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会社設立 人材派遣

会社設立と許可、どちらが先か。人材派遣を始める順番を間違えないための整理

はじめに|この記事が答えようとしていること

「人材派遣をやるなら、会社設立と許可申請はどちらが先ですか」という問いに、まっすぐ答えるための記事です。

答えそのものは短くて、登記が先、許可が後です。ただしこれだけでは足りません。登記より前に決めておかないと取り返しがつかないことが、いくつもあるからです。

この記事では、順番そのものと、順番より前に決めておくべきことを、分けて並べます。すでに法人をお持ちで人材派遣に参入したい方にも読んでいただけるよう、事業目的の追加についても触れます。

結論から。登記が先で、許可申請は後です

登記から許可申請へ進む順番を示したイラスト
許可申請の添付書類が、登記の完了を前提にしています。

人材派遣を始めるときの順番は決まっています。まず会社設立の登記を済ませ、そのあとで労働者派遣事業の許可を申請します。逆にはできません。

理由は単純で、許可申請の添付書類に定款と登記事項証明書が含まれているからです。登記が終わっていなければ登記事項証明書は取れませんし、法人としての貸借対照表も出せません。

厚生労働省の資料は、法人が許可申請をする場合の添付書類として次のものを挙げています。

  • 定款又は寄附行為
  • 登記事項証明書
  • 役員の住民票の写しおよび履歴書
  • 最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
  • 最近の事業年度における法人税の確定申告書の写しと納税証明書
  • 事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書または賃貸借契約書の写し)
  • 就業規則または労働契約の該当箇所の写し
  • 個人情報適正管理規程
  • 派遣元責任者の住民票の写し・履歴書・派遣元責任者講習受講証明書の写し

上から二つが、登記の完了を前提としています。人材派遣の会社設立で「まず許可を取ってから法人をつくる」という進め方ができないのは、このためです。

設立初年度の決算書がない場合会社設立の直後は、まだ決算を迎えていないことがあります。この場合は設立時の貸借対照表で判断されます。資本金の額がそのまま基準資産額に近い形で見られるため、資本金の決め方がいっそう重要になります。詳しい取り扱いは所管の都道府県労働局にご確認ください。

出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

ただし、決めるのは登記よりずっと前です

登記より前に決めておく項目を並べたイラスト
登記は途中の工程であって、出発点ではありません。

順番は登記が先です。しかし「登記の日から考えはじめればよい」わけではありません。登記の内容に入ってしまうもの、登記の前に動き出さないと間に合わないものがあります。

  • 定款の事業目的登記されると公示されます。あとから変えるには株主総会の特別決議と変更登記が必要で、登録免許税もかかります。
  • 資本金の額そのまま基準資産額の判定に効きます。増資には手続きと登録免許税がかかります。
  • 事業所おおむね20平方メートル以上。賃貸借契約を結ぶ前に、面積と用途を確かめておきます。
  • 派遣元責任者講習は申請の受理の日前3年以内に受けている必要があります。日程が埋まることもあります。
  • 就業規則許可申請では特定の条項の写しを求められます。会社設立とあわせて整えます。

このうち、会社設立の登記に直接入るのは事業目的と資本金の二つです。残りは登記そのものには入りませんが、許可申請の準備として並行して進める必要があります。

登記より前に決めておくべき項目の流れを示した図

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

定款の事業目的は「労働者派遣事業」と書く

定款の事業目的の文言を確かめるイラスト
定款の認証が通ることと、許可が下りることは別の話です。

会社設立の定款には事業目的を書きます。人材派遣をやるつもりであれば、ここに労働者派遣事業を行う旨が読み取れる形で書いておく必要があります。

よくある落とし穴が、「人材派遣業」とだけ書いてしまうことです。この書き方でも定款の認証は通りますし、登記もできます。ところが労働者派遣事業の許可申請の段階で、事業目的から労働者派遣事業を行うことが読み取れないと指摘されることがあります。

定款の事業目的の書き方と、許可申請での扱い
書き方の例 定款認証・登記 許可申請での扱い
労働者派遣事業 通ります そのまま読み取れます
人材派遣業 通ります 労働者派遣事業と読めるかを確認されることがあります
有料職業紹介事業 通ります 別の許可です。派遣もやるなら別に書きます
業務請負業 通ります 派遣とは別の事業です。併記する場合は実態の区分に注意

実際にどう書くかは、登記を依頼する司法書士と、所管の都道府県労働局にご確認ください。

人材紹介(有料職業紹介事業)もあわせて行うつもりなら、そちらも事業目的に書いておきます。派遣と紹介は別の制度で、許可も別です。会社設立のときに両方書いておけば、あとから事業目的を追加する手間が省けます。

すでに法人をお持ちの方へ別の事業をしていて人材派遣に参入する場合は、事業目的の追加が必要になることがあります。株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)を経て、変更登記を行います。この変更登記が終わってから許可申請、という順番は新設の場合と同じです。

出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)

資本金は、許可の資産要件から逆算して決める

資本金を資産要件から逆算するイラスト
事業計画より先に、資産要件という外側の条件が来ます。

会社設立で資本金をいくらにするかは、本来なら事業計画から決めるものです。ところが人材派遣の場合は、許可の資産要件という外側の条件が先に来ます。

許可の財産的基礎は三つあり、事業所1か所であれば、基準資産額2,000万円以上、基準資産額が負債総額の7分の1以上、自己名義の現金・預金1,500万円以上です。

ここで効いてくるのが、基準資産額が「資産の総額から負債の総額を控除した額」だという点です。会社設立のときに借入で資金を用意しても、資産と負債が同時に増えるだけで、基準資産額は増えません。

資金の入れ方と資産要件の満たしやすさを整理した4象限の図

では資本金を2,000万円ちょうどにすればよいかというと、そうとも限りません。設立費用や事業所の初期費用を資本金から出せば、その分だけ現金・預金は減ります。会社設立の初年度に開業費を繰延資産として計上すれば、基準資産額の計算からは除かれます。

余裕を持たせる理由2,000万円ちょうどで会社設立をすると、設立費用を払った時点で基準資産額が2,000万円を割り込むことがあります。どこまで余裕を見るかは事業計画次第ですが、ぎりぎりの設計は勧められません。具体的な金額の設計は税理士に、資産要件の判定は所管の都道府県労働局にご相談ください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

会社形態は株式会社か合同会社か。許可の要件は同じです

株式会社と合同会社を比べるイラスト
許可の資産要件は会社形態で変わりません。変わるのは設立の費用です。

人材派遣の会社設立で株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、よく聞かれる問いです。結論から言えば、労働者派遣事業の許可の資産要件は、どちらを選んでも同じ金額です。基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円という線は会社形態で変わりません。

変わるのは設立の費用と手続き、そして対外的な見え方です。

株式会社と合同会社の違い(2026年8月27日時点)
項目 株式会社 合同会社
定款の認証 公証人の認証が必要 不要
定款認証手数料 資本金100万円未満3万円/100万円以上300万円未満4万円/その他5万円 なし
設立登記の登録免許税 資本金の1000分の7。15万円に満たないときは15万円 資本金の1000分の7。6万円に満たないときは6万円
許可の資産要件 基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円(事業所1か所) 同じ
許可手数料・登録免許税 12万円+9万円(事業所1か所) 同じ

定款認証手数料は令和6年12月1日から、一定の条件を満たす資本金100万円未満の会社について1万5,000円になっています。人材派遣では資本金がこの水準になることは考えにくいため、実際には3万〜5万円と見ておくことになります。

資本金2,000万円で設立する場合、登録免許税は1000分の7で14万円となります。株式会社は最低額の15万円、合同会社も最低額の6万円が適用されるため、差は9万円です。定款認証手数料の5万円を加えると、設立費用の差はおよそ14万円になります。

この差をどう見るかは、事業の性質によります。人材派遣は派遣先企業と継続的に取引をする事業です。取引先の与信や、派遣スタッフの採用のしやすさを考えて株式会社を選ぶ方もいます。一方で、費用を抑えて資本金に回したいという考え方もあります。どちらが正しいということはありません。

出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)

許可申請までに、並行して進めておくこと

登記と並行して書類を準備するイラスト
待ち時間を準備に充てると、全体の期間が縮みます。

登記の申請を出してから登記事項証明書が取れるまでには、通常1〜2週間かかります。この間、手を止める必要はありません。むしろ、時間のかかるものを並行して進めておくと全体が縮みます。

派遣元責任者講習を受ける

派遣元責任者は、厚生労働省告示に定められた講習機関が実施する派遣元責任者講習を、許可の申請の受理の日前3年以内に受講している必要があります。講習は各地で開催されていますが、日程が埋まることもあります。会社設立の準備と並行して申し込んでおくのが安全です。

就業規則の該当箇所を整える

許可申請では、就業規則または労働契約の次のような箇所の写しを求められます。会社設立の直後に慌てて作るより、あらかじめ社会保険労務士に相談しておくほうが確実です。

  • 教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分
  • 無期雇用の派遣労働者を、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類
  • 有期雇用の派遣労働者についても、派遣契約終了時に労働契約が存続している者を、契約終了のみを理由として解雇しないことを証する書類
  • 使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に、労働基準法第26条に基づく手当を支払うことを規定した部分

個人情報適正管理規程とキャリア形成支援の書類

個人情報適正管理規程には、個人情報を取り扱う職員の範囲、職員への教育、開示・訂正の取扱い、苦情処理の体制といった内容を含める必要があります。キャリア形成支援については、教育訓練計画とキャリアコンサルティングの相談窓口の用意が要ります。

登記と並行して進める準備項目のチェックリスト

出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

順番を間違えたときに、何が起きるか

順番を間違えたときの手戻りを表したイラスト
どれも直せますが、費用と時間がかかります。

順番を守る話ばかりしてきましたが、間違えた場合に何が起きるのかも書いておきます。

事業目的に労働者派遣事業が読み取れない
株主総会の特別決議と変更登記が必要です。登録免許税がかかり、許可申請はその分だけ後ろにずれます
資本金が足りない
増資の手続きと変更登記が必要です。募集株式の発行などの手続きに時間がかかります
事業所が20平方メートルに足りない
移転するか、区画を広げることになります。賃貸借契約の見直しが要ります
派遣元責任者の講習が未受講
受講してから申請します。日程が取れないと数週間ずれることがあります
借入で資金を用意していた
基準資産額は増えません。資本組入れなどの検討が要りますが、直前だけ数字を作るような対応は勧められません

いずれも取り返しがつかないわけではありません。ただ、どれも費用と時間がかかります。そして人材派遣は、許可が下りるまで営業ができない事業です。手戻りの分だけ、収入のない期間が延びます。

直前だけ数字を作る対応は勧めません資産要件は直近の決算書で判断されます。基準資産額または現金・預金の額が増加する旨の申し立てをする場合は、公認会計士または監査法人による監査証明を受けた中間決算または月次決算による場合に限られます。更新申請については、日本公認会計士協会が平成30年12月20日付けで公表した実務指針に基づく「合意された手続業務」による中間決算・月次決算でも可能とされています。いずれにせよ第三者の手続が要るということです。

会社設立の段階で余裕を持って設計しておくほうが、結果として安く早く済みます。

出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

まとめ|順番と、前倒しで決めること

会社設立と許可の順番をまとめたイラスト
登記は途中の工程です。設計はもっと前から始まっています。

人材派遣の会社設立と労働者派遣事業の許可について、順番の話をまとめます。

  1. 登記が先、許可が後。 許可申請の添付書類に定款と登記事項証明書が含まれるため、順番は入れ替えられません。
  2. 決めるのは登記より前。 事業目的の文言と資本金の額は登記に入ります。あとから変えるには変更登記が要ります。
  3. 事業目的は「労働者派遣事業」と読み取れる形で。 「人材派遣業」だけでは確認を求められることがあります。
  4. 資本金は資産要件から逆算する。 借入では基準資産額は増えません。設立費用の分の余裕も見ておきます。
  5. 会社形態で資産要件は変わらない。 変わるのは設立の費用と手続きです。
  6. 時間のかかるものは並行して。 派遣元責任者講習、就業規則、個人情報適正管理規程。
  7. 迷ったら登記の前に労働局へ。 相談は登記より前にできます。

この記事の金額・期限は2026年8月27日時点で確認したものです。制度は改正されます。実際に会社設立と許可申請を進めるときは、許可の可否は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、税額の判断は税理士へご確認ください。

当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年8月27日確認)

迷ったら、労働局に相談してから登記してください

都道府県労働局の需給調整事業担当部門は、許可申請の相談窓口でもあります。会社設立の登記を済ませる前に、事業所の場所や資産の状況を持って相談に行くことができます。

登記をやり直すには費用と時間がかかりますが、相談は先にできます。この順番の入れ替えだけで、人材派遣の会社設立はずいぶん楽になります。

なお、許可が下りるかどうかの判断は労働局が行います。申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士、登記は司法書士、税額の判断は税理士の領域です。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

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