許可の有効期間は3年、更新後は5年。人材派遣の会社設立から続く期限の話
許可を取ったあとの話を、先に知っておきたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、許可を取ったあとに何が続くのかを先に知っておきたい方に向けた記事です。
労働者派遣事業の許可は、一度取れば永続するものではありません。有効期間があり、更新の手続きがあり、そのたびに要件を確かめられます。
会社設立の段階でこの先を見ておくと、資本金の額や役員報酬の設計に根拠が生まれます。逆に見ておかないと、3年後に慌てることになります。
有効期間は、初めての許可が3年

労働者派遣事業の許可には有効期間があります。厚生労働省の業務取扱要領は次のように定めています。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合、許可の日から起算して3年である(法第10条第1項)。また、一度許可の更新を受けた場合における有効期間は、更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年とする。以後の有効期間については、それを繰り返す。
そして、許可の有効期間が満了したとき、当該許可は失効するとされています。失効すれば労働者派遣事業を行うことはできません。
- 初めての許可
- 許可の日から起算して3年
- 1回目の更新後
- 更新前の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年
- 2回目以降
- 同じく5年ずつ。これを繰り返します
- 満了したとき
- 許可は失効します。事業を続けることはできません
- 根拠
- 労働者派遣法第10条第1項・第2項・第4項、施行規則第5条・第19条
人材派遣の会社設立を考えるとき、この3年という数字を頭に入れておいてください。会社設立から許可取得まで3〜4か月、そこから3年で最初の更新が来ます。実質的には、会社設立から3年3か月ほどということになります。
また、許可証の交付の際には、労働局が労働者派遣事業制度の適正な運営、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分、その他労働者派遣事業の適正な運営の確保を図るために必要な事項について講習を実施することとされています。許可は書類のやり取りで終わるものではなく、制度の説明を受けたうえで始まるということです。
人材派遣の会社設立を検討する段階では、どうしても許可を取ることがゴールに見えます。ただ制度の側から見れば、許可は事業を始めるための入口にすぎません。この記事で書いていく期限や義務は、その入口の先に並んでいるものです。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
更新申請の期限は、満了の3か月前

更新の手続きには期限があります。厚生労働省の業務取扱要領は、許可有効期間更新申請関係書類等について次のように定めています。
当該許可の有効期間が満了する日の3箇月前までに、事業主管轄労働局に提出しなければならないこととなっており、申請日の超過は認められない。
この「超過は認められない」という書き方が重要です。うっかり期限を過ぎた場合の救済は想定されていません。

この図で見ていただきたいのは、いちばん上の行です。更新の1年前から準備を始めるというのは、慎重すぎるように見えるかもしれません。ところが資産要件が足りない場合、対応には時間がかかります。
基準資産額が2,000万円を割り込んでいたら、増資をするか、事業で利益を出して回復させるかになります。どちらも数か月では済まないことがあります。そして資産要件は直近の決算書で判定されるため、決算を締めてから足りないと分かっても遅いのです。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
更新のときに確かめられること

更新の審査では、新規の許可と同じ要件が確かめられます。それに加えて、3年間の実施状況も見られます。
厚生労働省の業務取扱要領には、更新の判断について具体的な記載があります。いくつか挙げます。
- 法第9条第1項の規定に基づき付した条件(専ら特定の者に労働者派遣の役務を提供することを目的として行うものではないこと、派遣先における団体交渉や労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行うものではないこと等)に違反していないこと。更新申請の直近有効期間内において違反の事実がみられた場合は、許可を更新しないこととする
- キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認する。計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しない
- 雇用安定措置について、更新申請の直前の有効期間内において許可基準を満たす実施状況であったかを確認する。実施されないような義務違反がみられた場合は、許可を更新しない
- キャリア形成支援制度に関連する情報(計画・実績等)を労働契約終了から3年間管理する体制を整備すること
つまり、書類を整えるだけでは足りません。3年間、実際に教育訓練を実施し、記録を残していたかが見られます。
人材派遣の会社設立の段階で教育訓練計画を作るとき、実行できる内容にしておく意味は、ここにあります。立派な計画を作っても実施していなければ、更新のときに問題になるからです。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
資産要件は、更新のたびに確かめられます

更新でいちばん問題になりやすいのが資産要件です。基準資産額2,000万円・自己名義の現金預金1,500万円・基準資産額が負債の総額の7分の1以上(事業所1か所の場合)という三つを、更新のときにも満たしている必要があります。
会社設立のときに資本金2,000万円を用意して許可を取れたとしても、その後の累積損益が基準資産額に反映されます。赤字が続けば目減りしていきます。

この図の下の線が、会社設立から3年で要件を割り込む例です。人材派遣は、派遣スタッフの給与を先に払い、派遣料金を後から受け取る事業なので、資金繰りが苦しくなりやすい構造があります。
加えて、派遣先との契約が終わっても派遣スタッフを契約終了のみを理由として解雇できないという許可基準があります。次の派遣先が見つからず休業させる場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払う必要もあります。稼働がなくても人件費が続くということです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可のあいだに積み上がる義務

許可を受けてから更新までのあいだ、派遣元事業主にはさまざまな義務が続きます。会社設立の段階では見えにくいものばかりですが、人件費と事務の負担として毎年かかってきます。
| 義務 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| キャリアアップ教育訓練 | フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、最初の3年間は毎年概ね8時間以上。有給かつ無償 | 毎年 |
| 入職時の教育訓練 | 派遣労働者全員に対して必須 | 採用のたび |
| キャリアコンサルティング | 相談窓口の設置と担当者の配置 | 常時 |
| 記録の保存 | 教育訓練等の情報を、労働契約終了後3年間 | 常時 |
| 情報提供 | 派遣労働者の数、派遣先の数、派遣料金の平均額、賃金の平均額、マージン率など | 事業年度ごと |
| 事業報告書 | 事業所ごとの事業に係る報告書を作成し提出 | 毎事業年度経過後 |
| 社会保険・労働保険 | 適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入 | 採用・退職のたび |
| 同一労働同一賃金 | 労使協定方式か派遣先均等・均衡方式のいずれかによる待遇の確保 | 常時 |
いずれも許可の基準や法令上の義務に関わるものです。詳しくは厚生労働省の公表資料でご確認ください。
この表を見ると、人材派遣が「許可を取ってからのほうが管理する項目の多い事業」であることが分かります。会社設立の作業は数か月で終わりますが、これらは事業を続けるかぎり続きます。
そして、これらの実施状況が更新の審査で見られます。会社設立の段階でこの表を見ておけば、必要な人員と費用を見積もることができます。
たとえば教育訓練です。派遣スタッフが20人いれば、一人あたり年8時間で合計160時間分の賃金がかかります。加えて、訓練を企画し、実施し、記録する手間もかかります。この作業を誰が担当するのかを、会社設立の段階で決めておく必要があります。
情報提供も同じです。マージン率や派遣料金の平均額を事業年度ごとに集計し、インターネットなどで提供します。これも決算とあわせて発生する作業です。人材派遣の会社設立では、こうした事務を担う人の分の人件費まで見込んでおいてください。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元責任者講習にも、期限があります

派遣元責任者講習の受講にも期限があります。新規の許可申請では、許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限られます。
更新の場合は、許可の有効期間が満了する日前3年以内の受講日のものが求められます。つまり、更新のたびに受け直すことになります。
有効期間が3年、そのあと5年ごとという周期を考えると、講習は少なくとも数年に一度は受けることになります。会社設立の段階でこの周期を知っておくと、忘れずに済みます。
- 新規許可の場合
- 許可の申請の受理の日前3年以内の受講
- 更新の場合
- 許可の有効期間が満了する日前3年以内の受講日のもの
- 講習機関
- 厚生労働省告示(平成27年厚生労働省告示第392号)に定められた講習機関
- 派遣元責任者が交代する場合
- 新しい責任者も受講している必要があります
- 職務代行者
- 派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者も、あらかじめ選任しておきます
人材派遣の会社設立から3年後の更新に向けて、逆算して予定を組んでおいてください。更新申請の3か月前に間に合うように講習を受け、そのさらに前に資産要件を確かめておく。この順番になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
更新できなかった場合に、何が起きるか

更新できなかった場合、許可は有効期間の満了とともに失効します。労働者派遣事業を行うことはできなくなります。
そうなると、次のようなことが起こります。
- 派遣先との労働者派遣契約を続けられなくなります
- 雇用している派遣スタッフの就業先がなくなります
- 会社設立から積み上げてきた取引先との関係が途切れます
- 事業所の賃貸借契約や、雇用契約に伴う責任は残ります
- 無許可で労働者派遣を行えば、罰則の対象になります
最後の項目は特に重要です。許可が失効したあとに労働者派遣を続ければ、無許可で労働者派遣事業を行ったことになります。労働者派遣法には罰則の定めがあります。
また、更新できない場合だけでなく、許可の取消という処分もあります。労働局には指導・監督の権限があり、違反があれば改善命令、事業停止命令、そして許可の取消に至ることがあります。
そして、判断に迷うところは所管の都道府県労働局に相談してください。更新の要件を満たしているか不安な場合も、期限が来る前に相談するほうが選択肢が残ります。
なお、事業を廃止する場合には廃止の届出という手続きがあります。更新できずに失効するのと、自ら廃止の届出をするのとでは、その後の扱いが異なる場合があります。判断に迷うときは、この点も含めて労働局に相談してください。
人材派遣の会社設立を考える段階でこの話を読むのは、気が重いかもしれません。ただ、更新できるかどうかは会社設立のときの設計にかなりの部分が決まっています。資本金に余裕があるか、教育訓練を実施できる体制があるか、記録を残す仕組みがあるか。先に知っておく価値のある話です。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|会社設立から続く期限

労働者派遣事業の許可の有効期間と、そこから続く期限についてまとめます。
- 初めての許可は3年、更新後は5年。 以後はそれを繰り返します。
- 更新申請は満了の3か月前まで。 申請日の超過は認められません。
- 更新でも資産要件が確かめられる。 会社設立のときに一度満たせばよい、というものではありません。
- 3年間の実施状況が見られる。 教育訓練、キャリア形成支援、雇用安定措置。計画だけでは足りません。
- 派遣元責任者講習にも期限。 更新のときにも3年以内の受講が求められます。
- 許可のあいだに義務が続く。 教育訓練、情報提供、事業報告書、社会保険。毎年の作業になります。
- 更新できなければ事業を続けられない。 無許可で労働者派遣を行えば罰則の対象になります。
人材派遣の会社設立にかかる期間は数か月ですが、許可を維持する期間は事業を続けるかぎり続きます。会社設立の段階でこの先を見ておくと、資本金の額にも役員報酬の設計にも根拠が生まれます。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。更新の要件と手続きは所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、資産を維持するための設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可は、取ってからのほうが長い
人材派遣の会社設立にかかる時間は数か月ですが、許可を維持する期間は事業を続けるかぎり続きます。3年、そのあとは5年ごとに更新が来ます。
そして更新のたびに、基準資産額と自己名義の現金・預金の要件を満たしているかを確かめられます。会社設立のときに一度満たせばよい、という性質のものではありません。
更新の要件と手続きは所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、資産を維持するための役員報酬や決算の設計は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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