社会保険の事務は毎月続きます。人材派遣の会社設立で決める担当と仕組み
事務の担当を決める方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、社会保険の事務を誰がどう担うかを決めようとしている方に向けた記事です。
人材派遣は、派遣スタッフの入れ替わりが起こりやすい事業です。そのたびに資格取得届や資格喪失届が発生します。
この事務は毎月続きます。会社設立の段階で担当と仕組みを決めておかないと、事業が伸びたときに回らなくなります。
会社設立の直後に来る手続き

会社設立の登記が完了すると、保険関係の手続きが始まります。まず、事業所としての手続きです。
| 窓口 | 届出 | 内容 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 法人は原則として適用事業所になります |
| 年金事務所 | 被保険者資格取得届 | 被保険者となる人ごとに提出します |
| 年金事務所 | 被扶養者(異動)届 | 被扶養者がいる場合に提出します |
| 労働基準監督署 | 保険関係成立届 | 労働者を雇用したときに提出します |
| 労働基準監督署 | 概算保険料申告書 | 労働保険料の申告と納付 |
| ハローワーク | 雇用保険 適用事業所設置届 | 雇用保険の被保険者となる労働者を雇用したときに |
| ハローワーク | 雇用保険 被保険者資格取得届 | 被保険者となる人ごとに提出します |
提出期限は届出ごとに定められています。詳細は日本年金機構・厚生労働省の案内、または社会保険労務士にご確認ください。
これらは会社設立の直後に一度だけ行う手続きです。ただし、そのあとは継続的な手続きが続きます。
人材派遣の会社設立では、この時期に許可申請の準備も同時に進めています。就業規則、個人情報適正管理規程、教育訓練計画。そして派遣元責任者講習の受講。
やることが一度に来るため、誰がどれを担当するのかを先に決めておかないと、抜けが出ます。
会社設立の準備の段階で、この分担を決めておいてください。社会保険労務士に依頼するという方法もあります。
なお、これらの手続きは労働者派遣事業の許可申請とは別のものです。会社設立の登記が終われば、許可が下りる前でも保険関係の手続きは進めることになります。
そして、派遣スタッフの労働保険・社会保険への適正な加入は、許可基準に含まれています。許可を受けたあとの運営でも、この手続きが続いていくことになります。
出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月27日確認)
採用のたびに発生する手続き

許可が下りて営業が始まると、派遣スタッフの採用が始まります。そのたびに手続きが発生します。
採用時に必要になる主な手続きを並べます。
- 雇用契約の締結と、労働条件の明示
- 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届(条件を満たす場合)
- 被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
- 雇用保険の被保険者資格取得届(条件を満たす場合)
- 派遣労働者であることの明示
- 就業条件の明示
- 派遣元管理台帳の作成
- 入職時の教育訓練の実施と記録
このうち、二つ目から四つ目が保険関係です。条件を満たす派遣スタッフについては、加入させることになります。
そして、これらは人数分だけ発生します。10人採用すれば10人分、20人なら20人分です。
人材派遣は、派遣先の年度替わりに契約の開始が集中する傾向があります。その時期には、採用も集中します。事務の負担も、その時期に集中することになります。
あわせて、入職時の教育訓練も採用のたびに実施することになります。労働者派遣事業の許可基準は、派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであることを求めています。
つまり、採用のたびに保険の手続きと教育訓練の両方が発生するということです。会社設立の段階で、この流れを一本にしておくと運用しやすくなります。
出典1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき (日本年金機構/2026年8月27日確認)
退職のたびに発生する手続き

派遣スタッフが退職するときにも、手続きが発生します。
- 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届
- 健康保険被保険者証の回収と返納
- 雇用保険の被保険者資格喪失届
- 離職証明書の作成(本人が希望する場合など)
- 源泉徴収票の交付
- 派遣元管理台帳の記載と保存
- 教育訓練等の記録の保存(労働契約終了後3年間)
人材派遣は、派遣スタッフの入れ替わりが起こりやすい事業です。契約期間が定められている場合、その終了とともに雇用が終わることもあります。
つまり、採用の手続きと退職の手続きが、どちらも継続的に発生するということです。
そして、六つ目と七つ目に注目してください。退職しても記録は残ります。教育訓練等の情報を管理した資料は、労働契約終了後3年間の保存が求められます。
人材派遣の会社設立では、この保存の仕組みも決めておいてください。退職した人の記録をどこに保管するのか、いつ破棄するのか。
出典1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき (日本年金機構/2026年8月27日確認)
毎月と毎年の手続き

採用と退職のたびの手続きに加えて、定期的な手続きもあります。
- 毎月
- 給与計算、社会保険料と所得税の控除、保険料の納付
- 毎年(7月ごろ)
- 算定基礎届。標準報酬月額を見直します
- 随時
- 月額変更届。賃金が大きく変わった場合
- 毎年(年度更新)
- 労働保険の年度更新。前年度の確定と、当年度の概算
- 毎年(年末)
- 年末調整
- 毎事業年度経過後
- 事業報告書の作成と提出(労働者派遣事業の義務)
一つ目の給与計算が、いちばん頻度の高い作業です。派遣スタッフの勤怠を集計し、賃金を計算し、社会保険料と所得税を控除して支払う。これを毎月繰り返します。
そして、この作業も人数に比例します。派遣スタッフが20人いれば、20人分の計算です。
二つ目の算定基礎届は、毎年7月ごろに行う手続きです。標準報酬月額を見直すためのもので、被保険者全員について提出します。
人材派遣の会社設立で事務の負担を見積もるとき、この定期的な作業も入れておいてください。採用と退職のたびの手続きだけではありません。
出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月27日確認)
自分でやるか、外に出すか

この事務を自分でやるか、社会保険労務士に依頼するか。判断の材料を整理します。

判断の目安になるのは、派遣スタッフの人数と、自分の時間の使い方です。
派遣スタッフが5人のうちは、自分でやっても回ります。20人、30人になると、事務に取られる時間が無視できなくなります。
そして人材派遣では、営業と採用を止めると事業が縮みます。派遣スタッフは辞めますし、派遣先との契約も終わります。事務に追われて営業ができない、という状態はいちばん避けたいところです。
人材派遣の会社設立の段階では、まだ派遣スタッフがいません。それでも、伸びたときの体制を考えておいてください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
給与計算という、もうひとつの作業

社会保険の手続きとあわせて考えたいのが、給与計算です。
人材派遣では、派遣スタッフの勤怠を派遣先から受け取り、それをもとに賃金を計算します。そこから社会保険料と所得税を控除して、支払います。
この作業は毎月発生し、人数に比例します。そして、締めから支払いまでの日数が限られているため、時間の制約もあります。
さらに人材派遣では、派遣先ごとに就業時間の締め日が異なることがあります。複数の派遣先に派遣していれば、それぞれの勤怠を集計する作業が発生します。
会社設立の段階で、この作業をどう回すかも決めておいてください。勤怠の集計方法、計算の方法、支払いの方法。仕組みを決めておけば、人数が増えても回りやすくなります。
給与計算を社会保険労務士に依頼する場合、社会保険の手続きとあわせて頼めることが多くなります。人材派遣とは相性のよい組み合わせです。
そして、労働者派遣事業の許可申請の書類作成も社会保険労務士の業務です。会社設立の段階から相談しておけば、許可申請から設立後の運営まで一貫して見てもらえます。
人材派遣の会社設立では、この相談先を早めに決めておくことをおすすめします。就業規則の整備も許可の要件に関わるからです。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
仕組みで補うという考え方

事務の負担を減らす方法は、人を増やすか外に出すかだけではありません。仕組みで補うという方向もあります。
勤怠の集計、給与の計算、請求書の作成、派遣元管理台帳の記録。これらは仕組みを整えれば時間を減らせます。
会社設立の段階でどういう仕組みを使うかを決めておくと、人数が増えたときに慌てずに済みます。
- 勤怠の集計をどうするか(紙、表計算、専用の仕組み)
- 給与計算をどうするか
- 請求書の作成をどうするか
- 派遣元管理台帳をどう作るか
- 教育訓練の記録をどう残すか
- 社会保険の手続きをどう行うか(窓口、郵送、電子申請)
六つ目の電子申請について補足します。社会保険や労働保険の手続きは、電子申請に対応しているものがあります。窓口に出向く時間を減らせます。
ただし、仕組みにも費用がかかります。人材派遣の会社設立では、この費用も収支計画に入れておいてください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事務の負担も、収支計画に入れる

事務の負担は、費用として収支計画に入れておく必要があります。
| 項目 | 計上のしかた |
|---|---|
| 社会保険労務士への報酬 | 依頼する場合。人数に応じて上がることが一般的です |
| 給与計算の費用 | 社会保険労務士に依頼する場合、あるいは自分でやる時間 |
| 仕組みの利用料 | 勤怠管理、給与計算、台帳の管理 |
| 内勤の人件費 | 自社で担当者を置く場合 |
| 自分でやる場合の時間 | 営業や採用に使えたはずの時間として |
金額は依頼する範囲と人数によって変わります。見積もりでご確認ください。
五つ目に注目してください。自分でやる場合、目に見える費用はかかりません。ただし、その時間を営業や採用に使えば売上になったはずです。
人材派遣の会社設立で一人に近い体制を考えている場合、この機会費用を意識してください。事務に取られる時間が増えるほど、事業を伸ばす時間が減ります。
そして、この費用は派遣スタッフの人数に比例して増えます。事業が伸びれば、事務の費用も増えるということです。
そして、この費用が利益を圧迫すれば、基準資産額の積み上がりも遅くなります。労働者派遣事業の許可は3年ごと(更新後は5年ごと)に更新があり、そのたびに資産要件が確かめられます。
人材派遣の会社設立では、事務の費用まで含めて黒字にできる収支計画を立ててください。売上から賃金を引いた残りだけを見ていると、計画が甘くなります。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
まとめ|社会保険の事務

人材派遣における社会保険の事務について、まとめます。
- 会社設立の直後に、事業所としての手続きが来る。 年金事務所、労働基準監督署、ハローワークの三つの窓口へ。
- 採用のたびに手続きが発生する。 資格取得届など。人数分だけです。
- 退職のたびにも手続きが発生する。 資格喪失届など。記録は3年間保存します。
- 毎月と毎年の手続きもある。 給与計算、算定基礎届、労働保険の年度更新。
- 自分でやるか外に出すか。 人数と、自分の時間の使い方で判断します。
- 給与計算も毎月、人数分だけ。 締めから支払いまでの時間の制約もあります。
- 仕組みで補う方向もある。 小さいうちに、伸びたときを想定して作ってください。
- 事務の費用も収支計画に入れる。 自分でやる場合も、時間という費用がかかります。
人材派遣は、派遣スタッフの入れ替わりが起こりやすい事業です。事務の負担は、人数と入れ替わりの頻度に比例します。
人材派遣の会社設立の段階で、この事務を誰がどう担うかを決めておいてください。事業が伸びてから考えるのでは、遅くなります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省・日本年金機構の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。手続きの詳細は日本年金機構・厚生労働省の公表資料で、実務は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月27日確認)
仕組みは、小さいうちに作ってください
派遣スタッフが5人のうちは、どんな方法でも回ります。20人、30人になったときに、その方法で回るかどうかが問題です。
人材派遣の会社設立の段階で、伸びたときを想定した仕組みを作っておいてください。あとから変えるのは大変です。
手続きの詳細は日本年金機構・厚生労働省の公表資料で、実務は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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