているかを見るのではなく、決算書の数字で判断されます。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

二つ目|自己名義の現金・預金1,500万円

自己名義の現金・預金を表したイラスト
基準資産額を満たしていても、現金が足りないことがあります。

二つ目が自己名義の現金・預金です。厚生労働省の業務取扱要領は、事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること、としています。

この要件は基準資産額とは別のものです。基準資産額を満たしていても、現金・預金が足りなければ要件を満たしません。

たとえば、資産の大部分が不動産や車両で、現金が少ない場合です。基準資産額は2,000万円あっても、現金・預金が1,500万円に満たなければ、要件を満たさないことになります。

基準資産額と現金・預金の組み合わせを整理した4象限の図

会社設立の直後であれば、資本金として払い込んだ資金がそのまま現金・預金になっているため、この二つはおおむね一致します。ずれが出てくるのは、設立費用や事業所の初期費用を支払ったあとです。

資本金2,000万円で会社設立をして、事業所の内装や備品に500万円を使えば、現金・預金は1,500万円になります。基準資産額は資産の中身が変わっただけなので2,000万円のままですが、現金・預金はぎりぎりです。

会社設立の資本金に余裕を持たせる理由設立費用や許可申請の費用、事業所の初期費用を資本金から支払えば、現金・預金は減ります。会社設立の段階で資本金に余裕を持たせておく理由は、ここにもあります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

三つ目|負債比率は7分の1以上

負債比率の要件を表したイラスト
負債比率が効いてくるのは、既存の借入が大きい場合です。

三つ目が負債比率です。基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であることが求められます。

計算してみます。基準資産額が2,000万円なら、負債の総額は1億4,000万円まで許されます。一見すると余裕がありそうですが、基準資産額が小さい場合は話が変わります。

基準資産額と、負債比率の要件から計算される負債の上限(事業所1か所、2026年8月27日時点)
基準資産額 許される負債の総額の上限 判定
2,000万円 1億4,000万円 基準資産額の要件も満たします
1,500万円 1億500万円 基準資産額2,000万円の要件を満たしません
1,000万円 7,000万円 同じく満たしません
500万円 3,500万円 同じく満たしません

事業所が増えれば基準資産額の要件も増えます。

この表から分かるのは、負債比率が問題になるのは負債がかなり大きい会社だということです。新しく会社設立をする場合、通常は基準資産額のほうが先に引っかかります。

むしろ負債比率が効いてくるのは、既に別の事業をしていて人材派遣に参入する場合です。既存の事業で借入が大きい会社は、基準資産額2,000万円を用意できても、この要件で止まることがあります。

既存法人で参入するなら、三つとも計算してください既存の法人に事業目的を追加して人材派遣に参入する場合、直近の決算書で三つの要件を計算してみてください。基準資産額だけを見て安心すると、負債比率で止まることがあります。判定に迷う場合は所管の都道府県労働局にご確認ください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

小規模派遣元事業主への配慮措置は、新設には使えません

配慮措置の対象が限られていることを表したイラスト
軽減された金額だけを見て資金計画を立てると、行き詰まります。

インターネットで資産要件を調べると、「基準資産額1,000万円・現金預金800万円でよい」という説明に行き当たることがあります。これは小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置のことですが、適用対象に限定があります。

厚生労働省の業務取扱要領は、この配慮措置について次のように書いています。

ただし、平成28年9月30日以降は、改正法附則第6条第1項の規定により引き続き行うことができることとされた労働者派遣事業を行っている者からの申請に限るものとする(当該申請について、平成30年9月29日までに事業主管轄労働局に対して新規許可の申請を行い、当該申請が受理されている者も含む。)。

— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)

ここでいう「改正法附則第6条第1項の規定により引き続き行うことができることとされた労働者派遣事業を行っている者」とは、いわゆる旧特定労働者派遣事業を行っていた事業主を指します。

対象になる人
平成27年の法改正の前から(旧)特定労働者派遣事業を行っていて、経過措置で事業を続けていた事業主
対象にならない人
これから新しく会社設立をして、はじめて労働者派遣事業の許可を申請する人
10人以下の措置
1つの事業所のみ・常時雇用の派遣労働者10人以下の中小企業事業主に対する、当分の間の措置。基準資産額1,000万円・現金預金800万円
5人以下の措置
1つの事業所のみ・常時雇用の派遣労働者5人以下の中小企業事業主に対する、平成27年9月30日から平成30年9月29日までの3年間の暫定措置。基準資産額500万円・現金預金400万円
新規に会社設立をする方の基準は2,000万円と1,500万円です解説記事のなかには、この適用対象の限定に触れずに軽減後の金額だけを紹介しているものがあります。人材派遣の会社設立を前提に資金計画を立てるときは、原則の金額で考えてください。ご自身が配慮措置の対象になるかどうかは、必ず所管の都道府県労働局にご確認ください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

会社設立で、資産要件をどう設計するか

資本金を資産要件から設計するイラスト
2,000万円ちょうどでは、設立費用を払った時点で足りなくなります。

人材派遣の会社設立で資産要件を満たすには、資本金として資金を入れる必要があります。借入では基準資産額が増えないからです。

では資本金を2,000万円ちょうどにすればよいかというと、それでは足りません。会社設立の費用と許可申請の費用を資本金から出せば、その分だけ基準資産額が減るからです。

資本金2,000万円で会社設立をした場合に目減りする費用の内訳

この例では、会社設立と許可申請と事業所の準備だけで100万円あまりが出ていきます。資本金2,000万円ちょうどなら、基準資産額は1,900万円弱になり、要件を満たしません。

では、いくら上乗せすればよいのか。これは事業所の家賃や、営業開始までの期間、役員報酬の額によって変わるため、一律の答えはありません。

この記事で言えるのは、設立費用と許可申請費用、そして営業開始までの固定費を積み上げて、その分を上乗せするという考え方までです。具体的な金額の設計は税理士にご相談ください。

株式会社は資本金2,143万円あたりまで登録免許税が変わりません株式会社の設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7で、15万円に満たないときは15万円です。資本金2,000万円から2,143万円あたりまでは、登録免許税が最低額の15万円のままです。この範囲であれば、上乗せのコストは実質的にかかりません。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

資産要件は、許可の更新のたびに確かめられます

資産要件が更新のたびに確かめられることを表したイラスト
会社設立のときに一度満たせばよい、というものではありません。

資産要件は、許可を受けるときだけの話ではありません。許可の更新のたびに確かめられます。

労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。更新の申請は有効期間が満了する日の3か月前までに行う必要があり、申請日の超過は認められません。

会社設立のときに資本金2,000万円を用意して許可を取れたとしても、その後の累積損益が基準資産額に反映されます。赤字が続けば目減りしていきます。

基準資産額の推移を黒字の場合と赤字の場合で比べた折れ線グラフ

この図の下の線が、会社設立から3年で要件を割り込む例です。人材派遣は、派遣スタッフの給与を先に払い、派遣料金を後から受け取る事業なので、資金繰りが苦しくなりやすい構造があります。

会社設立の段階で資本金に余裕を持たせておくことには、この意味もあります。初年度に赤字が出ても、要件を割り込むまでに余裕があるからです。

役員報酬の設計も、ここに関わります役員報酬を高く設定すれば法人の利益が減り、基準資産額の回復が遅れます。人材派遣の役員報酬は、税負担と社会保険料のバランスだけでなく、許可の更新に向けた資産の維持という観点も入れて設計する必要があります。会社設立の段階から税理士と相談しておいてください。

出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

足りないと分かったときの、正攻法

資産要件が足りないときの対応を表したイラスト
要件を満たさないまま会社設立をすると、固定費だけが積み上がります。

計算してみて資産要件を満たせないと分かったとき、どうするか。順番を書いておきます。

  1. どの要件が、いくら足りないのかを分ける。 基準資産額なのか、現金・預金なのか、負債比率なのか。対応がそれぞれ違います。
  2. 資本として入れられる資金があるかを確かめる。 自己資金、家族からの出資、共同での会社設立。
  3. 既存法人がある場合は、そちらの決算書でも計算する。 事業目的の追加で足りることがあります。
  4. 事業所を1か所に絞る。 資産要件は事業所数を乗じた額です。2か所の計画を1か所にすれば、必要額は半分になります。
  5. それでも足りなければ、時期を見直す。 会社設立を先に延ばし、資金を貯めてから進めるという判断です。
  6. 所管の都道府県労働局に相談する。 判定に迷うところは、申請前に相談できます。

五番目の「時期を見直す」は消極的な結論に見えるかもしれません。ただ、人材派遣は許可が下りなければ営業できない事業です。要件を満たさないまま会社設立をしても、登記費用と固定費が出ていくだけになります。

申請の直前だけ数字を作ることは勧められません資産要件は直近の決算書で判断されます。基準資産額または自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てをする場合は、公認会計士または監査法人による監査証明を受けた中間決算または月次決算による場合に限られます。更新申請については、日本公認会計士協会が平成30年12月20日付けで公表した実務指針に基づく「合意された手続業務」による中間決算・月次決算でも可能とされています。いずれにせよ第三者の手続が入り、費用と日数がかかります。

そして、許可の更新のたびに資産要件は確かめられます。会社設立のときに無理をして要件を満たしても、事業が黒字にならなければ更新でつまずきます。事業として資産を積み上げていくことが、結局いちばん確実です。

出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

まとめ|三つの資産要件

三つの資産要件をまとめたイラスト
三つを別々に計算してください。

労働者派遣事業の許可の資産要件について、まとめます。

  1. 要件は三つ。 基準資産額、自己名義の現金・預金、負債比率。すべてを同時に満たします。
  2. 基準資産額は2,000万円×事業所数以上。 資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額です。
  3. 現金・預金は1,500万円×事業所数以上。 基準資産額とは別の要件です。
  4. 負債比率は基準資産額が負債総額の7分の1以上。 既存の借入が大きい会社は注意してください。
  5. 借入では基準資産額は増えない。 資本金として入れる必要があります。
  6. 小規模派遣元事業主への配慮措置は新設には使えない。 旧特定労働者派遣事業を行っていた者からの申請に限られます。
  7. 2,000万円ちょうどでは足りない。 設立費用と許可申請費用を資本金から支払えば目減りします。
  8. 更新のたびに確かめられる。 会社設立のときに一度満たせばよいものではありません。

三つを別々に計算してください。基準資産額だけを見て安心すると、現金・預金や負債比率で止まることがあります。

この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。資産要件を満たすかどうかの判定は所管の都道府県労働局へ、会計処理と資本金の設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

三つを別々に計算してください

資産要件を確かめるとき、基準資産額だけを見て安心してしまうことがあります。三つは別の要件なので、それぞれ計算してください。

特に、現金・預金が足りているのに基準資産額が足りない、という形はよく起こります。借入で資金を用意した場合です。

資産要件を満たすかどうかの判定は所管の都道府県労働局へ、会計処理と資本金の設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

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