派遣元責任者の職務と、職務代行者。人材派遣の会社設立で決める体制
体制を決める方へ
人材派遣の会社設立で、誰を派遣元責任者にし、誰を職務代行者にするかを決めようとしている方に向けた記事です。
派遣元責任者は、選任すれば終わりではありません。日々の職務が続きます。誰がそれを担うのかを決めるのが、この記事の目的です。
そして事業所を増やせば、その数だけ派遣元責任者が必要になります。会社設立の段階で、将来の体制まで見ておいてください。
派遣元責任者は、何をする人なのか

派遣元責任者は、労働者派遣事業において派遣労働者の雇用管理を適正に行うために選任される人です。労働者派遣法第36条に定めがあります。
厚生労働省の許可基準は、派遣元責任者について「雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること」を求めています。
会社設立の段階では書類上の役職に見えるかもしれませんが、実際には日々の運営の中心になります。主な職務を挙げます。
- 派遣労働者であることの明示
- 就業条件の明示
- 派遣先との連絡調整
- 派遣労働者からの苦情の処理
- 派遣元管理台帳の作成、記載、保存
- 教育訓練の実施に関すること
- 安全衛生に関する連絡調整
- 個人情報の管理に関すること
これらを実際に行える人でなければなりません。だからこそ、経験の要件があり、講習の受講が求められ、名義貸しが否定されているのです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
苦情処理という職務

派遣元責任者の職務のなかで、実務上いちばん見えにくいのが苦情処理です。
派遣スタッフは、派遣元に雇用されながら派遣先で働きます。この形では、就業条件や職場環境について困りごとが生じやすくなります。
派遣元責任者は、こうした苦情を受け、派遣先と連絡調整をして解決にあたります。これが職務のひとつです。
そして、許可基準には次の条件があります。派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること。
つまり、苦情があったときに派遣元責任者が実際に行ける範囲で派遣を行う、という考え方です。人材派遣の会社設立で事業計画を作るとき、この条件との関係を確かめておいてください。
会社設立の段階では、事業所1か所で始めて、日帰りで往復できる範囲に派遣するという形が現実的です。
苦情処理は、派遣先との関係にも関わります。派遣先で困りごとが生じたとき、派遣元が間に入って調整することになります。この対応が遅れれば、派遣スタッフは辞めますし、派遣先との関係も悪くなります。
人材派遣は人を扱う事業です。会社設立の段階では書類の話が中心になりますが、実際に事業が始まれば、この種の対応が日々の仕事になります。誰がそれを担うのかを決めておいてください。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元管理台帳という職務

派遣元管理台帳の作成も、派遣元責任者の職務です。
派遣元事業主は、派遣労働者ごとに台帳を作成し、必要な事項を記載することとされています。そして一定期間の保存も求められます。
厚生労働省の業務取扱要領は、教育訓練等の情報の管理についても、原則として派遣元管理台帳等を活用することを求めています。
つまり、台帳は許可の要件とも結びついています。キャリアアップ措置に関する実施状況等、教育訓練等の情報を管理した資料は、労働契約終了後3年間保存することとされているからです。
会社設立の段階で、どういう形で台帳を作り、どう記録していくかを決めておいてください。紙で管理するのか、表計算で管理するのか、専用の仕組みを使うのか。それぞれに手間と費用があります。
人材派遣の会社設立で、記録の仕組みを最初に決めておく意味は、ここにあります。あとから作れないものだからです。
派遣元管理台帳には、派遣労働者ごとの就業状況を記載します。派遣先の名称、就業場所、業務の内容、就業した日と時間、従事した業務の種類といった事項です。これを派遣スタッフごとに、毎月記録していくことになります。
派遣スタッフが20人いれば、20人分です。この作業を誰が担うのかも、会社設立の段階で決めておいてください。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
教育訓練の実施という職務

教育訓練の実施も、派遣元責任者の職務に含まれます。そして、これは労働者派遣事業の許可の要件でもあります。
厚生労働省の許可基準は、教育訓練について次のように定めています。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること。
そして、有給かつ無償で行われるものであることとされています。教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことが原則です。
入職時の教育訓練は、派遣労働者全員に必須です。採用のたびに実施することになります。
あわせて、キャリアコンサルティングの相談窓口も必要です。担当者には、キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングの知見を有する者、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者を配置します。
一人で人材派遣の会社設立をする場合、これらもすべて自分でこなすことになります。教育訓練の企画、実施、記録。売上に直結しない作業ですが、許可の要件です。
そして、教育訓練は有給かつ無償で行うことが原則です。受講時間の賃金を支払う必要があるため、人件費としても効いてきます。派遣スタッフが20人いれば、一人あたり年8時間で合計160時間分です。
会社設立の収支計画では、この費用も見込んでおいてください。許可の要件である以上、実施しないという選択肢はありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
職務代行者の役割

派遣元責任者が不在のときに、その職務を代わって行うのが職務代行者です。
厚生労働省の許可基準は「派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること」を求めています。
あらかじめ、という点が重要です。必要になってから決めるのではなく、許可申請の時点で決まっている必要があります。
そして、派遣元責任者本人が職務代行者を兼ねることはできません。不在のときの代わりだからです。

人材派遣の会社設立を一人で進めようとするとき、ここが実質的な壁になります。会社の登記は一人でできても、許可を取る段階でもう一人が必要になるからです。
職務代行者に求められる具体的な要件については、所管の都道府県労働局にご確認ください。派遣元責任者と同じ経験の要件が必要かどうかは、確かめておく価値があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事業所ごとに、派遣元責任者が必要です

派遣元責任者は、事業所ごとに選任します。事業所を増やせば、その数だけ要件を満たす人が必要になります。
厚生労働省の許可基準は、組織的基礎について「派遣労働者数に応じた派遣元責任者が配置される等組織体制が整備されるとともに、労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、指揮命令に混乱の生ずるようなものではないこと」としています。
つまり、事業所の数だけでなく、派遣労働者の数にも応じた配置が求められるということです。
| 事業所数 | 必要な体制 | 資産要件 |
|---|---|---|
| 1か所 | 派遣元責任者1名+職務代行者 | 基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円 |
| 2か所 | 事業所ごとに派遣元責任者と職務代行者 | 基準資産額4,000万円・現金預金3,000万円 |
| 3か所 | 同じく事業所ごとに | 基準資産額6,000万円・現金預金4,500万円 |
派遣労働者の数に応じた配置も求められます。詳しくは所管の都道府県労働局にご確認ください。
この表を見ると、事業所を増やすことの負担が二重であることが分かります。資産要件が増え、人も増やす必要があるからです。
人材派遣の会社設立では、事業所1か所から始めるのが現実的です。事業が軌道に乗り、資金と人の両方が整ってから増やすという順番になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の段階で、体制を決めておく

人材派遣の会社設立の段階で、誰が何を担うかを決めておいてください。

この七つのうち、上の三つは許可の要件に直接関わります。決めていなければ、許可申請の段階で止まります。
下の四つは、許可を取ったあとに続く作業です。決めていなくても許可は下りますが、後回しになって3年後の更新で問題になります。
一人で人材派遣の会社設立をする場合、これらをすべて自分でこなすことになります。営業と採用に追われて後回しにならないよう、意識して時間を確保する必要があります。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可の更新で、職務の実施状況が見られます

派遣元責任者の職務が実際に行われていたかは、許可の更新のときに見られます。
厚生労働省の業務取扱要領は、更新の判断についてこう書いています。キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとともに必要な指導を行い、計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする。
つまり、教育訓練の計画を作っただけでは足りません。実際に実施し、記録を残していたかが見られます。
そして、雇用安定措置についても同じです。更新申請の直前の有効期間内において許可基準を満たす実施状況であったかを確認し、実施されないような義務違反がみられた場合は、許可を更新しないこととする、とされています。
人材派遣の会社設立の段階で作る教育訓練計画は、実行できる内容にしておいてください。立派な計画を作っても、実施していなければ意味がありません。
派遣元責任者の職務は、選任した時点で始まります。そして許可を維持するかぎり続きます。会社設立の段階で、続けられる体制を作っておいてください。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|派遣元責任者の職務と体制

派遣元責任者の職務と、会社設立で決める体制について、まとめます。
- 派遣元責任者は日々の運営の中心。 苦情処理、就業条件の管理、台帳の作成、教育訓練の実施。
- 日帰りで往復できる地域という条件がある。 苦情処理等の場合に、実際に行ける範囲で派遣を行います。
- 派遣元管理台帳の作成も職務。 教育訓練等の記録は労働契約終了後3年間の保存が求められます。
- 教育訓練の実施は許可の要件でもある。 最初の3年間は毎年概ね8時間以上、有給かつ無償で。
- 職務代行者をあらかじめ選任する。 派遣元責任者本人は兼ねられません。最低二人が要ります。
- 事業所ごとに派遣元責任者が必要。 事業所を増やす負担は、資金と人の二重になります。
- 更新で実施状況が見られる。 計画だけでは足りません。
派遣元責任者は、選任すれば終わりではありません。日々の職務が続き、それが許可の維持につながります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。要件と職務の内容は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成と労働社会保険の手続きは社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
選任は、始まりです
派遣元責任者は、書類上の役職ではありません。派遣スタッフの苦情を受け、就業条件を管理し、教育訓練を実施する。日々の職務が続きます。
そして許可の更新のときには、この職務が実際に行われていたかが見られます。会社設立の段階で、続けられる体制を作っておいてください。
要件と職務の内容は所管の都道府県労働局へ、就業規則の作成と労働社会保険の手続きは社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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