基準資産額2,000万円とは何か。人材派遣の会社設立で最初に確かめる数字
2,000万円という数字の意味を知りたい方へ
人材派遣の会社設立を調べると、必ず出てくるのが基準資産額2,000万円という数字です。この数字が何を指すのかを確かめたい方に向けた記事です。
2,000万円は「用意する現金」ではありません。資産の総額から負債の総額を引いた額です。この違いが分かると、資金の集め方の判断が変わります。
この記事では、数字の意味と計算の仕方、そしてなぜこの水準なのかを整理します。
基準資産額2,000万円の定義

人材派遣の会社設立を調べると、必ず出てくるのが基準資産額2,000万円という数字です。まず、これが何を指すのかを確かめます。
厚生労働省の業務取扱要領は、労働者派遣事業の許可の要件として次のように定めています。
資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)
ここから読み取れることを整理します。
- 2,000万円は「用意する現金」ではなく、資産の総額から負債の総額を引いた額です
- 繰延資産(創立費・開業費など)と営業権(のれん)は、資産から除いて計算します
- 事業所の数を乗じた額以上が必要です。2か所なら4,000万円になります
- 「行うことを予定する」事業所も数に入ります
いちばん重要なのが一つ目です。2,000万円という数字は、口座に2,000万円を入れておけばよいという意味ではありません。負債を引いた残りが2,000万円以上である必要があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
借入で用意しても、この数字は増えません

定義から導かれるいちばん重要な帰結が、これです。借入で資金を用意しても、基準資産額は増えません。
金融機関から2,000万円を借りれば、預金は2,000万円増えます。ところが同時に、借入金という負債も2,000万円増えます。資産の総額から負債の総額を引いた額は、変わりません。

この違いが、人材派遣の会社設立で資本金の額が重要になる理由です。資産要件を満たすには、資本金として入れるしかありません。
自己名義の現金・預金1,500万円という二つ目の要件だけなら、借入でも満たせます。ところが基準資産額のほうは満たせません。そして、この三つは同時に満たす必要があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
2,000万円という水準の意味

なぜ2,000万円なのか。制度の趣旨から考えてみます。
労働者派遣は、派遣元が労働者を雇用し、派遣先で働かせる仕組みです。派遣スタッフの賃金を支払うのは派遣元です。
そして、労働者派遣事業の許可基準には次の内容が含まれています。無期雇用の派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。有期雇用の派遣労働者についても、契約終了時に労働契約が存続している者について同じであること。
さらに、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があることも求められます。
つまり、派遣先との契約が終わっても、派遣スタッフの雇用と賃金の支払いは続きます。この体力があるかどうかを確かめるのが、資産要件だと考えられます。
人材派遣は、派遣スタッフの給与を先に払い、派遣料金を後から受け取る事業でもあります。売上が伸びるほど、先に払う金額も増えます。この構造からも、一定の資産が求められることが理解できます。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
事業所の数を乗じるということ

基準資産額は、2,000万円に事業所の数を乗じた額以上であることが求められます。事業所を増やせば、必要な額も増えます。

この掛け算があるため、人材派遣の会社設立では事業所1か所から始めるのが現実的です。2か所にすれば、必要な資本金が倍になるからです。
そして、事業所ごとに派遣元責任者を選任する必要もあります。事業所を増やすということは、資金だけでなく人も増やすということです。
事業所数の確認方法についても定めがあります。厚生労働省の業務取扱要領は、定款及び登記事項証明書、又は企業パンフレット等により確認する、としています。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
2,000万円ちょうどでは足りない理由

では、資本金を2,000万円ちょうどにすればよいかというと、それでは足りません。
会社設立の費用と許可申請の費用を資本金から支払えば、その分だけ基準資産額が減るからです。
| 項目 | 金額(事業所1か所・株式会社・資本金2,000万円) |
|---|---|
| 定款の認証手数料 | 5万円 |
| 設立登記の登録免許税 | 15万円 |
| 許可手数料(収入印紙) | 12万円 |
| 許可の登録免許税 | 9万円 |
| 登記事項証明書ほか | 数千円 |
| 法定費用の合計 | およそ41万5千円 |
電子定款を前提とし、収入印紙4万円は含みません。専門家に依頼する場合の報酬も含みません。
これだけで41万5千円です。さらに、事業所の敷金・礼金・仲介手数料、備品、派遣元責任者講習の受講料が加わります。合計で100万円を超えることもめずらしくありません。
資本金2,000万円ちょうどで会社設立をすれば、これらを支払った時点で基準資産額は1,900万円前後になります。資産要件を満たしません。
では、いくら上乗せすればよいのか。これは事業所の家賃や営業開始までの期間、役員報酬の額によって変わるため、一律の答えはありません。設立費用・許可申請費用・営業開始までの固定費を積み上げて、その分を上乗せするという考え方になります。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
軽減された金額の説明を見かけたら

インターネットで基準資産額を調べると、「1,000万円でよい」「500万円でよい」という説明に行き当たることがあります。これは小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置のことです。
ただし、この措置には適用対象の限定があります。厚生労働省の業務取扱要領は次のように書いています。
ただし、平成28年9月30日以降は、改正法附則第6条第1項の規定により引き続き行うことができることとされた労働者派遣事業を行っている者からの申請に限るものとする。
— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)
ここでいう者とは、いわゆる旧特定労働者派遣事業を行っていた事業主を指します。これから新しく会社設立をして、はじめて労働者派遣事業の許可を申請する方は、原則として対象外です。
- 10人以下の措置
- 1つの事業所のみ・常時雇用の派遣労働者10人以下の中小企業事業主に対する、当分の間の措置。基準資産額1,000万円・現金預金800万円
- 5人以下の措置
- 1つの事業所のみ・常時雇用の派遣労働者5人以下の中小企業事業主に対する、平成27年9月30日から平成30年9月29日までの3年間の暫定措置。基準資産額500万円・現金預金400万円
- 対象になる人
- 経過措置で(旧)特定労働者派遣事業を続けていた事業主(平成30年9月29日までに新規許可の申請を行い受理された者を含む)
- 対象にならない人
- これから新しく会社設立をして、はじめて許可を申請する人
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労働組合等から供給される労働者の場合の読み替え

基準資産額について、もうひとつ読み替えの規定があります。一般的な人材派遣の会社設立には当てはまりませんが、制度として知っておく価値はあります。
厚生労働省の業務取扱要領は次のように定めています。職業安定法第45条に規定する厚生労働大臣の許可を受け、労働者供給事業を行う労働組合等から供給される労働者を対象として、労働者派遣事業を行うことを予定する場合については、基準資産額の「2,000万円」を「1,000万円」と、現金・預金の「1,500万円」を「750万円」と読み替えて適用する。
これは、労働組合等が行う労働者供給事業から供給される労働者を対象とする場合の規定です。一般的な人材派遣の会社設立では、この場面には当たりません。
さらに、地方公共団体による債務保証契約または損失補填契約が存在することによって派遣労働者に対する賃金支払いが担保されている場合は、基準資産額・負債比率・現金預金の要件を満たしていなくても差し支えないこととする、という規定もあります。
これも限定的な場面です。会社設立を考える一般的な方には当てはまりません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
2,000万円は、更新のたびに確かめられます

基準資産額2,000万円という要件は、許可を受けるときだけの話ではありません。許可の更新のたびに確かめられます。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。更新の申請は有効期間が満了する日の3か月前までに行う必要があり、申請日の超過は認められません。
会社設立のときに資本金2,000万円を用意して許可を取れたとしても、その後の累積損益が基準資産額に反映されます。赤字が続けば目減りしていきます。

この図の下の線が、会社設立から3年で要件を割り込む例です。人材派遣は資金繰りが苦しくなりやすい構造があるため、この形は珍しくありません。
会社設立の段階で資本金に余裕を持たせておくことには、この意味もあります。初年度に赤字が出ても、要件を割り込むまでに余裕があるからです。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|基準資産額2,000万円

基準資産額2,000万円という数字について、まとめます。
- 定義は、資産の総額から負債の総額を控除した額。 「用意する現金」ではありません。
- 繰延資産と営業権は除く。 会社設立の費用を創立費・開業費として繰延資産にすると、除かれます。
- 借入では増えない。 資産と負債が同時に増えるためです。資本金として入れる必要があります。
- 事業所の数を乗じる。 2か所なら4,000万円。「行うことを予定する」事業所も数に入ります。
- ちょうど2,000万円では足りない。 法定費用だけで41万5千円、開業準備を含めれば100万円を超えます。
- 軽減された金額は適用対象が限られる。 新しく会社設立をする方は原則として対象外です。
- 更新のたびに確かめられる。 3年後、そのあとは5年ごとです。
この数字は、派遣スタッフの賃金を安定して支払えるかを見るための基準だと考えられます。人材派遣は、派遣先との契約が終わっても雇用が続く事業だからです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。資産要件を満たすかどうかの判定は所管の都道府県労働局へ、資本金の設計と会計処理は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
2,000万円は、事業の体力を見る基準です
基準資産額2,000万円という要件は、派遣スタッフの賃金を安定して支払えるかを見るためのものと考えられます。人材派遣は、派遣先との契約が終わっても派遣スタッフを契約終了のみを理由として解雇できない事業だからです。
この数字は、会社設立のときだけでなく、許可の更新のたびに確かめられます。一度満たせばよいものではありません。
資産要件を満たすかどうかの判定は所管の都道府県労働局へ、資本金の設計と会計処理は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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