許可申請の書類を、そろえる順に並べる。人材派遣の会社設立からの段取り
書類の準備を始める方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、許可申請の書類をそろえ始める方に向けた記事です。
書類には三つの種類があります。役所で取るもの、様式に沿って書くもの、自分で中身を考えるもの。三つ目がいちばん時間がかかります。
この記事では、着手する順に並べます。時間のかかるものから始めれば、全体の期間が縮まります。
書類を三つに分けると、着手の順番が決まります

労働者派遣事業の許可申請でそろえる書類は、性質によって三つに分かれます。この区別をつけておくと、着手の順番が決まります。
- 役所で取るもの登記事項証明書、住民票、印鑑証明書、納税証明書。申請すれば出てきます。
- 様式に沿って書くもの許可申請書(様式第1号)、事業計画書(様式第3号)。材料がそろえば書けます。
- 自分で中身を考えるもの就業規則、個人情報適正管理規程、教育訓練計画、派遣先の提供のための事務手引等。ここに時間がかかります。
三つ目が重いのは、中身が許可の基準を満たしているかで判断されるからです。形式を整えるだけでは足りません。
ですから着手の順番は、三つ目からです。役所で取る書類は最後でも間に合いますが、自作の書類は考える時間が要ります。
人材派遣の会社設立で、この順番を守れるかどうかが全体の期間を左右します。審査の期間は自分では短縮できないからです。
人材派遣の会社設立では、登記そのものは1〜2週間で終わります。時間がかかるのは、その前後の準備です。とくに自作の書類は、内容を決めるところから始まるため、数週間かかることもあります。
会社設立の設計の段階から並行して進めておけば、登記が完了した時点で大半が片づいています。逆に、登記が終わってから着手すると、その分だけ許可申請が後ろにずれます。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
最初に着手|就業規則の該当箇所

いちばん最初に着手したいのが就業規則です。許可申請では、就業規則または労働契約のうち、特定の内容を規定した部分の写しを求められます。
求められる内容は四つです。
- 教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分
- 無期雇用の派遣労働者を、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類
- 有期雇用の派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している者を、契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類
- 使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定
二つ目と三つ目に注意してください。許可基準では「解雇できる旨の規定がないこと」という形で書かれています。書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があるということです。
市販のひな形や、他業種の会社設立で使われる書式には、契約終了で解雇できる趣旨の条項が入っていることがあります。そのまま提出すれば、指摘を受けます。
なお、就業規則そのものの届出は別の手続きです。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る必要があります。会社設立の直後は人数が少なくても、派遣スタッフが増えれば届出が必要になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
次に着手|個人情報適正管理規程

二つ目が個人情報適正管理規程です。労働者派遣事業の許可の要件には、個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていることが含まれます。
規程に含める内容は四つです。
- 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること
- 業務上知り得た個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること
- 派遣労働者等から求められた場合の個人情報の開示または訂正(削除を含む)の取扱いに関する事項についての規程があり、その規程について派遣労働者等への周知がなされていること
- 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関して、派遣元責任者等を苦情処理の担当者等の取扱責任者と定めるなど、事業所内の体制を明確にし、苦情を迅速かつ適切に処理することとされていること
そして、規程の文面だけでなく実際の措置も求められます。個人情報を正確かつ最新のものに保つ措置、紛失・破壊・改ざんを防止する措置、取り扱う職員以外の者によるアクセスを防止する措置、保管の必要がなくなった個人情報を破棄または削除する措置です。
三つ目の措置に関連して、施錠できる保管場所が求められることがあります。会社設立の開業準備で、この備品を用意しておいてください。事業所の実地確認でも見られる項目です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
三つ目|教育訓練計画とキャリア形成支援

三つ目が教育訓練計画です。労働者派遣事業の許可の要件として、派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度を有することが求められます。
計画に求められる内容を並べます。
- 実施する教育訓練が、雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること
- 有給かつ無償で行われるものであること
- 派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること
- 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであること
- 無期雇用の派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること
時間数についても基準があります。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要とされています。
あわせて、キャリアコンサルティングの相談窓口の設置も必要です。担当者には、キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングの知見を有する者、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者を配置します。
さらに、キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていることも求められます。事務手引やマニュアル等を整備することになります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
並行して|派遣元責任者講習の受講

自作の書類と並行して進めたいのが、派遣元責任者講習の受講です。
講習は、厚生労働省告示(平成27年厚生労働省告示第392号)に定められた講習機関が実施します。許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限られます。
厚生労働省の資料も「申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があります」としています。申請してから受ければよいものではありません。
講習は各地で開催されていますが、日程が埋まることがあります。受講できる日が1か月先になれば、その分だけ許可申請が後ろにずれます。会社設立の設計の段階で申し込んでおくのが安全です。
あわせて、派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者も、あらかじめ選任しておく必要があります。一人で人材派遣の会社設立をする場合、この職務代行者をどうするかが課題になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の登記が終わったら|役所で取る書類

会社設立の登記が完了したら、役所で書類を取ります。ここは申請すれば出てくるので、時間はあまりかかりません。
| 書類 | 取る場所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局 | 会社設立の登記完了後に取れます |
| 法人の印鑑証明書 | 法務局 | 会社の実印の証明書です |
| 役員の住民票の写し | 市区町村役場 | 本籍地の記載があり、個人番号の記載がないもの |
| 派遣元責任者の住民票の写し | 市区町村役場 | 同じ条件です |
| 法人税の納税証明書 | 税務署 | 国税通則法施行規則別紙第8号様式(その2)によるもの |
| 不動産の登記事項証明書 | 法務局 | 事業所を自己所有する場合 |
必要な書類は申請の内容によって変わります。詳しくは所管の都道府県労働局の案内でご確認ください。
住民票の写しについて、条件を見落とさないでください。本籍地の記載があり、個人番号の記載がないものが求められます。窓口で請求するときに、この二つを指定する必要があります。
役員が複数いる場合は、全員分が必要になります。必要な通数を数えて、まとめて取っておくと二度手間になりません。
なお、会社設立の直後でまだ決算を迎えていない場合、法人税の納税証明書をどうするかという問題が出てきます。取扱いは所管の都道府県労働局にご確認ください。
あわせて、最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書も添付書類に含まれます。会社設立の直後は、これらもまだありません。この場合の資産の見方についても、事前相談の段階で確かめておいてください。
会社設立の時期と決算期の決め方が、許可申請の時期に影響することがあります。決算期は定款の記載事項なので、会社設立の設計の段階で決めることになります。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事業所の使用権を証する書類

事業所については、使用権を証する書類を提出します。不動産の登記事項証明書(自己所有の場合)または不動産賃貸借契約書の写し(賃貸の場合)です。
転貸借の場合は、その所有者の転貸借に係る同意書その他権利関係を証する書類も必要になります。
会社設立の段階で事業所を決めるとき、この書類を出せるかどうかも確かめておいてください。賃貸の場合、契約の使用目的が居住用になっていると、事業所として使えるかどうかが問題になることがあります。

賃貸借契約を結んでしまってから要件を満たさないと分かると、移転か区画の追加という手戻りになります。敷金・礼金・仲介手数料が二重にかかるうえ、その分だけ許可申請が後ろにずれます。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
最後に|申請書と事業計画書を書く

書類がそろったら、最後に申請書と事業計画書を書きます。様式は都道府県労働局のサイトからダウンロードできます。
- 労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)3通(正本1通、写し2通)
- 労働者派遣事業計画書(様式第3号)3通(正本1通、写し2通)
- キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)
- 様式第3号-3(派遣労働者のうち雇用保険または健康保険・厚生年金保険の未加入者がいる場合にのみ提出)
様式第3号には、事業所ごとの当該事業に係る計画を書きます。ここに「3 資産等の状況」という欄があり、厚生労働省の業務取扱要領は、基準資産額や自己名義の現金・預金の額をこの欄または貸借対照表により確認する、としています。
つまり、この欄が資産要件の判定に直接使われます。数字を正確に書く必要があります。
様式第3号-2では、キャリア形成支援制度について記述します。教育訓練がキャリアアップに資する理由を、ここに書くこととされています。
様式には記載例が公開されていることが多く、労働局のサイトから入手できます。人材派遣の会社設立の準備では、この記載例に一度目を通しておくと、必要な情報が具体的に見えてきます。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|そろえる順に並べた書類

労働者派遣事業の許可申請でそろえる書類を、着手する順にまとめます。

この順番で進めれば、会社設立の登記が完了した時点で、自作の書類と講習は片づいています。あとは役所で書類を取り、様式を書いて出すだけです。
逆に、登記が終わってから自作の書類に着手すると、その分だけ許可申請が後ろにずれます。人材派遣は許可が下りるまで営業できないので、遅れがそのまま無収入期間になります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。書類の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成と申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
順番を変えるだけで、期間は縮まります
許可の審査期間は、自分では短縮できません。短縮できるのは、申請までの準備の期間だけです。
そして準備の期間を縮めるいちばんの方法は、時間のかかる書類から着手することです。役所で取る書類は申請すれば出てきますが、自作の書類は考える時間が必要だからです。
書類の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成と申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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