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人材派遣 会社設立 費用

人材派遣の会社設立の費用を、登記・許可・開業準備の三つに分けて積み上げる

費用の全体像をつかみたい方へ

人材派遣の会社設立にいくらかかるのかを、まとめて知りたい方に向けた記事です。

ひとつ先に申し上げておくと、基準資産額2,000万円は「費用」ではありません。会社に置いておくお金であって、出ていくお金ではないからです。この記事では、実際に出ていく費用のほうを積み上げます。

金額はすべて前提条件つきで書きます。会社形態・資本金・事業所数が変われば結果も変わります。

費用は三つに分かれます。そして資産要件は費用ではありません

費用を三つに分けるイラスト
資産要件は費用ではありません。ただし用意は必要です。

人材派遣の会社設立にかかるお金は、性質の違う三つに分かれます。ここを混ぜて考えると、必要な金額が分からなくなります。

  • 会社設立の登記にかかる費用定款の認証手数料と登録免許税。株式会社と合同会社で金額が違います。
  • 労働者派遣事業の許可申請にかかる費用収入印紙と登録免許税。会社設立の登記とは別に、もう一度かかります。
  • 開業準備にかかる費用事業所の初期費用、備品、講習の受講料、採用の費用。金額の幅がいちばん大きい部分です。

これに対して、基準資産額2,000万円・自己名義の現金預金1,500万円という資産要件は、費用ではありません。会社に置いておくお金であって、支払って消えるお金ではないからです。

ただし、置いておくお金がなければ許可は下りません。人材派遣の会社設立で必要な資金は、「出ていく費用」と「置いておく資産」の合計になります。この二つを足したものが、用意すべき金額です。

出ていく費用と置いておく資産を比べた図

出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

一つ目|会社設立の登記にかかる費用

会社設立の登記費用のイラスト
株式会社と合同会社の差は、およそ14万円です。

会社設立の登記にかかる法定費用は、会社形態によって違います。株式会社と合同会社を並べます。

会社設立の登記にかかる法定費用(2026年8月27日時点)
項目 株式会社 合同会社
定款の認証手数料 資本金100万円未満3万円/100万円以上300万円未満4万円/その他5万円 不要
定款の収入印紙 4万円(電子定款なら不要) 4万円(電子定款なら不要)
設立登記の登録免許税 資本金の額の1000分の7。15万円に満たないときは15万円 資本金の額の1000分の7。6万円に満たないときは6万円
登記事項証明書・印鑑証明書 必要通数により数千円 同じ

定款の認証手数料は令和6年12月1日から、発起人が全員自然人で3人以下、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があり、取締役会を置く旨の記載がない資本金100万円未満の会社について1万5,000円になっています。

人材派遣の場合、資産要件との関係で資本金が2,000万円前後になることが多くなります。この場合、登録免許税は1000分の7で14万円となり、株式会社は最低額の15万円、合同会社は最低額の6万円が適用されます。

資本金が大きくなると登録免許税も増えます。株式会社で登録免許税が15万円を超えるのは、資本金がおよそ2,143万円を超えたときです。合同会社では、およそ858万円を超えたときに6万円を超えます。

株式会社と合同会社の設立登記費用を比べた棒グラフ

差額はおよそ14万円です。人材派遣の会社設立では、この差をどう見るかが会社形態を選ぶ判断材料のひとつになります。ただし、労働者派遣事業の許可の資産要件はどちらを選んでも同じ金額です。

出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)

二つ目|許可申請にかかる費用

許可申請の収入印紙と登録免許税のイラスト
登録免許税は、登記で一回、許可でもう一回かかります。

労働者派遣事業の許可申請には、会社設立の登記とは別に費用がかかります。ここが人材派遣に固有の部分です。

労働者派遣事業の許可申請にかかる法定費用(2026年8月27日時点)
項目 金額 根拠
許可手数料(収入印紙) 12万円+5万5千円×(事業所数−1) 労働者派遣法第54条、施行令第9条
登録免許税 許可1件あたり9万円 登録免許税法第21条
合計(事業所1か所) 21万円
合計(事業所2か所) 26万5千円
合計(事業所3か所) 32万円

収入印紙の消印後は、手数料は返却されません。登録免許税は日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行等や郵便局)などに納付し、領収書を許可申請書に貼付します。

ここで注意していただきたいのが、登録免許税という同じ名前の税金が二回出てくることです。会社設立の登記にかかる登録免許税と、労働者派遣事業の許可にかかる登録免許税9万円は別のものです。

事業所を増やすと収入印紙が5万5千円ずつ増えますが、登録免許税は許可1件あたりなので増えません。許可は事業主単位(会社単位)で受けるものだからです。

更新のときにも費用がかかります許可の有効期間は初めての許可が3年、一度更新を受けた場合は5年です。更新の申請にも手数料がかかります。会社設立の資金計画では、この更新の費用も見込んでおいてください。金額は所管の都道府県労働局にご確認ください。

なお、有料職業紹介事業(人材紹介)もあわせて行う場合は、そちらの許可申請の費用が別にかかります。人材派遣と人材紹介は別の制度で、許可も別だからです。

出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

三つ目|開業準備にかかる費用

開業準備の費用を表したイラスト
事業所の要件に関わる部分は、削れません。

三つ目が開業準備の費用です。ここは会社によって金額の幅が最も大きくなります。事業所の場所や規模、採用の方法によって、何倍も違ってくるからです。

人材派遣に固有の項目としては、事業所の要件を満たすための費用があります。事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あり、派遣スタッフと面談できる、個人的な秘密を保持できる場所が要ります。

  • 事業所の敷金・礼金・仲介手数料・前家賃
  • 面談スペースをつくるためのパーテーションなど
  • 鍵のかかるキャビネット(個人情報を管理するため)
  • 机・椅子・パソコン・電話・複合機
  • 派遣元責任者講習の受講料
  • 会社の実印・銀行印・角印の作成
  • ホームページの制作(マージン率などの情報提供にも使います)
  • 派遣スタッフの採用にかかる求人広告費
  • 専門家に依頼する場合の報酬

このうち、鍵のかかるキャビネットとホームページは、人材派遣ならではの項目です。前者は個人情報適正管理規程で求められる措置に関わり、後者はマージン率などの情報提供義務に関わります。

情報提供はインターネットが原則です派遣元事業主には、事業所ごとの派遣労働者の数、派遣先の数、派遣料金の平均額、派遣労働者の賃金の平均額、マージン率、労使協定を締結しているか否かの別、キャリア形成支援制度に関する事項などの情報提供が求められます。会社設立の段階で、これを掲載する場所を用意しておく必要があります。

開業準備の費用は削れる部分もありますが、事業所の要件に関わる部分は削れません。実地確認で見られるからです。ここは必要な支出として見込んでおいてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

見落とされやすい四つ目|営業できない期間の固定費

営業できない期間の固定費を表したイラスト
登記費用より、この期間の固定費のほうが大きくなります。

三つに分けると言いましたが、実務でいちばん効いてくるのは四つ目かもしれません。営業できない期間の固定費です。

人材派遣は、労働者派遣事業の許可が下りるまで営業ができません。厚生労働省は、許可申請を事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行う必要があるとしています。会社設立の準備期間も含めれば、営業開始まで3〜4か月かかります。

そして許可が下りて営業を始めても、派遣先との契約、派遣スタッフの就業、月末の締め、請求、入金という順を踏むため、最初の入金までさらに1〜2か月かかります。

営業できない期間の固定費の内訳を示した積み上げ棒グラフ

上の例で、無収入期間を5か月と見れば、小さく始める場合で225万円、人を雇う場合で500万円になります。これは会社設立の登記費用や許可申請の費用より、はるかに大きい金額です。

人材派遣の会社設立で「費用がかかる」と言われるとき、実際に重いのはこの部分です。そして、この期間を短くするいちばんの方法は、要件を先に確かめておいて書類の往復を減らすことです。

出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

毎年かかる費用も見ておく

毎年かかる費用を表したイラスト
教育訓練の人件費は、人材派遣に固有の維持費です。

会社設立のときの費用だけでなく、毎年かかる費用も見ておきます。人材派遣では、許可の維持に関わる費用が加わります。

法人住民税の均等割
赤字でもかかります。標準税率で、資本金等の額が1千万円以下・従業者数50人以下なら年7万円。資本金を2,000万円にすればこれより高い区分になります。金額は自治体によって異なります
決算・申告の費用
税理士に依頼する場合の報酬。依頼する範囲によって変わります
社会保険の事務
派遣スタッフの資格取得・喪失の手続き。人数が増えるほど事務量が増えます
教育訓練の費用
フルタイム1年以上の見込みの派遣労働者一人当たり、最初の3年間は毎年概ね8時間以上。有給かつ無償で行います
情報提供の維持
マージン率などをインターネットなどで提供します。事業年度ごとに更新が必要です
許可の更新費用
3年後(以後5年ごと)。手数料がかかります

このうち、教育訓練の費用は人材派遣に固有のものです。教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことが原則とされているため、その時間の人件費がそのままかかります。

また、教育訓練等の情報を管理した資料を、労働契約終了後3年間保存する必要もあります。記録の管理そのものにも手間がかかります。

均等割は資本金等の額で変わります会社設立の資本金を許可の資産要件に合わせて2,000万円にすると、法人住民税の均等割は資本金等の額1千万円以下の区分より高くなります。赤字でもかかる費用なので、事業計画に入れておいてください。具体的な金額は、所在地の自治体の案内でご確認ください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月27日確認)

費用を抑えられるところと、抑えられないところ

費用を抑えられる部分を整理したイラスト
上から順に検討します。下から削ると高くつきます。

最後に、費用を抑えられる部分とそうでない部分を分けておきます。

費用を抑えられる部分と、抑えられない部分
項目 抑えられるか 理由
定款の認証手数料 会社形態の選択で 合同会社なら不要です。ただし対外的な見え方は変わります
定款の収入印紙4万円 電子定款で 自分で作るには準備が要ります。専門家に依頼すれば対応していることが多くなります
設立登記の登録免許税 抑えにくい 最低額が決まっています。資本金を下げても最低額は変わりません
許可の収入印紙・登録免許税 抑えられません 法定の金額です。事業所を1か所にすれば収入印紙は最小になります
事業所の初期費用 物件の選択で ただし面積・独立性・面談スペースの要件は満たす必要があります
専門家への報酬 依頼範囲の選択で 自分でやる部分を増やせば減ります。ただし時間がかかります
営業できない期間の固定費 準備の早さで 要件を先に確かめておけば、往復が減って期間が縮みます
基準資産額・現金預金 抑えられません 許可の要件です。満たさなければ申請は通りません

どこを削るかは事業計画によります。要件に関わる部分を削ると、許可が下りず結果として高くつきます。

表のいちばん下を見てください。基準資産額と現金・預金は抑えられません。ここを削ろうとすると、そもそも許可の要件を満たしません。

人材派遣の会社設立で費用を抑えたいときは、上のほうから順に検討してください。下のほうを削ろうとすると、申請が通らず、結果として無収入期間が延びて高くつくことになります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

まとめ|人材派遣の会社設立にかかるお金

人材派遣の会社設立にかかるお金をまとめた表のイラスト
法定費用は41万円。実務で重いのは、その外側です。

人材派遣の会社設立にかかるお金を、まとめます。

人材派遣の会社設立にかかるお金の一覧(2026年8月27日時点)
区分 項目 金額の目安(事業所1か所・株式会社・資本金2,000万円)
登記 定款の認証手数料 5万円
登記 設立登記の登録免許税 15万円
許可 許可手数料(収入印紙) 12万円
許可 登録免許税 9万円
準備 事業所の初期費用など 物件と規模により大きく変わります
無収入期間 家賃・役員報酬・通信費 3〜5か月分
資産要件 基準資産額 2,000万円以上(置いておくお金)
資産要件 自己名義の現金・預金 1,500万円以上(置いておくお金)
毎年 法人住民税の均等割ほか 赤字でもかかります。自治体により異なります

前提:株式会社/資本金2,000万円/事業所1か所/電子定款。会社形態・資本金・事業所数・派遣スタッフの人数・決算期が変われば結果も変わります。

法定費用だけを見れば41万円です。ところが実務で重いのは、無収入期間の固定費と、置いておく資産のほうです。この二つを見落とすと、許可は取れたのに事業が回らないという状態になります。

この記事の金額は2026年8月27日時点で、厚生労働省・法務局・日本公証人連合会・国税庁・総務省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、費用の税務上の扱いは税理士へご確認ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

費用の見積もりは、時間の見積もりでもあります

人材派遣の会社設立で見落とされやすいのが、営業できない期間の固定費です。許可が下りるまで売上が立たないので、家賃と役員報酬がそのまま費用になります。

この期間を短くするいちばんの方法は、要件を先に確かめておくことです。書類の往復が減れば、その分だけ無収入期間が縮みます。

金額の根拠は2026年8月27日時点で確認したものです。制度は改正されます。許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、費用の税務上の扱いは税理士へご確認ください。

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