許可なしの派遣には罰則があります。人材派遣の会社設立で守る禁止規定
何をしてはいけないのかを知りたい方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、労働者派遣事業で守らなければならない規定を知っておきたい方に向けた記事です。
労働者派遣法には、いくつもの禁止規定と罰則が置かれています。知らなかったでは済みません。
この記事では、会社設立から事業の運営までのあいだに関わる主な禁止規定を、条文にもとづいて整理します。
許可を受けないで行えば、罰則があります

労働者派遣法第5条第1項は、労働者派遣事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならない、と定めています。
そして第59条第2号は、第5条第1項の許可を受けないで労働者派遣事業を行った者を、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。
つまり、許可が下りる前に労働者派遣を行えば、罰則の対象になるということです。
人材派遣の会社設立では、この点を最初に押さえてください。会社設立の登記が終わっても、許可が下りるまでは労働者派遣を行えません。
そして、同じ第59条の第3号は、偽りその他不正の行為により許可又は許可の有効期間の更新を受けた者についても、同じ罰則を定めています。
申請の書類に虚偽の記載をすれば、第61条第1号により30万円以下の罰金の対象にもなります。
そして、労働者派遣事業の許可は事業主単位で受けるものです。会社として一つの許可を受け、その許可のなかに事業所が位置づけられます。
人材派遣の会社設立では、この単位も理解しておいてください。事業所ごとに許可を取るのではありません。ただし、資産要件は事業所の数を乗じた額で見られます。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
許可までのあいだ、できること・できないこと

会社設立の登記が終わってから許可が下りるまで、何ができるのかを整理します。

できることの側を見ていただくと、準備はかなり進められることが分かります。
ただし、派遣先候補との関係で、契約を先に結んでよいかどうかは慎重に判断してください。許可を受ける前に労働者派遣契約を締結することの是非については、所管の都道府県労働局に確認するのが確実です。
人材派遣の会社設立では、この期間を準備の期間として使ってください。何もできない期間ではありません。
そして、許可申請の時期の目安は、事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までとされています。この期間を見込んで会社設立の日程を組んでください。
なお、許可の審査では事業所の実地の確認も行われます。事業所を確保しておかなければ、審査が進みません。人材派遣の会社設立では、事業所の確保を早めに済ませてください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
期間制限という規定があります

労働者派遣法第35条の3は、次のように定めています。
派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行つてはならない。
— 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第35条の3
これが、いわゆる個人単位の期間制限です。同じ組織単位の業務に、同じ派遣スタッフを3年を超えて派遣できないということです。
ただし、条文には括弧書きがあり、第40条の2第1項各号のいずれかに該当するものは除かれます。無期雇用の派遣労働者に係る労働者派遣などです。
そして、派遣先の側にも事業所単位の期間制限があります。こちらは第40条の2に定めがあります。
人材派遣の会社設立で長期の派遣を計画している場合、この期間制限を織り込んでください。3年で交代が必要になる場面が出てきます。
なお、第61条第3号は、第35条の3の規定に違反した者を30万円以下の罰金に処すると定めています。
期間制限は、派遣スタッフの側から見れば、同じ職場で働き続けられる期間の上限です。派遣先から見れば、慣れた方に続けてもらえない事情になります。どちらの立場からも、事前に説明しておく必要があります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
離職後1年以内の受入れは禁止されています

労働者派遣法第40条の9第1項は、派遣先が、その派遣先を離職した者について、離職の日から起算して1年を経過する日までの間、労働者派遣の役務の提供を受けてはならないと定めています。
これは派遣先の側の禁止規定ですが、派遣元にも関わります。
同条第2項は、派遣先が法第35条第1項の規定による通知を受けた場合において、この規定に抵触することとなるときは、速やかにその旨を派遣元事業主に通知しなければならないと定めています。
つまり、派遣元は派遣スタッフの情報を派遣先に通知し、派遣先は抵触する場合に知らせるという流れです。
人材派遣の会社設立では、この確認の仕組みを作っておいてください。登録の段階で、直近の勤務先を確認しておくということです。
なお、雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者は除かれます。
なお、法第35条第1項は、派遣元事業主が労働者派遣をするときに、派遣先に対して当該労働者派遣に係る派遣労働者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を通知しなければならないと定めています。第61条第4号は、この通知をせず、又は虚偽の通知をした者を30万円以下の罰金に処するとしています。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
専ら派遣という規定もあります

労働者派遣法第48条第2項は、労働者派遣事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われている場合において必要があると認めるときは、厚生労働大臣が当該派遣元事業主に対し、当該労働者派遣事業の目的及び内容を変更するように勧告することができると定めています。
いわゆる専ら派遣です。特定の会社にだけ人を送る形の事業が対象になります。
親会社やグループ会社にだけ人を派遣するという形を考えている場合、この規定に関わります。
そして、許可の基準にも関連する定めがあります。労働者派遣法第7条第1項第1号は、専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないことを、許可の基準として掲げています。
人材派遣の会社設立でグループ内への派遣を計画している場合、この点を所管の都道府県労働局に確認してください。
計画の段階で確認しておけば、申請してから指摘されるより早く済みます。
なお、第7条第1項第1号には厚生労働省令で定める場合を除くという括弧書きがあります。例外の定めがあるということです。当てはまるかどうかは、条文と厚生労働省の資料で確認してください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
行政の処分は、段階を踏みます

違反があった場合、行政はどう動くのか。条文から整理します。

いちばん下の許可の取消しに至れば、労働者派遣事業を続けることはできません。
法第14条第1項は、この法律若しくは職業安定法の規定又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したときなどに、許可を取り消すことができると定めています。
そして第60条第1号は、第49条の規定による処分に違反した者を6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。
人材派遣の会社設立では、この段階を理解しておいてください。最初の指導の段階で直せば、そこで終わります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
重い罰則が定められている行為もあります

労働者派遣法第58条は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者を、1年以上10年以下の拘禁刑又は20万円以上300万円以下の罰金に処すると定めています。
これは、労働者派遣法の罰則のなかでもっとも重いものです。
普通に事業を営んでいれば関わらない規定ですが、労働者派遣という事業がどういう規制のなかにあるのかを示しています。
人を雇い、他社の指揮命令の下で働かせるという事業だからこそ、これだけの規制が置かれているということです。
人材派遣の会社設立を考えるとき、この規制の重さを理解しておいてください。許可制であることも、資産要件があることも、同じ考え方から来ています。
そして、この理解があれば、規制を回避する方向で考えることの危うさも分かります。
そして、労働者派遣法第6条には欠格事由の定めがあります。許可を取り消された者や、その法人の役員であった者は、一定の期間、新たに許可を受けることができません。
会社設立の段階で資本金を厚くしておくことも、この重さに対する備えの一つです。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
会社設立の段階で作る、守るための仕組み

禁止規定を守るために、会社設立の段階で作っておく仕組みを整理します。
- 登録時の確認。 直近1年以内の勤務先、年齢、学生かどうか、収入の状況など。
- 契約期間の管理。 雇用契約が31日以上か。同一の組織単位への派遣が3年を超えないか。
- 派遣元管理台帳。 法第37条に定めがあります。第61条第3号により、違反すれば罰則の対象です。
- 就業条件の明示。 法第34条に定めがあります。こちらも第61条第3号の対象です。
- 派遣元責任者の選任。 法第36条に定めがあります。同じく第61条第3号の対象です。
- 教育訓練の記録。 許可の基準に関わり、更新のときに見られます。
- 情報提供の更新。 マージン率などを事業年度ごとに公開します。
これらはいずれも、会社設立の準備の段階で様式を作っておけるものです。
そして、様式を作っておけば、事業が始まってからの運用が楽になります。あとから作ろうとすると、初期の記録が抜けます。
人材派遣の会社設立では、この準備を登記と並行して進めてください。許可申請までの期間を短くする方法でもあります。
そして、これらの仕組みは許可の更新のときにも効いてきます。更新の審査では、その期間の運営状況が見られるからです。日々の記録が、そのまま更新の準備になります。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|守るべき禁止規定

人材派遣の会社設立で守る禁止規定について、まとめます。
- 許可を受けないで労働者派遣事業を行えば、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。 法第59条第2号の定めです。
- 許可が下りるまで、労働者派遣は行えない。 その間も固定費は出ていきます。
- 期間制限がある。 同じ組織単位の業務に、同じ方を3年を超えて派遣できません。
- 離職後1年以内の受入れは禁止。 登録の段階で確認する仕組みが要ります。
- 専ら派遣は規制の対象。 許可の基準にも関わります。
- 行政の対応は段階を踏む。 指導、勧告、改善命令、事業停止命令、許可の取消し。
- 法人にも罰金刑が科される。 法第62条の定めです。
禁止規定は、避けて通る対象ではありません。守ることを前提に事業を設計してください。
そして、守るための仕組みは会社設立の段階で作れます。様式を先に用意し、記録を残す。それが最も確実な守り方です。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、e-Gov法令検索の条文により確認したものです。法令は改正されます。個別の事案の判断は所管の都道府県労働局が行います。就業規則や労働契約の設計は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
守ることを前提に、事業を設計してください
禁止規定は、避けて通る対象ではありません。守ることを前提に事業を設計してください。
人材派遣の会社設立では、規定を知った上で、そのなかで成り立つ形を探すことになります。守れない計画は、そもそも事業計画ではありません。
個別の事案の判断は所管の都道府県労働局が行います。就業規則や労働契約の設計は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行は行いません。
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