人材派遣の許可申請を専門家に頼むと、いくらかかるのか。判断の材料を整理する
依頼するかどうかを決める方へ
人材派遣の会社設立と労働者派遣事業の許可申請を、専門家に依頼するかどうかで迷っている方に向けた記事です。
士業にはそれぞれ法律で定められた業務範囲があります。誰に何を頼めるのかを知っておくと、選びやすくなります。
この記事では具体的な報酬額を示しません。士業の報酬は自由化されており、事務所によって金額も範囲も違うためです。判断の枠組みだけを示します。
士業には、それぞれ業務範囲があります

人材派遣の会社設立と許可申請を専門家に依頼する場合、誰に何を頼めるのかを知っておくと選びやすくなります。士業にはそれぞれ法律で定められた業務範囲があるからです。
- 司法書士
- 会社設立の登記申請の代理。定款の作成支援、事業目的の文言の相談
- 社会保険労務士
- 労働者派遣事業の許可申請書類の作成・提出代行。就業規則の作成、労働保険・社会保険の手続き
- 税理士
- 税務署への届出、決算・申告、役員報酬や決算期についての税額の判断
- 公認会計士・監査法人
- 中間決算・月次決算による資産要件の確認が必要な場合の監査証明、合意された手続業務
- 行政書士
- 許認可申請書類の作成(労働者派遣事業の許可申請の取扱いは事務所により異なります)
このうち、労働者派遣事業の許可申請の書類作成・提出代行は社会保険労務士の業務です。就業規則の作成や労働保険の手続きもあわせて頼めるため、人材派遣とは相性がよい組み合わせになります。
会社設立の登記は司法書士の業務です。定款の作成支援も受けられます。人材派遣の会社設立では、事業目的の文言を相談できる点に意味があります。
そして税理士は、会社設立のあとの決算・申告と、役員報酬や決算期の設計を担います。人材派遣では、許可の更新に向けた資産の維持という観点も入ってきます。
行政書士については、許認可申請書類の作成を扱う士業です。ただし、労働者派遣事業の許可申請を取り扱っているかどうかは事務所によって異なります。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務とされているためです。
人材派遣の会社設立で依頼先を探すときは、労働者派遣事業の許可申請を実際に扱っているかを確かめてください。就業規則の整備や労働保険・社会保険の手続きまで一緒に頼めるかどうかも、選ぶときの材料になります。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
自分でやる部分と、頼む部分を分ける

依頼するかどうかを考えるとき、作業を二つに分けると判断しやすくなります。定型の作業と、判断の要る作業です。

左側は、時間をかければ自分でもできます。法務局や労働局のサイトに様式と記載例が公開されているからです。
右側は違います。要件を満たしているかどうかの判断は、数字と実態の話なので、書式を埋めるだけでは終わりません。
人材派遣の会社設立で費用を抑えたいなら、左側から自分でやるのが合理的です。右側を自分で判断しようとすると、間違えたときの手戻りが大きくなります。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
依頼する範囲は、事務所によって違います

専門家に依頼するとき、報酬の額だけでなく、どこまでを含んだ金額なのかを確かめてください。事務所によって範囲が違うからです。
たとえば、労働者派遣事業の許可申請の依頼で考えられる範囲を並べます。
- 許可申請書と事業計画書の作成
- 添付書類の確認と整理
- 就業規則の作成または変更
- 個人情報適正管理規程の作成
- 教育訓練計画の作成
- 労働局への提出代行
- 事前相談への同行
- 実地確認への立ち会い
- 許可後の各種届出
これらのうち、どこまでを含むかによって報酬は変わります。書類の作成だけなのか、就業規則の整備まで含むのか、事前相談から同行してもらえるのか。
人材派遣の会社設立では、就業規則の整備がとくに重要です。労働者派遣事業の許可基準が求める内容は人材派遣に固有のもので、他業種の書式をそのまま使えないからです。ここを含むかどうかは確かめておいてください。
あわせて、会社設立の登記についても同じことが言えます。定款の作成支援、電子定款の作成、登記申請の代理、登記事項証明書の取得代行。どこまでを含むかで報酬は変わります。
人材派遣の会社設立では、事業目的の文言について相談できるかどうかも確かめておいてください。労働者派遣事業の許可を取る予定であることを伝えたうえで、文言を提案してもらえるかどうかです。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
時間で比べるという考え方

自分でやるか頼むかを、費用だけで比べると自分でやるほうが安く見えます。ところが人材派遣の場合、もうひとつの物差しがあります。時間です。
人材派遣は、労働者派遣事業の許可が下りるまで営業ができません。会社設立から許可までの期間、家賃・役員報酬・通信費といった固定費だけが出ていきます。
たとえば、事業所の家賃と役員報酬を合わせて月45万円かかっている会社なら、1か月の遅れは45万円の費用と同じです。専門家への報酬がこれを下回るなら、時間で見れば安いという計算になります。

この計算の前提は、家賃・役員報酬の額、事業所の規模、会社形態によって変わります。あくまで考え方の例です。ご自身の事業計画の数字で判断してください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
依頼しても、許可が下りやすくなるわけではありません

ここは誤解のないように書いておきます。専門家に依頼したからといって、労働者派遣事業の許可が下りやすくなるわけではありません。
許可を出すのは所管の都道府県労働局です。要件を満たしているかどうかがすべてで、誰が書類を作ったかは関係ありません。
専門家の役割は二つです。要件を満たしているかを早く正確に見極めること。そして、書類の不備による往復を減らすことです。
資産要件を満たしていなければ、専門家に頼んでも許可は下りません。事業所が20平方メートルに足りなければ、書類をどう整えても実地確認で分かります。
ですから、依頼する前にまず要件を確かめてください。要件を満たしているなら、専門家に頼むことで手続きが早く進みます。満たしていないなら、まずそこを解決することが先です。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の段階から相談する意味

専門家に依頼するなら、会社設立の登記より前に相談するほうが効果があります。
人材派遣の会社設立では、定款の事業目的の文言と資本金の額が、そのまま労働者派遣事業の許可に効いてきます。登記のあとに変えるには、変更登記や増資という手続きが必要になります。
司法書士に会社設立の登記を依頼する場合、労働者派遣事業の許可を取る予定であることを最初に伝えてください。伝えておけば、事業目的の文言についても配慮した案を出してもらえます。
社会保険労務士に相談する場合も、会社設立の設計の段階から相談しておくと、就業規則や教育訓練計画の準備を早く始められます。これらは自分で中身を考える書類なので、時間がかかるからです。
税理士にも、会社設立の前に相談する意味があります。資本金の額、決算期、役員報酬の設計。いずれも人材派遣では、許可の資産要件と結びついているからです。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
公認会計士の手続が必要になる場面

もうひとつ、費用がかかる場面があります。基準資産額または自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てをする場合です。
厚生労働省の業務取扱要領は、この場合について次のように定めています。公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算又は月次決算による場合に限り、基準資産額、負債の総額及び自己名義の現金・預金の額のいずれについても当該中間決算又は月次決算により確認するものとする。
そして更新申請については、日本公認会計士協会が平成30年12月20日付けで公表した「労働者派遣事業等の許可審査に係る中間又は月次決算書に対する合意された手続業務に関する実務指針」に基づいて公認会計士又は監査法人が実施した合意された手続業務による中間決算又は月次決算でも可能とされています。
これらは、直近の決算書では資産要件を満たさないが、その後の増資などで満たすようになった場合に使う手続きです。第三者による手続が入るため、費用と日数がかかります。
会社設立の段階で資本金に余裕を持たせておけば、この手続きは不要です。手続きの費用も、そこから生まれる期間の遅れも避けられます。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可を取ったあとの、継続的な費用

会社設立と許可申請にかかる費用だけでなく、その後の継続的な費用も見ておきます。
| 項目 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| 決算・申告 | 税理士に依頼する場合の報酬 | 毎年 |
| 給与計算と社会保険の手続き | 社会保険労務士に依頼する場合の報酬 | 毎月・随時 |
| 就業規則の見直し | 法改正への対応 | 随時 |
| 事業報告書の作成 | 毎事業年度経過後に提出します | 毎年 |
| 情報提供の更新 | マージン率などを事業年度ごとに | 毎年 |
| 許可の更新 | 3年後、そのあとは5年ごと。手数料と準備の手間がかかります | 3年・5年ごと |
| 派遣元責任者講習 | 更新のときにも3年以内の受講が必要です | 数年ごと |
金額は依頼する範囲と事務所によって異なります。見積もりでご確認ください。
人材派遣では、派遣スタッフが増えるほど給与計算と社会保険の事務が増えます。社会保険労務士に依頼する場合、人数に応じて報酬が上がることが一般的です。
会社設立の段階で収支計画を立てるとき、この継続的な費用も見込んでおいてください。派遣スタッフの人数が増えれば、比例して増えていきます。
なお、外に出しても責任がなくなるわけではありません。派遣スタッフの労働保険・社会保険への適正な加入は、労働者派遣事業の許可基準に含まれています。手続きを社会保険労務士に依頼していても、適正に加入させる責任は派遣元事業主にあります。
同じように、教育訓練の実施やキャリアコンサルティングの相談窓口も、外に出せない部分があります。派遣元責任者としての職務も、名義を借りることは許可基準が明確に否定しています。会社設立の段階で、この区別を理解しておいてください。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|専門家に依頼するかどうか

人材派遣の会社設立と許可申請を専門家に依頼するかどうかについて、まとめます。
- 士業には業務範囲がある。 登記は司法書士、許可申請書類は社会保険労務士、税務は税理士。
- 作業を定型と判断に分ける。 費用を削るなら定型の作業から自分でやるのが合理的です。
- 依頼の範囲を確かめる。 就業規則の整備まで含むかどうかで、報酬は変わります。
- 時間で比べる。 人材派遣は許可が下りるまで営業できません。遅れがそのまま固定費になります。
- 依頼しても許可が下りやすくなるわけではない。 要件を満たしているかどうかがすべてです。
- 会社設立の登記より前に相談する。 事業目的の文言と資本金の額が許可に効いてきます。
- 許可後の継続的な費用も見込む。 決算・申告、給与計算、社会保険、更新の準備。
この記事では具体的な報酬額を示していません。士業の報酬は自由化されており、事務所によって金額も範囲も違うからです。複数の事務所に確かめて比べてください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、税額の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可を出すのは、あくまで労働局です
専門家に頼めば許可が下りやすくなる、ということはありません。許可を出すのは所管の都道府県労働局で、要件を満たしているかどうかがすべてです。
専門家の役割は、要件を満たしているかを早く正確に見極めること、書類の往復を減らすことにあります。人材派遣は許可が下りるまで営業できない事業なので、この時間の節約には金額以上の意味があります。
許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、税額の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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