合同会社で人材派遣をするときの、社員構成と派遣元責任者の置き方
合同会社の社員構成を決める方へ
合同会社で人材派遣の会社設立をしようとしていて、社員をどう構成するか考えている方に向けた記事です。
合同会社では出資者を社員と呼び、そのうち業務を執行する人を業務執行社員と呼びます。株式会社の取締役にあたる立場です。
労働者派遣事業の許可申請では、この業務執行社員の書類が必要になります。加えて、派遣元責任者と職務代行者を決める必要があります。誰がどの役割を担うのかを整理します。
合同会社の社員とは、出資者のことです

合同会社の話をするとき、最初に確かめておきたいのが用語です。合同会社の「社員」は、一般的に使われる従業員という意味ではありません。出資者のことを指します。
会社設立の場面でこの用語を取り違えると、話がかみ合わなくなります。整理しておきます。
- 社員
- 出資者のこと。合同会社では出資と経営が一体になっています
- 業務執行社員
- 社員のうち、会社の業務を執行する人。株式会社の取締役にあたります
- 代表社員
- 会社を代表する社員。株式会社の代表取締役にあたります
- 従業員
- 雇用契約を結んで働く人。合同会社の「社員」とは別です
- 派遣スタッフ
- 派遣元事業主が雇用し、派遣先で働く労働者。従業員の一種です
定款で業務執行社員を定めない場合、社員全員が業務執行社員になります。定款で特定の社員だけを業務執行社員として定めることもできます。
人材派遣の会社設立で合同会社を選ぶ場合、この構成を最初に決めることになります。誰が出資し、誰が業務を執行し、誰が会社を代表するのか。定款に書く事項です。
そして、労働者派遣事業の許可申請では、この構成が書類の量に影響します。業務執行社員が多ければ、その分だけ提出する住民票と履歴書が増えるからです。

この流れで大事なのは、人の要件を登記より前に確かめることです。会社設立の登記そのものは、要件を満たしていなくても通ります。止まるのは、そのあとの許可申請の段階です。
人材派遣の会社設立では、資金の要件と人の要件の両方があります。合同会社を選ぶかどうかは、そのあとの話です。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
許可申請で必要になる、業務執行社員の書類

労働者派遣事業の許可申請では、法人の場合、役員の住民票の写しと履歴書を提出します。合同会社では、この「役員」にあたるのが業務執行社員です。
住民票の写しには条件があります。本籍地の記載があり、個人番号の記載がないものです。窓口で請求するときに、この二つを指定する必要があります。
加えて、精神の機能の障害により認知、判断又は意思疎通を適切に行うことができないおそれがある場合には、医師の診断書の提出が求められます。
- 業務執行社員の住民票の写し(本籍地の記載あり・個人番号の記載なし)
- 業務執行社員の履歴書
- 該当する場合は、医師の診断書
- 定款
- 登記事項証明書
- 最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
- 最近の事業年度における法人税の確定申告書の写しと納税証明書
そして、許可の欠格事由は法人の役員についても及びます。業務執行社員のなかに欠格事由に該当する人がいれば、法人として許可を受けられません。会社設立の段階で社員を迎えるときは、この点を確かめておく必要があります。
欠格事由は労働者派遣法第6条に定められています。禁錮以上の刑に処せられた場合や、一定の法令違反により罰金の刑に処せられた場合などが含まれます。詳しくは条文または所管の都道府県労働局でご確認ください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元責任者は、誰が務めるか

労働者派遣事業の許可には、事業所ごとに派遣元責任者を選任することが求められます。合同会社では、業務執行社員が兼ねることもできますし、従業員から選任することもできます。
大事なのは、その人が要件を満たしているかです。厚生労働省の許可基準は、派遣元責任者について次のような要件を挙げています。
- 未成年者でなく、欠格事由のいずれにも該当しないこと
- 成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者であること(人事又は労務の担当者、事業主や役員、支店長・工場長その他事業所の長など監督若しくは管理の地位にある者を含む)
- または、成年に達した後、職業安定行政・労働基準行政、民営職業紹介事業、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者であること
- 住所及び居所が一定しない等、生活根拠が不安定な者でないこと
- 適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること
- 派遣元責任者講習を、許可の申請の受理の日前3年以内に受講した者であること
- 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと
合同会社で会社設立をする場合、代表社員が派遣元責任者を兼ねるという形が多くなります。その場合、代表社員がこれらの要件を満たしている必要があります。
要件を満たさない場合は、要件を満たす人を業務執行社員として迎えるか、従業員として採用して派遣元責任者に選任するという選択になります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
職務代行者を、社員構成のなかでどう置くか

派遣元責任者を決めたら、次は職務代行者です。厚生労働省の許可基準は「派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること」を求めています。
合同会社で社員構成を決めるとき、この職務代行者をどう確保するかが論点になります。

合同会社で社員として迎える場合、持分の譲渡に原則として他の社員全員の同意が必要になる点に注意してください。あとから方向性が分かれたときに、関係を整理しにくくなることがあります。
従業員として採用する場合は、この制約がありません。ただし、許可が下りるまで売上がないなかで給与を払うことになります。会社設立の資金計画に、この人件費を入れておいてください。
職務代行者に求められる具体的な要件については、所管の都道府県労働局にご確認ください。派遣元責任者と同じ経験の要件が必要かどうかは、確かめておく価値があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
キャリアコンサルティングの担当者も決める

人の要件は、派遣元責任者と職務代行者だけではありません。キャリアコンサルティングの相談窓口にも担当者を配置する必要があります。
厚生労働省の許可基準は、担当者について次のいずれかを配置する必要があるとしています。キャリアコンサルタント(有資格者)、キャリアコンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者等)、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者です。
合同会社で会社設立をする場合、業務執行社員がこの担当者を兼ねることが多くなります。三つ目の「派遣先との連絡調整を行う営業担当者」に該当すれば、要件は満たせることになります。
相談窓口の形は、事務所内の相談ブースに限られません。電話、電子メール、専用のウェブサイトによる受付でも構わないとされています。ただし、雇用する派遣労働者に周知し、希望するすべての派遣労働者がキャリアコンサルティングを受けられるようにする必要があります。
そして、事業所には派遣スタッフと面談できる、個人的な秘密を保持できる場所が必要です。事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上という要件には、この場所の分が含まれています。

このチェックリストのうち、いちばん動かしにくいのが最初の項目です。3年以上の雇用管理の経験は、時間をかけないと積めません。会社設立を考えはじめた段階で確かめておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
役割と人の対応表をつくる

ここまで見てきた役割を、一覧にして整理します。合同会社で人材派遣の会社設立をするときは、この対応表を作っておくと混乱しません。
| 役割 | 根拠 | 要件 | 兼任 |
|---|---|---|---|
| 社員 | 会社法 | 出資すること | - |
| 業務執行社員 | 会社法・定款 | 定款で定めるか、社員全員 | 代表社員を兼ねられます |
| 代表社員 | 会社法・定款 | 業務執行社員のなかから | 派遣元責任者を兼ねられます |
| 派遣元責任者 | 労働者派遣法第36条 | 成年に達した後3年以上の雇用管理の経験など、講習の受講 | 業務執行社員が兼ねられます |
| 職務代行者 | 許可基準 | あらかじめ選任すること | 派遣元責任者は兼ねられません |
| キャリアコンサルティングの担当者 | 許可基準 | 資格または知見、あるいは営業担当者 | 業務執行社員が兼ねられます |
兼任の可否や具体的な要件は、所管の都道府県労働局にご確認ください。
この表で確かめておきたいのが、いちばん下から二番目の行です。職務代行者は、派遣元責任者が不在のときの代わりですから、派遣元責任者本人が兼ねることはできません。ここが、実質的にもう一人が必要になる理由です。
会社設立の段階でこの表を埋めてみると、何人必要なのかが具体的に見えてきます。最低でも二人。事業所を増やすなら、その分だけ増えます。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
社員を増やすときに、あとで効いてくること

合同会社で社員を増やすことには、あとから効いてくる論点があります。人材派遣の会社設立を考えるうえで、押さえておいてください。
- 持分の譲渡には、原則として他の社員全員の同意が必要です(定款で別段の定めをすることもできます)
- 社員の加入や退社には、定款の変更を伴うことがあります
- 業務執行社員が増えれば、許可申請の書類も欠格事由の確認も増えます
- 利益の配分は定款で定められますが、税務上の取扱いには注意が要ります
- 社員が退社する場合、持分の払戻しという手続きが必要になることがあります
最後の項目に注意してください。合同会社の社員が退社する場合、持分の払戻しを受けることができます。会社の財産が社外に出るということです。
人材派遣では、基準資産額2,000万円という許可の資産要件があります。持分の払戻しによって純資産が減れば、この要件に影響する可能性があります。
この点は、株式会社で株主が変わる場合とは事情が違います。株式会社では、株式が他の人に譲渡されても会社の財産は減りません。合同会社では、退社に伴う払戻しで財産が減ることがあります。
合同会社で人材派遣の会社設立をするとき、共同で始めるのであれば、この点を最初に確かめておいてください。
会社設立の段階では、共同で始める相手との関係は良好なのが普通です。問題になるのは数年後です。方向性が分かれたとき、持分をどう整理するのかを定款で決めておけるのが合同会社の柔軟なところでもありますが、決めていなければ原則どおりの取扱いになります。
人材派遣では許可の更新のたびに資産要件を確かめられます。会社設立から3年後の更新の時期に、社員構成の問題が重なると対応が難しくなります。定款を作る段階で、この点を司法書士に相談しておいてください。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
まとめ|合同会社の社員構成と、人の要件

合同会社で人材派遣の会社設立をする場合の、社員構成と人の要件についてまとめます。
- 合同会社の「社員」は出資者のこと。 従業員とは別の意味です。
- 業務執行社員の書類が許可申請で必要。 住民票(本籍地あり・個人番号なし)と履歴書。
- 欠格事由は業務執行社員にも及ぶ。 該当者がいれば法人として許可を受けられません。
- 派遣元責任者は業務執行社員が兼ねられる。 ただし経験の要件と講習の受講が必要です。
- 職務代行者は別に必要。 派遣元責任者本人は兼ねられません。実質的にもう一人が要ります。
- キャリアコンサルティングの担当者も要る。 業務執行社員が兼ねられる場合があります。
- 社員の退社に伴う払戻しは資産要件に影響する。 純資産が減るためです。
会社設立の段階で、役割と人の対応表を作ってみてください。何人必要なのかが具体的に見えてきますし、許可申請でそろえる書類も決まります。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省・法務局の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、登記は司法書士へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
役割と人を、対応表にしておいてください
合同会社では、社員・業務執行社員・代表社員・派遣元責任者・職務代行者という複数の立場が出てきます。一人が複数を兼ねることもできますが、整理しておかないと混乱します。
会社設立の段階で、誰がどの役割を担うのかを表にしておいてください。許可申請の書類をそろえるときにも、更新のときにも役に立ちます。
要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、登記は司法書士へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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