労使協定方式と派遣先均等・均衡方式。人材派遣の会社設立で選ぶ二つの道
方式を選ぶ前に読んでいただきたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、同一労働同一賃金への対応をどうすればよいかを知りたい方に向けた記事です。
派遣元事業主は、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のいずれかによって、派遣労働者の待遇を確保することとされています。どちらを選ぶかで、人件費の設計そのものが変わります。
この記事では、二つの方式の違いと、会社設立の段階で考えておくことを整理します。
派遣元事業主には、待遇確保の義務があります

派遣労働者の待遇について、派遣元事業主には義務があります。
厚生労働省は、派遣元事業主に対して、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のいずれかによって、派遣労働者の待遇を確保することを求めています。
- 派遣先均等・均衡方式
- 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を確保する方式です
- 労使協定方式
- 一定の要件を満たす労使協定による待遇を確保する方式です
- どちらかを選ぶ
- いずれかの方式によることとされています
- 情報提供の対象
- 労使協定を締結しているか否かの別は、情報提供の対象になっています
四つ目に注目してください。どちらの方式を選んでいるかは、事業所ごとに公開されることになります。派遣スタッフにも派遣先にも見られる情報です。
人材派遣の会社設立では、この方式の選択を最初に考えることになります。どちらを選ぶかで、賃金の決め方が変わるからです。
そして賃金が変われば、社会保険料の事業主負担も変わります。人件費の設計そのものが変わるということです。
なお、この待遇確保の義務は、労働者派遣事業の許可を受けているかどうかにかかわらず、派遣元事業主に課されるものです。ただし、許可を受けなければ労働者派遣事業を行えないため、実務上は許可とセットで考えることになります。
人材派遣の会社設立では、許可の要件を満たすことと、この待遇確保の義務に対応することを、同時に進めることになります。会社設立の準備の段階から、両方を考えておいてください。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣先均等・均衡方式とは

一つ目が、派遣先均等・均衡方式です。
これは、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を確保する方式です。派遣スタッフの待遇を、派遣先で同じような仕事をしている人と比べて決めるということになります。
この方式では、派遣先から待遇に関する情報の提供を受ける必要があります。比較の対象となる労働者の待遇が分からなければ、均等・均衡を確保できないからです。
そして、派遣先が変われば比較の対象も変わります。同じ派遣スタッフでも、派遣先によって待遇が変わる可能性があるということです。
人材派遣の会社設立でこの方式を選ぶ場合、派遣先ごとに待遇を設計することになります。派遣先が増えれば、その分だけ設計の手間も増えます。
一方で、派遣先の水準に合わせるため、派遣先との交渉がしやすいという面もあるかもしれません。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労使協定方式とは

二つ目が、労使協定方式です。
これは、派遣元事業主が労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、その協定にもとづいて待遇を決める方式です。
この方式では、賃金の水準に基準があります。厚生労働省の説明によれば、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上でなければならないとされています。
そして、この一般労働者の賃金水準は、厚生労働省職業安定局長の通達で示されます。この通達は毎年出されるため、労使協定も毎年締結し直すことが通例です。
あわせて、賃金の改善が図られる仕組み、たとえば昇給の規定なども設けることとされています。
人材派遣の会社設立でこの方式を選ぶ場合、派遣先が変わっても賃金の基準は変わりません。派遣元の協定にもとづいて決まるからです。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
二つの方式を、並べて比べる

二つの方式を並べて比べてみます。

実務上、多くの派遣元事業主が労使協定方式を選んでいると言われます。派遣先ごとに待遇を設計する手間を避けられるためと考えられます。
ただし、労使協定方式にも負担はあります。過半数代表者の選出、協定の作成、締結。これを毎年繰り返すことになります。
そして、どちらの方式でも賃金には下限ができます。会社が自由に決められる部分は限られているということです。
人材派遣の会社設立で方式を選ぶとき、賃金の水準と運用の負担の両方を見て決めてください。
そして、この対応は労働者派遣事業の許可の維持にも関わってきます。労働局には指導・監督の権限があり、違反があれば改善命令などの対象になり得ます。会社設立の段階で、対応できる体制を作っておいてください。
人材派遣の会社設立では、許可の要件を満たすだけでなく、こうした運用上の義務にも対応し続ける必要があります。許可は入口であって、ゴールではありません。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
賃金が決まれば、社会保険料も決まります

方式の選択が人件費の設計に効いてくる理由を、もう少し具体的に見ます。
賃金が決まれば、社会保険料の事業主負担も決まります。健康保険と厚生年金保険の保険料は標準報酬月額にもとづいて計算され、雇用保険と労災保険の保険料は賃金総額に料率を掛けて計算されるからです。
つまり、賃金の水準が上がれば、事業主負担も比例して上がります。
人材派遣の収支は、派遣料金から派遣スタッフの賃金を引いた部分、つまりマージンで成り立ちます。そこから社会保険料の事業主負担が引かれます。
賃金の水準が制度によって決まってくる以上、収支を成り立たせるには派遣料金の水準を確保する必要があります。
人材派遣の会社設立で事業計画を作るとき、この関係を頭に入れておいてください。賃金を抑えて利益を出す、という設計はできません。
出典全国健康保険協会(協会けんぽ) (全国健康保険協会/2026年8月27日確認)
待遇は賃金だけではありません

同一労働同一賃金という言葉から賃金だけを想像しがちですが、待遇の範囲はもっと広くなります。
厚生労働省の公表資料では、賃金のほか、教育訓練や福利厚生施設の利用といった待遇についても言及されています。
たとえば、派遣先の労働者が利用できる福利厚生施設について、派遣労働者にも利用の機会を与えるといった内容です。
そして、教育訓練についても定めがあります。派遣先が、その雇用する労働者に対して業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練については、派遣労働者に対しても実施するよう配慮するといった内容です。
人材派遣の会社設立でこれらに対応するには、派遣先との調整も必要になります。労働者派遣契約を結ぶときに、この点も確かめておくことになります。
詳しい内容は、厚生労働省の公表資料でご確認ください。この記事では、待遇の範囲が賃金だけではないという点にとどめます。
人材派遣の会社設立では、この二つを両方とも用意することになります。許可の要件としての教育訓練計画と、同一労働同一賃金への対応です。どちらも費用と手間がかかります。
会社設立の収支計画では、この両方を見込んでおいてください。許可を取るための費用と、許可を維持しながら事業を運営するための費用は、別に積み上げる必要があります。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
労使協定方式を選ぶ場合の実務

労使協定方式を選ぶ場合の実務を整理します。
まず、労使協定を締結する相手を決める必要があります。労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者です。
労働組合がない場合、過半数代表者を選出することになります。この選出には適正な手続きが求められます。
そして、協定の内容を作成します。対象となる派遣労働者の範囲、賃金の決定方法、賃金の改善が図られる仕組み、その他の待遇の決定方法といった事項です。
賃金の水準については、厚生労働省職業安定局長の通達で示される一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上であることが求められます。この通達は毎年出されます。
したがって、協定も毎年締結し直すことが通例です。人材派遣の会社設立では、この作業が毎年発生することを見込んでおいてください。
そして、締結した労使協定は派遣スタッフに周知することになります。就業規則の周知と同じように、派遣先で働く派遣スタッフにどう届けるかを考える必要があります。
人材派遣の会社設立では、雇用契約を結ぶときにまとめて渡すという形が実務的でしょう。就業規則、教育訓練計画、労使協定。採用時の流れに組み込んでおいてください。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の段階で決めておくこと

人材派遣の会社設立の段階で、この方式について決めておくことを整理します。

四つ目がとくに重要です。賃金の水準が制度によって決まってくる以上、派遣料金の水準を確保できなければ利益が残りません。
人材派遣の会社設立で事業計画を作るとき、この順番で考えてください。賃金の水準を先に置き、そこから派遣料金の水準を逆算するということです。
そして、この計画が現実的かどうかを確かめてください。想定する派遣料金で、派遣先が契約してくれるかどうかです。
そして、この収支が成り立たなければ、赤字になります。赤字が続けば基準資産額が目減りし、労働者派遣事業の許可の更新に影響します。人材派遣の会社設立では、この連鎖まで見ておいてください。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|二つの方式と、人件費の設計

同一労働同一賃金への対応について、まとめます。
- 二つの方式から選ぶ。 派遣先均等・均衡方式か、労使協定方式です。
- 派遣先均等・均衡方式。 派遣先の通常の労働者と比べます。派遣先からの情報提供が前提です。
- 労使協定方式。 一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上。水準は通達で示され、毎年見直されます。
- 賃金を低く設定することはできない。 どちらの方式でも、賃金には下限ができます。
- 賃金が決まれば社会保険料も決まる。 事業主負担は賃金に比例します。
- 待遇は賃金だけではない。 教育訓練や福利厚生施設の利用も含まれます。
- どちらの方式かは公開される。 情報提供の対象です。
どちらの方式を選ぶかで、派遣スタッフの賃金の決め方が変わります。そして賃金が変われば、社会保険料の事業主負担も変わります。人件費の設計そのものが変わるということです。
人材派遣の会社設立で事業計画を作るとき、賃金の水準を先に置き、そこから派遣料金の水準を逆算してください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。方式の選択と労使協定の作成は社会保険労務士へ、収支の設計は税理士へ、要件については所管の都道府県労働局へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典派遣労働者の同一労働同一賃金について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
人件費の設計そのものが変わります
どちらの方式を選ぶかで、派遣スタッフの賃金の決め方が変わります。そして賃金が変われば、社会保険料の事業主負担も変わります。人件費の設計そのものが変わるということです。
そして、どちらの方式を選んでいるかは情報提供の対象です。事業所ごとに公開されるため、外から分かる情報になります。
方式の選択と労使協定の作成は社会保険労務士へ、収支の設計は税理士へ、要件については所管の都道府県労働局へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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