人材紹介と人材派遣は別の制度です。会社設立の前に違いを整理する
どちらの事業をするか決める方へ
人材のビジネスで会社設立を考えていて、人材紹介と人材派遣のどちらにするか決めようとしている方に向けた記事です。
この二つは、根拠となる法律も、許可の要件も、お金の入り方も違います。似た言葉に見えますが、別の制度です。
どちらを選ぶかで、会社設立のときに必要な資本金も、定款の事業目的も変わります。順番としては、先に決めてください。
雇用関係が、どこにあるか

人材紹介と人材派遣の違いは、雇用関係がどこにあるかで説明できます。
人材派遣では、派遣元事業主が派遣スタッフを雇用します。そして、派遣先が指揮命令をします。雇用する会社と指揮命令をする会社が別だということです。
人材紹介では、紹介事業者は求職者を雇用しません。求人者と求職者のあいだに雇用関係が成立するよう、あっせんをします。成立すれば、雇用するのは求人者です。
この違いが、あとのすべてに影響します。
人材派遣では、派遣元が賃金を払い、社会保険料の事業主負担を負い、雇用の責任を負います。派遣先との契約が終わっても、雇用契約が続いていれば雇用の責任は残ります。
人材紹介では、紹介事業者に雇用の責任はありません。紹介した方が入社すれば、そこから先は求人者の責任です。
人材派遣の会社設立を考えている方は、この責任の重さを理解しておいてください。人を雇うということが、事業の中心にあります。
そして、この責任の重さが、労働者派遣事業の許可に資産要件が置かれている理由でもあります。賃金を払い続けられるだけの体力が求められているということです。
そして、指揮命令をするのが誰かという点も重要です。人材派遣では派遣先が指揮命令をします。人材紹介では、紹介事業者が指揮命令をすることはありません。
出典職業安定法(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
根拠となる法律が違います

二つの制度は、根拠となる法律も違います。
人材派遣は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律、いわゆる労働者派遣法によります。
人材紹介、正確には有料職業紹介事業は、職業安定法によります。
労働者派遣法第5条第1項は、労働者派遣事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。
職業安定法第30条第1項は、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。
どちらも許可制ですが、別の許可です。片方の許可を持っていても、もう片方はできません。
そして、それぞれに禁止規定があります。労働者派遣法第4条第1項は港湾運送業務、建設業務、警備業務などについて労働者派遣事業を行ってはならないと定めています。
職業安定法にも、有料職業紹介事業を行ってはならない職業の定めがあります。港湾運送業務に就く職業、建設業務に就く職業などです。
人材派遣の会社設立を考えるとき、どちらの法律のもとで事業をするのかを最初に決めてください。定款の事業目的の書き方も変わります。
また、労働者派遣事業には、マージン率などの情報を事業所ごとに提供する義務があります。派遣料金の平均額も賃金の平均額も公開されるということです。
人材派遣の会社設立では、この透明性も前提になります。掲載する場所として、ホームページを用意しておくことになります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
必要な資産が違います

会社設立でいちばん効いてくるのが、資産要件の違いです。

労働者派遣事業の資産要件は、金額が具体的に定められています。基準資産額が2,000万円に事業所数を乗じた額以上であること、基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること、事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に事業所数を乗じた額以上であること。
この三つを、同時に満たす必要があります。
会社設立のときに資本金を2,000万円にしておけば、初年度はこの要件を満たしやすくなります。ただし、会社設立の費用や事業所の準備でお金を使えば、基準資産額は減ります。
有料職業紹介事業にも財産的基礎に関する要件がありますが、水準は異なります。詳しくは厚生労働省の案内でご確認ください。
人材派遣の会社設立では、この資産要件が最初の関門になります。資本金をいくらにするかは、ここから逆算して決めてください。
なお、労働者派遣事業の許可申請には、収入印紙による手数料12万円と、登録免許税9万円が必要です。会社設立の登記にかかる登録免許税とは別のものです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
お金の入り方が違います

収益の出方も、まったく違います。
人材派遣では、派遣スタッフが働いている限り、毎月派遣料金が入ります。そして、毎月賃金と社会保険料を払います。差額が会社の取り分です。
人材紹介では、紹介が成立したときに手数料が入ります。入社してしまえば、その後の収入はありません。
つまり、人材派遣は継続収入型、人材紹介は成約型です。
この違いは、資金繰りに大きく影響します。
人材派遣では、賃金の支払いが先に来て、派遣料金の入金があとに来ます。派遣スタッフが増えるほど、この立替の額が増えます。
人材紹介では、成約するまで収入がありません。しかし、人を雇っていないので、賃金の立替もありません。
人材派遣の会社設立では、この立替の資金を用意する必要があります。資産要件で現金・預金が求められているのも、これと無関係ではありません。
そして、売上が伸びるほど立替も増えるという構造を理解しておいてください。黒字なのに現金が足りないという状態が起こり得ます。
さらに、人材派遣では教育訓練の費用も発生します。許可の基準として、キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練を、有給かつ無償で実施することが原則とされているからです。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
事業所と責任者の要件も違います

事業所と責任者についても、それぞれに要件があります。
労働者派遣事業の許可の基準は、事業所について、労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あることを求めています。
あわせて、風俗営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと、位置・設備等からみて労働者派遣事業を行うのに適切であることも求められています。
そして、派遣元責任者の選任が必要です。成年に達した後3年以上の雇用管理の経験を有する者などに該当すること、派遣元責任者講習を受講していることなどが求められます。
講習は、申請の受理の日前3年以内の受講に限るとされています。会社設立の準備と並行して受けておくとよいでしょう。
有料職業紹介事業にも、事業所に関する要件と職業紹介責任者に関する要件があります。ただし内容は異なります。
人材派遣の会社設立では、事業所の確保を早めに済ませてください。許可の審査では事業所の実地の確認も行われます。
自宅を事業所にすることを考えている場合は、面積の要件と、事業所として適切かどうかの両方を確認してください。判断は所管の都道府県労働局が行います。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
どちらを選ぶかの考え方

どちらを選ぶか。判断の軸を整理します。

一つ目がいちばん大きな分かれ目です。人を雇うということは、賃金を払い、社会保険に加入させ、雇用の責任を負うということです。
二つ目の資産要件も大きな壁です。基準資産額2,000万円という水準は、会社設立の資本金としては小さくありません。
三つ目の立替の資金は、見落とされがちです。要件を満たす額を用意しても、それは動かせないお金ではありません。事業で使えば減ります。
人材派遣の会社設立を選ぶなら、これらをすべて引き受けることになります。そのかわり、継続的な収入が積み上がる構造になります。
人材紹介を選ぶなら、雇用の責任はありません。そのかわり、成約するまで収入がありません。
六つ目の社会保険の事務も見落とせません。派遣スタッフの加入手続き、毎月の保険料の計算と納付、算定基礎届。人材派遣の会社設立では、これらを誰が担うのかを決めてください。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
紹介予定派遣という形もあります

紹介予定派遣という形もあります。
これは、労働者派遣のうち、派遣先に職業紹介をすることを予定して行うものです。一定期間派遣として就業し、その後に直接雇用に移ることを予定しています。
この形をとるには、労働者派遣事業の許可と、有料職業紹介事業の許可の両方が必要です。
そして、労働者派遣法施行令第2条は、適用除外業務のうち医療関係の業務について、紹介予定派遣をする場合を除くとしています。紹介予定派遣であれば認められる場面があるということです。
ただし、これは限られた例外です。紹介予定派遣にすればどんな業務でもよいということではありません。
人材派遣の会社設立で紹介予定派遣を計画している場合、二つの許可が必要になる点を織り込んでください。手数料も、要件も、二つ分です。
そして、事業所も責任者も、それぞれの要件を満たすことになります。会社設立の段階での準備は、その分だけ重くなります。
出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の準備は、選んでから

どちらを選ぶかが決まれば、会社設立の準備の中身も決まります。
定款の事業目的には、行う事業を記載します。労働者派遣事業を行うなら、その旨の記載が必要です。有料職業紹介事業も同じです。
書き漏らせば、あとで定款変更の手続きが必要になります。株式会社であれば株主総会の特別決議と変更登記が要ります。登録免許税もかかります。
資本金の額も変わります。労働者派遣事業を目指すなら、基準資産額2,000万円という水準から逆算することになります。
事業年度の決め方も関わります。労働者派遣事業では、決算のあとに事業報告書の提出と情報提供の更新が来るからです。
人材派遣の会社設立では、これらを一度に決めてください。あとから直すほうが、手間も費用もかかります。
そして、決めた内容は事業計画書にも反映されます。許可申請では、事業所ごとの派遣労働者の数や派遣料金の額などを記載することになります。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|人材紹介と人材派遣の違い

人材紹介と人材派遣の違いについて、まとめます。
- 雇用関係の位置が違う。 人材派遣は派遣元が雇用し、人材紹介はあっせんをします。
- 根拠となる法律が違う。 労働者派遣法と職業安定法です。
- 許可が別。 どちらも許可制ですが、片方では他方を行えません。
- 資産要件の水準が違う。 労働者派遣事業は基準資産額2,000万円×事業所数以上などが定められています。
- お金の入り方が違う。 継続収入型と成約型です。
- 事業所と責任者の要件も別。 それぞれに定めがあります。
- 紹介予定派遣には両方の許可が要る。
どちらを選ぶかで、会社設立のときに必要な資本金も、定款の事業目的も変わります。先に決めてください。
人材派遣の会社設立を選ぶなら、人を雇う責任と、資産要件と、立替の資金を引き受けることになります。そのかわり、継続的な収入が積み上がります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。許可の可否は行政が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。
出典職業安定法(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
どちらを選ぶかで、会社設立の中身が変わります
人材紹介と人材派遣では、必要な資産の額も、許可の要件も、収益の出方も違います。会社設立の前に決めておいてください。
両方をやるという選択もありますが、その場合はそれぞれの許可が必要です。負担も倍になります。
許可の可否は行政が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行は行いません。
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