教育訓練の記録は3年間保存します。人材派遣の会社設立で決める運用の仕組み
記録の仕組みを決める方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、教育訓練の記録をどう残せばよいかを知りたい方に向けた記事です。
厚生労働省の許可基準は、教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間保存することを求めています。労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間です。
この記録は、許可の更新のときに実施状況を示す材料になります。あとから作れないものなので、会社設立の段階で仕組みを決めておいてください。
記録の保存は、許可基準に定められています

教育訓練の記録について、厚生労働省の許可基準は次のように定めています。
派遣元事業主は、派遣労働者のキャリアアップ措置に関する実施状況等、教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること。労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間は保存していること。
— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)
つまり、派遣スタッフとの労働契約が終わったあとも、3年間は記録を持っておく必要があるということです。
そして労働契約が更新された場合は、更新された労働契約が終了してから3年間です。長く働いてもらう派遣スタッフほど、記録を持つ期間も長くなります。
人材派遣の会社設立の段階では、まだ派遣スタッフを雇っていません。それでも、この記録をどう残すかの仕組みは決めておく必要があります。あとから整えるのは難しいからです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元管理台帳の活用が原則です

記録をどう管理するかについて、厚生労働省の業務取扱要領は原則を示しています。
個別の派遣労働者ごとに派遣元事業主の事業所でのキャリアアップに資する教育訓練の実績等を保存することはその実施を把握する上で重要なことから、キャリア形成支援制度に関連する情報(計画・実績等)を労働契約終了から3年間管理する体制を整備することを求めることとし、当該整備にあたっては、人事記録等でも構わないが、原則として派遣元管理台帳等を活用すること。
そして、派遣元管理台帳や人事記録等に記載されていない場合には、必要な指導を行うこととされています。
派遣元管理台帳は、派遣労働者ごとに作成する台帳です。派遣先の名称、就業場所、業務の内容、就業した日と時間、従事した業務の種類といった事項を記載します。
この台帳に、教育訓練の実施状況も記載していくという形が原則になります。人材派遣の会社設立では、この台帳をどういう形で作るかを最初に決めておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
何を記録するのか

記録する内容について、具体的な様式が定められているわけではありません。ただし、実施状況が分かるものである必要があります。
実務上、記録しておきたい項目を挙げます。
- 誰が受講したか(派遣労働者の氏名)
- いつ実施したか(日付と時間)
- 何時間実施したか(時間数)
- どういう内容だったか(訓練の名称と内容)
- 有給として扱ったか(賃金を支払ったか)
- 実施の形態(会場での研修、電子的な学習、日常の業務につきながらの計画的な訓練など)
- 入職時の教育訓練かどうか
三つ目の時間数がとくに重要です。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は毎年概ね8時間以上という基準があるからです。
この基準を満たしていることを示すには、誰が何時間受講したかの記録が要ります。
あわせて、キャリアコンサルティングの実施状況も記録しておくとよいでしょう。相談窓口を設置しているだけでなく、実際に利用されているかも運営の材料になります。
そして、記録は派遣スタッフごとに残すことになります。厚生労働省の業務取扱要領も、個別の派遣労働者ごとに教育訓練の実績等を保存することが、その実施を把握する上で重要としています。
全体で何時間実施した、という集計だけでは足りません。誰が何時間受けたかが分かる形にしておいてください。一人あたり毎年概ね8時間以上という基準を満たしているかを示すためです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
記録の形を、会社設立の段階で決める

記録をどういう形で残すか。会社設立の段階で決めておくと、あとが楽になります。

人材派遣の会社設立で小さく始める場合、最初は紙や表計算で足りることが多いでしょう。ただし、派遣スタッフが増えれば管理が大変になります。
そして、どちらの形でも個人情報の管理に関する措置が必要です。紙なら施錠できる保管場所、電子データならアクセス権限の管理といった対応になります。
会社設立の段階で人数の見通しを立てて、それに合った形を選んでください。あとから形を変えると、過去の記録の移行という作業が発生します。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
誰が記録するのかを決める

記録の形と同じくらい大事なのが、誰が記録するかです。
教育訓練の記録は、忙しくなると後回しになりがちです。売上に直結しないうえ、すぐに困るわけでもないからです。
ところが、3年後の更新のときには、この記録が実施状況を示す唯一の材料になります。あとから作ることはできません。
人材派遣の会社設立で一人に近い体制を考えている場合、この作業も自分でこなすことになります。営業と採用に追われて後回しにしないよう、意識して時間を確保する必要があります。
仕組みで補う工夫もあります。訓練を実施したその日のうちに記録する、月末にまとめて確認する、といったルールを決めておくことです。
そして、担当する人が変わることもあります。引き継ぎができる形にしておくことも、仕組みの一部です。
人材派遣の会社設立で内勤の従業員を採用するとき、この作業を任せることもできます。ただし、派遣元責任者としての職務は外に出せません。記録の作成を任せるとしても、その内容を確認する責任は残ります。
会社設立の段階で、誰が何を担当するのかを表にしておいてください。許可申請の書類をそろえるときにも、更新のときにも役に立ちます。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
記録と、情報提供の関係

記録は、情報提供の元にもなります。
派遣元事業主には、事業所ごとの派遣労働者の数、派遣先の数、派遣料金の平均額、派遣労働者の賃金の平均額、マージン率、労使協定を締結しているか否かの別、派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項などについて、情報提供することが求められています。
このうち、キャリア形成支援制度に関する事項は、教育訓練の記録が元になります。どういう訓練を実施しているかを示すためです。
そして、厚生労働省の許可基準は、段階的かつ体系的な教育訓練計画の内容についての情報をインターネットの利用その他適切な方法により提供することが望ましいこと、としています。
つまり、この情報は公開されるものだということです。人材派遣の会社設立で教育訓練計画を作るとき、公開される前提で考えてください。
記録をきちんと残していれば、この集計も楽になります。逆に記録がなければ、集計そのものができません。
人材派遣の会社設立で記録の仕組みを決めるとき、この集計のしやすさも考えてください。決算のあとに、まとめて集計する作業が毎年発生します。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
更新のときに、記録が効いてきます

会社設立から3年後、労働者派遣事業の許可の更新が来ます。そのとき、記録が効いてきます。
厚生労働省の業務取扱要領は、更新の判断についてこう書いています。キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとともに必要な指導を行い、計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする。
実施していたことを示すのが、記録です。記録がなければ、実施していないと判断されかねません。

この図で見ていただきたいのは、いちばん上です。記録の仕組みは、会社設立の段階で決めるものです。許可を取ってから考えるのでは、初期の記録が抜けます。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
記録の管理と、個人情報の管理

教育訓練の記録には、派遣スタッフの個人情報が含まれます。したがって、個人情報の管理に関する措置も必要になります。
厚生労働省の許可基準は、個人情報管理の措置として次の内容を求めています。
- 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること
- 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置が講じられていること
- 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員以外の者による個人情報へのアクセスを防止するための措置が講じられていること
- 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が講じられていること
三つ目に対応するのが、紙なら施錠できる保管場所、電子データならアクセス権限の管理です。
そして四つ目に注意してください。保管する必要がなくなった個人情報は、破棄または削除する必要があります。ただし、教育訓練の記録は労働契約終了後3年間の保存が求められます。この期間は保管し、そのあとに適切に処分するという運用になります。
あわせて、個人情報適正管理規程も作成することになります。個人情報を取り扱う職員の範囲、職員への教育、開示・訂正の取扱い、苦情処理の体制。これらを含む規程です。
この規程は、労働者派遣事業の許可申請の添付書類でもあります。会社設立の準備で作る書類のひとつです。教育訓練の記録の管理も、この規程に沿って行うことになります。
人材派遣の会社設立では、就業規則、個人情報適正管理規程、教育訓練計画、そして派遣先の提供のための事務手引。この四つを自分で作ることになります。記録の仕組みも、これらとあわせて設計してください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|記録の仕組み

教育訓練の記録について、まとめます。
- 労働契約終了後3年間の保存。 労働契約が更新された場合は、更新された労働契約終了後3年間です。
- 派遣元管理台帳の活用が原則。 人事記録等でも構わないとされていますが、どこかに必ず残す必要があります。
- 記録するのは実施の事実。 誰が、いつ、何時間、どういう内容を受けたか。
- 形と担当を会社設立の段階で決める。 あとから変えると、過去の記録の移行という作業が発生します。
- 記録は情報提供の元にもなる。 キャリア形成支援制度に関する事項を提供します。
- 更新のときに実施状況を示す材料になる。 記録がなければ、実施していないと判断されかねません。
- 個人情報の管理も必要。 保存と破棄の両方が求められます。
教育訓練の記録は、忙しくなると後回しになりがちです。だからこそ、仕組みで補う必要があります。誰が、いつ、どういう形で記録するのか。会社設立の段階でこれを決めておけば、続けやすくなります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。記録の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、労働社会保険の手続きは社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
仕組みを決めておけば、続けられます
教育訓練の記録は、忙しくなると後回しになりがちです。売上に直結しないうえ、すぐに困るわけでもないからです。
だからこそ、仕組みで補う必要があります。誰が、いつ、どういう形で記録するのか。会社設立の段階でこれを決めておけば、続けやすくなります。
記録の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、労働社会保険の手続きは社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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