派遣元責任者を自分で務められるか。一人で人材派遣の会社設立をする前の確認
自分が要件を満たすか確かめたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、自分が派遣元責任者になれるのかを確かめたい方に向けた記事です。
派遣元責任者の要件は、厚生労働省の業務取扱要領に細かく書かれています。この記事では、その内容を項目ごとに読み解きます。
最終的に要件を満たすかどうかを判断するのは所管の都道府県労働局です。この記事は、相談に行く前の下調べとして使ってください。
派遣元責任者は、何をする人なのか

派遣元責任者は、労働者派遣事業において派遣労働者の雇用管理を適正に行うために選任される人です。労働者派遣法第36条に定めがあり、許可の要件のひとつになっています。
厚生労働省の許可基準は、派遣元責任者について「雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること」を求めています。
会社設立の段階では書類上の役職に見えるかもしれませんが、実際には日々の運営の中心になります。派遣スタッフからの苦情の処理、就業条件の管理、教育訓練の実施、派遣先との連絡調整。これらが業務になります。
- 選任の単位
- 事業所ごとに選任します。事業所を増やせば、その数だけ必要になります
- 法令上の根拠
- 労働者派遣法第36条、施行規則第29条
- 講習
- 厚生労働省告示に定められた講習機関が実施する派遣元責任者講習
- 職務代行者
- 不在の場合の臨時の職務代行者を、あらかじめ選任しておく必要があります
- 苦情処理
- 派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること
最後の項目に注意してください。派遣元責任者が日帰りで往復できる地域に派遣を行う、という条件があります。事業計画で遠隔地への派遣を考えている場合、この条件との関係を確かめておく必要があります。
会社設立の準備を進めるとき、資金の話には早くから目が向きます。基準資産額2,000万円という数字が分かりやすいからです。ところが実際には、この人の要件のほうが先に効いてくることがあります。
資金は貯めれば用意できますし、家族から出資を受けるという方法もあります。経験の要件はそうはいきません。だからこそ、人材派遣の会社設立を考えはじめた段階で、まずここを確かめておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
3年以上の雇用管理の経験とは何か

派遣元責任者の要件のなかで、いちばん判断が難しいのが経験の要件です。厚生労働省の許可基準は、次のいずれかに該当する者であることを求めています。
- 成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者
- 成年に達した後、職業安定行政又は労働基準行政に3年以上の経験を有する者
- 成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
- 成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者
一つ目の「雇用管理の経験」について、許可基準は次のように説明しています。
人事又は労務の担当者(事業主(法人の場合はその役員)、支店長、工場長その他事業所の長等労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」を含む。)であったと評価できること、又は労働者派遣事業における派遣労働者若しくは登録者等の労務の担当者であったことをいう。
— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)
この説明から読み取れることを整理します。
- 人事や労務の担当者としての経験が典型です
- 事業主や法人の役員であった経験も含まれます
- 支店長・工場長その他事業所の長など、監督若しくは管理の地位にある者としての経験も含まれます
- 労働者派遣事業における派遣労働者や登録者等の労務の担当者であった経験も含まれます
- いずれも「成年に達した後」の期間で数えます
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
経験以外の要件も、ひとつずつ確かめる

経験の要件を満たしていても、他の要件で該当しない場合があります。厚生労働省の許可基準が挙げている項目を並べます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 未成年者でないこと | 労働者派遣法第36条による |
| 欠格事由に該当しないこと | 労働者派遣法第6条第1号から第8号までに掲げるもの |
| 選任の手続き | 施行規則第29条で定める要件、手続に従って選任されていること |
| 生活根拠 | 住所及び居所が一定しない等、生活根拠が不安定な者でないこと |
| 健康状態 | 適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること |
| 拘束のおそれ | 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること |
| 公衆衛生・公衆道徳 | 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること |
| 名義貸しでないこと | 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと |
| 講習の受講 | 許可の申請の受理の日前3年以内に派遣元責任者講習を受講した者であること |
| 外国人の場合 | 原則として、入管法別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること |
| 派遣の範囲 | 苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること |
このほかに、精神の機能の障害により認知、判断又は意思疎通を適切に行うことができないおそれがある場合には、医師の診断書の提出が求められます。
八つ目の「名義貸しでないこと」に注目してください。要件を満たす人に名前だけを借りて許可を取る、という形は明確に否定されています。一人で人材派遣の会社設立をする場合、この点は特に注意が必要です。
実際に雇用管理を行う人が派遣元責任者になる。これが制度の前提です。書類上だけ要件を満たす人を置いて、実務は別の人がやる、という形は想定されていません。
派遣元事業主についての要件には、就業規則または労働契約の記載事項に関するものも含まれます。無期雇用の派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があることなどです。
一人で人材派遣の会社設立をする場合、これらの書類もすべて自分で用意することになります。就業規則の作成は社会保険労務士の業務なので、この部分だけでも相談しておくと安心です。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元責任者講習を、いつ受けるか

派遣元責任者講習は、厚生労働省告示(平成27年厚生労働省告示第392号)に定められた講習機関が実施します。受講の時期には条件があります。
新規の許可申請では、許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限られます。更新の場合は、許可の有効期間が満了する日前3年以内の受講日のものが求められます。
厚生労働省の資料も「申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があります」としています。申請してから受ければよいものではありません。

講習の内容は、労働者派遣制度の概要、派遣元事業主が講ずべき措置、個人情報の適正な管理、労働基準法等の適用に関する特例といったものです。実施機関のサイトで内容と時間が公開されています。
一人で人材派遣の会社設立をする場合、この講習は自分が受けることになります。加えて、職務代行者についても要件を確かめておく必要があります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
職務代行者を誰にするか

派遣元責任者の要件を自分が満たしていても、もうひとつ必要なものがあります。職務代行者です。
厚生労働省の許可基準は「派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること」を求めています。あらかじめ、という点が重要です。必要になってから決めるのではなく、許可申請の時点で決まっている必要があります。
一人で人材派遣の会社設立をしようとする場合、ここが実質的な壁になります。会社の登記は一人でできても、許可を取る段階でもう一人が必要になるからです。

職務代行者に求められる具体的な要件については、所管の都道府県労働局にご確認ください。派遣元責任者と同じ経験の要件が必要かどうかは、確かめておく価値があります。
そして繰り返しになりますが、名義だけを借りる形は認められません。実際に職務を代行できる人を選任してください。
会社設立の段階でもう一人が必要になるということは、その人の人件費や報酬も資金計画に入れるということです。人材派遣は許可が下りるまで営業できないので、その期間の人件費も無収入のまま出ていきます。
一人で人材派遣の会社設立を進めたいと考えている方にとって、この点はあらかじめ知っておく価値があります。資金計画を一人分で組んでいると、あとで足りなくなるからです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
キャリアコンサルティングの担当者も要ります

人の要件は、派遣元責任者と職務代行者だけではありません。キャリアコンサルティングの相談窓口にも担当者が必要です。
厚生労働省の許可基準は、相談窓口の担当者について次のいずれかを配置する必要があるとしています。
- キャリアコンサルタント(有資格者)
- キャリアコンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者等)
- 派遣先との連絡調整を行う営業担当者
一人で人材派遣の会社設立をする場合、代表者がこの担当者を兼ねることになります。三つ目の「派遣先との連絡調整を行う営業担当者」に該当すれば、この要件は満たせることになります。
相談窓口の形は、事務所内に定められた相談ブースを設置することに限られません。電話による相談窓口の設置、電子メールでの相談の受付、専用のウェブサイトの相談窓口の設置などにより、雇用する派遣労働者がキャリアコンサルティングを申し込めるよう周知し、適切な窓口を提供することとされています。
実施の頻度も、必ずしも常時行わなければならないわけではなく、たとえば毎週2回定期的に実施することや、派遣労働者の希望に応じ随時実施することも可能とされています。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
要件を満たさない場合に、どうするか

自分が派遣元責任者の要件を満たさないと分かった場合、選択肢は限られます。
- 要件を満たす人を採用する。 3年以上の雇用管理の経験を持つ人を雇い、派遣元責任者に選任します。人件費がかかります。
- 共同で会社設立をする。 要件を満たす人と一緒に会社を作り、その人を派遣元責任者にします。持分や株式の分配を決めることになります。
- 経験を積んでから会社設立をする。 人事・労務の担当者として経験を積み、要件を満たしてから進めます。時間はかかりますが、確実です。
- 別の事業を検討する。 人材紹介(有料職業紹介事業)にも職業紹介責任者の要件がありますが、内容は労働者派遣とは異なります。要件は所管の労働局でご確認ください。
三つ目を選ぶ場合、その間に資金を貯めることもできます。人材派遣の会社設立には基準資産額2,000万円という資産要件があるので、時間をかけることには意味があります。
急いで会社設立をしても、許可が下りなければ人材派遣の営業はできません。法人住民税の均等割や決算・申告の費用だけがかかることになります。順番を守るほうが、結局は安く済みます。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|派遣元責任者になれるかの確認

一人で人材派遣の会社設立をする場合の、派遣元責任者についてまとめます。

このなかで動かしにくいのが、経験の要件です。資金は貯めれば用意できますが、経験は時間をかけないと積めません。
そして、自分の職歴が要件に当たるかどうかは事実の評価の問題です。会社設立の登記より前に、履歴書を持って所管の都道府県労働局に相談してください。相談は無料で、やり直しの登記は有料です。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
迷ったら、労働局に確かめてください
「自分の職歴が3年以上の雇用管理の経験にあたるか」という問いは、書類の書き方ではなく事実の評価の問題です。ご自身で判断するより、履歴書を持って所管の都道府県労働局に相談するほうが確実です。
相談は会社設立の登記より前にできます。要件を満たさないと分かってから会社を作っても、許可は下りません。順番を守ってください。
要件の判断は労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行ではありません。
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