キャリア形成支援と教育訓練。人材派遣の会社設立で作る仕組みと公開
教育訓練の仕組みを作る方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、教育訓練やキャリア形成支援の仕組みをどう作るか考えている方に向けた記事です。
キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を有していることは、労働者派遣事業の許可の要件の一つです。申請の段階で計画が要ります。
そして、キャリア形成支援制度に関する事項は情報提供の対象でもあります。作って終わりではなく、実施して公開することになります。
教育訓練の計画は、許可の要件です

労働者派遣事業の許可の基準には、派遣労働者のキャリア形成を支援する制度に関する要件があります。
厚生労働省の資料は、キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を有することを求めています。
そして、この教育訓練は有給かつ無償で実施することが原則であるとされています。
つまり、教育訓練を受けている時間について賃金を支払い、受講料を派遣スタッフに負担させないということです。
さらに、実施計画には次のような内容が求められています。
- すべての派遣労働者を対象とすること
- 入職時の訓練が含まれること
- キャリアアップに資する内容であること
- 無期雇用派遣労働者に対しては長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること
- 計画的な実施のための時間数が確保されていること
人材派遣の会社設立では、この計画を許可申請の前に用意することになります。会社を作ってから考えるのでは、申請が遅れます。
この要件が置かれているのは、派遣労働者が就業先を変えながら働くという働き方だからです。就業先ごとに教育の機会が途切れないよう、派遣元が責任を持つという考え方になっています。
そして、この要件は許可の取得のときだけの話ではありません。許可を受けたあとも実施し続けることが前提です。人材派遣の会社設立では、一度きりの準備ではなく、続く仕組みとして考えてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
時間数の目安を、押さえておく

教育訓練の実施計画には、時間数の目安が示されています。
厚生労働省の業務取扱要領は、派遣労働者として雇用しようとする者の雇入れ時から、毎年、一定の時間数以上の教育訓練の機会を提供することを求めています。
この時間数は、フルタイムで働く派遣労働者を基準に示されています。実際の適用は、雇用形態や就業時間によって変わり得ます。
ここで大事なのは、この時間の賃金を会社が負担するということです。
たとえば時給1,750円の派遣スタッフが年8時間の教育訓練を受ければ、1人あたり14,000円の賃金が発生します。派遣先からの料金は入りません。
派遣スタッフが20人いれば、年28万円です。これに事業主負担が加わります。
人材派遣の会社設立で収支計画を立てるとき、この費用を織り込んでください。マージンから出ていく費用の一つです。
さらに、訓練を実施する日は派遣先での就業がありません。稼働率が下がるということです。派遣先との契約や要員の手配にも影響します。
人材派遣の会社設立で人員計画を立てるとき、この点も見込んでおいてください。訓練の時間を確保できる余裕がなければ、計画どおりに実施できません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
入職時の訓練から組み立てる

実施計画の中身をどう組み立てるかを考えます。

一つ目の入職時の訓練は、計画に含めることが求められています。ここは外せません。
そして、二つ目以降が「段階的かつ体系的」の部分です。同じ内容を毎年繰り返すのではなく、積み上がる形にすることが求められます。
人材派遣の会社設立で計画を作るとき、自社が扱う職種から考えてください。事務職を中心にするのか、製造業に派遣するのか、専門職を扱うのか。職種によって中身が変わります。
そして、実施方法も決めます。集合研修か、動画による学習か、外部の講座を利用するか。それぞれ費用と手間が違います。
外部の講座を利用する場合は、費用が読みやすい一方で内容を自社で決められません。自社で作る場合は、内容は自由ですが作る手間がかかります。どちらにも一長一短があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
キャリアコンサルティングの窓口も必要です

教育訓練とあわせて、キャリアコンサルティングの相談窓口を設けることも求められています。
厚生労働省の資料は、派遣労働者が希望する場合にキャリアコンサルティングを受けられる相談窓口を設置することを求めています。
この窓口には、担当者を配置することになります。
人材派遣の会社設立の直後は、代表者や派遣元責任者が兼ねることも多いでしょう。その場合も、誰が対応するのかを明確にしておく必要があります。
そして、相談の実績も記録しておいてください。実施していることを示すためです。
- 求められるもの
- 希望する派遣労働者が受けられる相談窓口の設置
- 担当者
- 窓口の担当を決めておきます
- 周知
- 派遣スタッフに窓口の存在を知らせます
- 記録
- 相談の実績を残しておきます
- 情報提供
- キャリア形成支援制度に関する事項は情報提供の対象です
最後の行に注目してください。キャリア形成支援制度に関する事項は、情報提供の対象に含まれます。つまり、公開されるということです。
なお、キャリアコンサルティングは、資格を持つ者が行う場合だけを指すわけではありません。どのような体制で行うかを含めて、所管の都道府県労働局に確認してください。
人材派遣の会社設立では、この窓口の運用も派遣元責任者の業務と重なる部分があります。誰が何を担当するのかを整理しておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実施したことを、記録して公開する

計画を作り、実施したら、記録します。
記録がなければ、実施したことを示せません。そして、情報提供の対象でもあります。
派遣元事業主には事業所ごとの情報を提供する義務があり、その対象には派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項が含まれます。
この情報は、インターネットの利用その他の適切な方法により提供することとされています。
人材派遣の会社設立では、記録の形を先に決めておいてください。
- 誰が、いつ、何を受講したか
- 何時間の訓練を実施したか
- 有給で実施したことが分かる記録(賃金の記録との突き合わせ)
- 受講料を派遣スタッフに負担させていないことが分かる記録
- キャリアコンサルティングの相談の実績
三つ目と四つ目が大切です。有給かつ無償で実施することが原則とされているため、そのことを示せる記録が要ります。
会社設立の段階でこの記録の様式を作っておけば、あとの作業が楽になります。事業が始まってから作ろうとすると、初期の記録が抜けます。
そして、記録は事業報告書の作成にも使えます。毎事業年度経過後に提出する事業報告書にも、教育訓練に関する事項を記載することになるからです。一度作った記録を、複数の用途に使える形にしておいてください。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
更新のときに、実施状況が見られます

教育訓練は、許可の更新にも関わります。
厚生労働省の業務取扱要領は、キャリア形成支援制度について、更新申請の直前の許可の有効期間内において許可の基準を満たす実施状況であったかを確認するとしています。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。
つまり、最初の更新では3年分の実施状況が見られるということです。
計画だけ作って実施していなければ、ここで問題になります。人材派遣の会社設立では、この点を最初から理解しておいてください。
そして、実施していたとしても、記録がなければ示せません。記録を残すことが、更新の準備そのものです。
あわせて、労働局には指導・監督の権限があります。更新の時期でなくても、実施状況について確認を受けることがあり得ます。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
費用をどう見込むか

教育訓練にかかる費用を整理します。

いちばん上の訓練時間の賃金が、費用の中心です。派遣先から料金は入らないのに、賃金は出ていきます。
そして、この費用はマージンから出ます。派遣料金と賃金の差額のなかに含まれているということです。
人材派遣の会社設立で価格を設計するとき、この費用を織り込んでおいてください。織り込んでいなければ、実施するたびに赤字が増えます。
派遣スタッフの人数が増えれば、この費用も増えます。事業が伸びれば伸びるほど、教育訓練の費用も伸びるということです。
なお、教育訓練の費用を助成する制度が用意されていることがあります。ただし、要件や受付の状況は年度によって変わります。人材派遣の会社設立で当てにする前に、厚生労働省の案内で最新の内容を確認してください。
助成が受けられるとしても、支給は実施のあとになります。先に費用が出ていくという点は変わりません。資金繰りの計画では、この順序で置いてください。
出典一般社団法人 日本人材派遣協会 (日本人材派遣協会/2026年8月27日確認)
会社設立の準備に、組み込んでおく

ここまでの内容を、人材派遣の会社設立の流れに組み込みます。
会社設立の登記が終わってから許可申請をすることになりますが、教育訓練の実施計画は登記を待たずに準備できます。
そして、キャリアコンサルティングの窓口の担当も、会社設立の段階で決めておけます。
記録の様式も同じです。会社設立の準備期間に作っておけば、事業の開始と同時に運用できます。
人材派遣の会社設立では、この準備を並行して進めてください。登記が終わってから考え始めるのでは、許可申請までの期間が延びます。
許可申請から許可までには一定の期間がかかります。その間、派遣の売上はありません。準備を並行させることが、この期間を短くする方法の一つです。
そして、教育訓練の計画は事業所ごとに実施することになります。会社設立の段階で事業所を一つにしておけば、運用も一つで済みます。拠点を増やすかどうかは、この負担も含めて判断してください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|キャリア形成支援と教育訓練

キャリア形成支援と教育訓練について、まとめます。
- 教育訓練の実施計画は許可の要件。 キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な計画が求められます。
- 有給かつ無償が原則。 訓練時間の賃金は会社が負担し、受講料を派遣スタッフに負担させません。
- 入職時の訓練を含める。 すべての派遣労働者が対象です。
- キャリアコンサルティングの窓口も必要。 担当者を決めておきます。
- 記録を残す。 実施したことを示せなければ、実施していないのと同じです。
- 情報提供の対象。 キャリア形成支援制度に関する事項は公開されます。
- 更新のときに実施状況が見られる。 最初の更新では3年分です。
教育訓練は、許可申請のために作る書類ではありません。実施し、記録し、公開し、更新のときに見られるものです。
人材派遣の会社設立の段階で、続けられる中身にしておいてください。そして、その費用を価格設計に織り込んでおいてください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。要件や時間数の考え方は改定されることがあります。許可の可否は所管の都道府県労働局が判断します。計画の作成や申請書類の準備は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
作るだけでなく、続ける仕組みにしてください
教育訓練の計画は、許可申請のために作る書類ではありません。実施し、記録し、公開し、更新のときに見られるものです。
人材派遣の会社設立の段階で、続けられる中身にしておいてください。背伸びした計画は、あとで自分を苦しめます。
許可の要件を満たすかどうかは所管の都道府県労働局が判断します。計画の作成や申請書類の準備は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行は行いません。
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