許可が下りないのはどんなときか。人材派遣の会社設立で確かめる欠格事由
許可が下りるか不安な方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、許可が下りるかどうか不安を感じている方に向けた記事です。
労働者派遣法には、許可の欠格事由と許可の基準が定められています。どちらかに引っかかれば、許可を受けられません。
資産要件は数字なので分かりやすいのですが、それ以外にも確かめることがあります。会社設立の前に整理してください。
許可には、二つの関門があります

労働者派遣事業の許可には、二つの関門があります。
一つは欠格事由です。労働者派遣法第6条は、各号のいずれかに該当する者は許可を受けることができないと定めています。
もう一つは許可の基準です。同法第7条第1項は、厚生労働大臣は申請が各号の基準に適合していると認めるときでなければ許可をしてはならないと定めています。
欠格事由は、該当すればそれだけで許可を受けられないというものです。
許可の基準は、満たしていることが確認できなければ許可されないというものです。
人材派遣の会社設立では、この二つを別に確かめてください。資産要件は許可の基準の一部であり、それだけを満たしても足りません。
そして、同法第7条第2項は、許可をしないときは遅滞なく理由を示して申請者に通知しなければならないと定めています。理由は示されるということです。
そして、許可を受けないで労働者派遣事業を行えば、法第59条第2号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります。許可が下りるまで待つしかありません。
人材派遣の会社設立では、この期間の資金も見込んでおいてください。売上がないまま固定費が出ていく期間です。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
欠格事由には何があるか

労働者派遣法第6条が定める欠格事由を、要点だけ整理します。

いちばん下に注目してください。法人であって、その役員のうちに各号のいずれかに該当する者があるものは、欠格事由に当たります。
つまり、役員を一人でも誤れば、会社として許可を受けられないということです。
人材派遣の会社設立で役員を選ぶとき、この点を確かめてください。名前だけ貸してもらうという発想は危険です。
そして、二つ目の労働・社会保険関係の法律の違反も見落とせません。過去に社会保険の手続きで問題があった方が役員に入る場合、確認が必要です。
四つ目の破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者という定めも、確認しておいてください。過去に破産の経歴がある方が役員に入る場合、復権を得ているかどうかが問題になります。
人材派遣の会社設立では、役員に就任していただく方に、これらの点を事前に確認しておく必要があります。聞きにくい話ですが、あとで分かるより先に分かるほうがよいのです。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
廃止の届出にも定めがあります

欠格事由のなかに、事業の廃止に関する定めがあります。
法第6条第7号は、許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から、処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に、法第13条第1項の規定による労働者派遣事業の廃止の届出をした者について定めています。
当該事業の廃止について相当の理由がある者を除き、届出の日から起算して5年を経過しないものは欠格事由に当たるとされています。
そして第8号は、その期間内に廃止の届出をした者が法人である場合について、通知の日前60日以内に当該法人の役員であった者を対象としています。
つまり、取消しの処分を避けるために廃業しても、5年間は新たに許可を受けられないということです。
人材派遣の会社設立を考えている方には遠い話に思えるかもしれません。しかし、事業を始めるということは、こうした規定のなかに入るということです。
そして、法第13条第2項は、廃止の届出があったときは第5条第1項の許可がその効力を失うと定めています。
人材派遣の会社設立を進める方にとって、この規定が意味するのは、労働者派遣事業が退出のしかたまで規制されている事業だということです。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
許可の基準は四つあります

欠格事由に当たらないとして、次は許可の基準です。
労働者派遣法第7条第1項は、次の基準を掲げています。
- 専ら派遣でないこと。 当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと。ただし、厚生労働省令で定める場合を除きます。
- 雇用管理を適正に行うに足りる能力。 申請者が、当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合すること。
- 個人情報の適正な管理。 個人情報を適正に管理し、及び派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。
- 事業を的確に遂行するに足りる能力。 申請者が、当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有すること。
二つ目と四つ目が、実務でよく問題になるところです。
厚生労働省の資料は、この基準を具体化したものとして、資産要件、事業所の要件、派遣元責任者の要件、キャリア形成支援制度の要件などを示しています。
つまり、資産要件は四つ目の基準を具体化したものだということです。
人材派遣の会社設立では、資産要件だけでなく、この四つの基準に沿って準備を整えてください。
一つ目の専ら派遣の基準も、グループ会社への派遣を計画している場合には確認が必要です。判断は所管の都道府県労働局が行います。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
よくつまずくところ

実務でつまずきやすい点を並べます。
- 資産要件を満たしていない。 基準資産額が2,000万円に事業所数を乗じた額以上、現金・預金が1,500万円に事業所数を乗じた額以上、基準資産額が負債の総額の7分の1以上。三つを同時に満たす必要があります。
- 会社設立の費用で資産が減っている。 資本金2,000万円ちょうどでは、設立費用や事業所の初期費用で要件を割ります。
- 定款の事業目的に記載がない。 労働者派遣事業を行う旨の記載が求められます。
- 事業所の面積が足りない。 労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あることが求められます。
- 事業所の位置が適切でない。 風俗営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないことも求められます。
- 派遣元責任者の要件を満たしていない。 成年に達した後3年以上の雇用管理の経験、講習の受講など。
- 講習の受講日が古い。 申請の受理の日前3年以内の受講に限るとされています。
- 教育訓練の実施計画がない。 キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な計画が求められます。
一つ目と二つ目は、数字の問題です。会社設立の段階で資本金を厚くしておけば避けられます。
三つ目は、定款の作り方の問題です。会社設立のときに書いておけば済みます。
四つ目以降は、準備の問題です。時間をかければ整えられます。
人材派遣の会社設立では、これらを一覧にして確認してください。申請してから指摘されるより、先に確かめるほうが早く済みます。
そして、自宅を事業所にする場合は、面積の要件と位置の要件の両方を確認してください。生活の場と事業の場が分かれているかという点も見られ得ます。
人材派遣の会社設立では、事業所の候補を早めに決めて、労働局に相談しておくのが確実です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
不許可になった場合

許可されなかった場合、どうなるか。
労働者派遣法第7条第2項は、厚生労働大臣は許可をしないときは、遅滞なく、理由を示してその旨を当該申請者に通知しなければならないと定めています。
理由が示されるので、何が足りなかったのかは分かります。
ただし、それまでにかけた費用と時間は戻りません。
会社設立の法定費用、許可申請の収入印紙と登録免許税、事業所の初期費用、準備期間の固定費。これらはすでに出ています。
そして、事業を始められないまま、法人住民税の均等割はかかり続けます。
人材派遣の会社設立では、この結末を避けるために、申請の前に要件を確認してください。所管の都道府県労働局に相談することもできます。
要件が足りないと分かっているなら、整えてから申請するほうが確実です。
そして、不許可になったからといって、二度と申請できないわけではありません。欠格事由に当たらないのであれば、要件を整えて改めて申請することはできます。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
許可を受けたあとにも確認は続きます

許可を受けたあとも、確認は続きます。
労働者派遣法第11条第1項は、第5条第2項各号に掲げる事項に変更があったときは、遅滞なくその旨を厚生労働大臣に届け出なければならないと定めています。
第5条第2項各号には、氏名又は名称及び住所、法人の代表者の氏名、法人の役員の氏名及び住所、事業所の名称及び所在地、派遣元責任者の氏名及び住所が挙げられています。
つまり、役員が代われば届出が必要だということです。そして、新しい役員が欠格事由に当たれば、法人が欠格事由に当たることになります。
事業所を新設する場合は、事業計画書その他の書類を添付することとされています。
そして、許可の更新があります。有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。更新の申請は、有効期間が満了する日の3か月前までに提出する必要があります。
人材派遣の会社設立では、これらを続けられる体制を作ってください。届出を忘れれば、それ自体が問題になります。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
会社設立の前に確かめる手順

会社設立の前に確かめる手順を整理します。

一つ目を最初に置いているのは、ここに当たれば他のすべてが無駄になるからです。
そして、六つ目の労働局への相談を、定款と資本金を決める前に入れてください。不明な点を先に解消しておけば、やり直しが減ります。
人材派遣の会社設立では、この順序で進めてください。会社を作ってから確認するのでは、順序が逆です。
そして、判断がつかない点があれば、社会保険労務士に相談するという方法もあります。申請書類の準備を依頼することもできます。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|許可が下りない場合

許可が下りない場合について、まとめます。
- 二つの関門がある。 欠格事由と許可の基準です。
- 欠格事由は該当すればそれだけで不許可。 法第6条に定めがあります。
- 法人は役員一人の該当でも対象になる。 役員の範囲は広く定められています。
- 取消しを避けるための廃業も定めの対象。 5年を経過しないものは欠格事由に当たります。
- 許可の基準は四つ。 専ら派遣でないこと、雇用管理の能力、個人情報の管理、事業の遂行能力。
- 資産要件は基準の一部。 それだけを満たしても足りません。
- 不許可でも費やしたものは戻らない。 先に確かめてください。
人材派遣の会社設立では、役員の確認を最初に行ってください。ここに当たれば、他のすべてが無駄になります。
そして、心当たりがあるなら、会社設立の前に所管の都道府県労働局に相談してください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の公表資料により確認したものです。法令は改正されます。許可の可否は所管の都道府県労働局が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
該当しそうなら、事前に相談してください
欠格事由に当たるかどうかは、条文を読んだだけでは判断がつかないことがあります。心当たりがあるなら、会社設立の前に所管の都道府県労働局に相談してください。
会社を作ってから、資本金を積んでから、申請してから分かるのでは、費やしたものが戻りません。
許可の可否は所管の都道府県労働局が判断します。申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行は行いません。
この記事のタグ
この記事は判断の材料になりましたか?