人材派遣の会社設立で、定款の認証はどう進むのか。手数料と手順を確かめる
定款の認証を控えている方へ
人材派遣の会社設立で株式会社を選び、定款の認証を控えている方に向けた記事です。
定款の認証は、公証役場で行う手続きです。手数料の額は資本金によって変わり、人材派遣の会社設立では5万円になることがほとんどです。
この記事では、認証の手順と費用、電子定款の扱い、そして人材派遣に固有の注意点を整理します。
定款の認証は、株式会社だけの手続きです

定款の認証は、公証人が定款の内容を確認し、その成立を証明する手続きです。株式会社を設立する場合には必要ですが、合同会社では不要です。
人材派遣の会社設立で株式会社を選んだ場合、この手続きが加わります。合同会社を選べば、この手数料と手間が省けます。会社設立の費用の差は、ここが中心になります。
- 株式会社
- 定款の認証が必要です。公証役場で手続きします
- 合同会社
- 定款の認証は不要です。作成した定款をそのまま登記に添えます
- 認証を受ける場所
- 本店所在地を管轄する法務局・地方法務局に所属する公証人の役場
- 認証手数料
- 資本金100万円未満3万円/100万円以上300万円未満4万円/その他5万円
- 収入印紙
- 紙の定款には4万円。電子定款なら不要です
人材派遣の会社設立では、労働者派遣事業の許可の資産要件から資本金が2,000万円前後になります。したがって認証手数料は5万円になることがほとんどです。
令和6年12月1日からは、一定の条件を満たす資本金100万円未満の会社について認証手数料が1万5,000円になっていますが、人材派遣ではこの水準の資本金を選べません。基準資産額2,000万円という許可の要件があるからです。
この点は、一般的な会社設立の記事とは前提が変わるところです。資本金を小さくして手数料を抑えるという方法が、人材派遣では使えません。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
認証を受けるまでの手順

定款の認証を受けるまでの流れを並べます。当日いきなり出向くのではなく、事前に内容を調整するのが通例です。
- 定款の案を作成する。 商号、本店所在地、目的、資本金の額、発起人などを決めて文面にします。
- 公証役場に事前に連絡する。 定款の案を送って、内容を確認してもらいます。
- 修正があれば直す。 記載の不備や表現の問題を指摘されることがあります。
- 実質的支配者となるべき者について申告する。 会社を実質的に支配する者を申告する制度があります。
- 日程を決めて出向く。 発起人が出向くか、委任状を用意して代理人が出向きます。
- 認証を受け、謄本の交付を受ける。 認証を受けた定款の謄本は、登記申請に使います。
この流れのなかで、人材派遣に固有の注意点があるのは一番目です。事業目的に労働者派遣事業を行うことが読み取れる文言を入れておく必要があります。
公証人が確認するのは、定款の記載が法令に反していないか、絶対的記載事項が書かれているかといった点です。労働者派遣事業の許可が取れるかどうかを判断する立場にはありません。
ですから、事業目的の文言については、公証役場とは別に所管の都道府県労働局にも確かめておく価値があります。会社設立の登記より前に相談できます。
なお、近年はテレビ電話による定款認証も行われています。公証役場に出向かずに認証を受けられる仕組みです。利用できる条件や手続きは、日本公証人連合会の案内でご確認ください。
人材派遣の会社設立では、この認証を終えてから登記、そして許可申請へと進みます。認証そのものは1日で終わる手続きですが、その前の定款の作成に時間がかかります。事業目的の文言を決め、資本金の額を資産要件から逆算する作業があるからです。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
電子定款にすると、収入印紙4万円が不要になります

紙で作成した定款には、収入印紙4万円を貼る必要があります。電子定款であれば、この印紙税がかかりません。
これは株式会社でも合同会社でも同じです。合同会社は定款の認証が不要ですが、紙の定款であれば収入印紙は必要になります。

電子定款にするには、電子署名を付けるための機器と環境が必要です。自分で用意すると、4万円を上回る費用と手間がかかることもあります。
そのため、司法書士に依頼するかどうかの判断材料になることがあります。司法書士は電子定款に対応していることが多く、依頼すればこの4万円が不要になります。報酬と差し引きでどうなるかを確かめてみてください。
人材派遣の会社設立では、この4万円は全体から見れば小さな金額です。ただし、司法書士に依頼するかどうかを考えるきっかけにはなります。依頼すれば、事業目的の文言についても相談できます。
労働者派遣事業の許可申請では、添付書類として定款(または寄附行為)を提出します。電子定款の場合、どういう形で提出するのかは所管の都道府県労働局にご確認ください。会社設立の段階で確かめておくと、許可申請のときに慌てずに済みます。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
定款に書く絶対的記載事項

定款には、必ず書かなければならない事項があります。これを絶対的記載事項といい、書かれていなければ定款は無効になります。
| 項目 | 内容 | 人材派遣での注意点 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社が行う事業 | 労働者派遣事業を行うことが読み取れる文言を入れます |
| 商号 | 会社の名称 | 同一本店所在地に同一商号があると登記できません |
| 本店の所在地 | 会社の住所 | 事業所として使うなら面積などの要件を満たす必要があります |
| 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 | 資本金のもとになる金額 | 基準資産額2,000万円以上から逆算します(事業所1か所) |
| 発起人の氏名または名称および住所 | 出資する人 | 役員を兼ねる場合、許可申請で住民票と履歴書が必要になります |
このほかに、発行可能株式総数を定款で定める必要があります(設立時に定めていない場合は、設立の登記までに定めます)。
太字にした三つが、人材派遣の会社設立に固有の注意点です。目的、本店の所在地、出資される財産の価額。いずれも労働者派遣事業の許可に関わります。
特に出資される財産の価額は、資本金の額のもとになります。労働者派遣事業の許可の資産要件から逆算して決める必要があります。
事業所1か所であれば、基準資産額2,000万円以上・自己名義の現金預金1,500万円以上・基準資産額が負債の総額の7分の1以上という三つを同時に満たすことになります。そして借入では基準資産額は増えません。資本金として入れる必要があります。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
相対的記載事項と、任意的記載事項

定款には、絶対的記載事項のほかに、定款に書かなければ効力が生じない事項(相対的記載事項)と、書いても書かなくてもよい事項(任意的記載事項)があります。
人材派遣の会社設立で関わってくるものを挙げます。
- 株式の譲渡制限に関する定め(相対的記載事項):株式が知らないうちに第三者に渡ることを防げます
- 取締役の任期の伸長(相対的記載事項):非公開会社では最長10年まで伸ばせます。重任登記の回数を減らせます
- 事業年度(任意的記載事項):許可申請で出す決算書の時期に関わります
- 公告の方法(任意的記載事項):株式会社には決算公告の義務があります
- 取締役の員数(任意的記載事項):何人にするかを定めておくことができます
一つ目と二つ目は、人材派遣の会社設立で書いておく価値があります。株式の譲渡制限は会社の支配関係を管理しやすくし、任期の伸長は重任登記の手間を減らします。
三つ目の事業年度は、労働者派遣事業の許可申請で提出する決算書の時期に関わります。会社設立から最初の決算までの期間は1年を超えることができません。そして、3年後の許可の更新の時期からも逆算できます。
許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年です。更新の申請は有効期間が満了する日の3か月前までに行う必要があり、申請日の超過は認められません。その時点でどの決算書が直近になるのかを考えておくと、事業年度の決め方に根拠が生まれます。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
認証のあとに事業目的を変えるとどうなるか

定款の認証を受けたあとに事業目的を変えるには、株主総会の特別決議と変更登記が必要になります。
会社設立の登記が終わる前であれば、発起人の全員の同意で定款を変更できる場合もあります。ただし、認証を受けた定款の内容を変更する場合の取扱いは、状況によって異なります。公証役場と司法書士にご確認ください。
登記が終わったあとであれば、株主総会の特別決議が必要です。議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決します。そのうえで変更登記を申請し、目的の変更にかかる登録免許税3万円がかかります。

このチェックリストのうち、上の四つが労働者派遣事業の許可に直結します。会社設立の準備で、ここに時間をかけてください。
そして人材派遣は、許可が下りるまで営業ができない事業です。変更登記で1か月遅れれば、その分だけ無収入期間が延びます。認証の前に確かめておく価値は、金額以上にあります。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
合同会社の定款は、認証がない分だけ自己責任です

合同会社では定款の認証が不要です。作成した定款を、そのまま登記申請に添えます。
費用の面では有利ですが、ひとつ気をつけたい点があります。公証人による確認の機会がないということです。
株式会社であれば、認証の過程で公証人が定款の記載を確認します。記載の不備や表現の問題を指摘されることがあります。合同会社にはこの機会がありません。
人材派遣の会社設立では、事業目的の文言が労働者派遣事業の許可申請に影響します。合同会社を選ぶ場合、この文言を自分で確かめる必要があります。
といっても、公証人は労働者派遣事業の許可が取れるかどうかを判断する立場にはありません。ですから、株式会社を選んだ場合でも、文言については別に確かめる必要があります。この点は同じです。
合同会社の定款にも、絶対的記載事項があります。目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称および住所、社員の責任、社員の出資の目的および価額または評価の標準です。
株式会社とは項目が異なりますが、目的・商号・本店の所在地が必須である点は同じです。人材派遣の会社設立で気をつける点も同じになります。
そして、社員の出資の目的および価額または評価の標準という項目があります。ここで定める価額が資本金のもとになります。労働者派遣事業の許可の資産要件から逆算して決める必要があるのは、株式会社と同じです。
合同会社では、出資された財産の額のうち資本金として計上しない部分を資本剰余金とすることもできます。基準資産額という観点では、資本金と資本剰余金のどちらに割り振っても結果は変わりません。基準資産額は資産の総額から負債の総額を控除した額だからです。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
まとめ|定款の認証について

人材派遣の会社設立における、定款の認証についてまとめます。
- 認証が必要なのは株式会社だけ。 合同会社では不要です。
- 認証手数料は資本金で決まる。 人材派遣では資産要件から資本金が大きくなるため、5万円になることがほとんどです。
- 電子定款なら収入印紙4万円が不要。 株式会社でも合同会社でも同じです。
- 事前に内容を調整するのが通例。 定款の案を送って確認してもらいます。
- 公証人は許可の判断をしない。 文言については所管の都道府県労働局にも確かめてください。
- 認証後の変更には特別決議と変更登記。 目的の変更にかかる登録免許税は3万円です。
- 絶対的記載事項のうち三つが許可に関わる。 目的、本店の所在地、出資される財産の価額。
定款の認証は、会社設立の手続きのなかでは比較的短い工程です。ただし、そこで確定する内容は、あとから変えるのに費用と時間がかかります。認証の前に確かめておいてください。
この記事の金額は2026年8月27日時点で、日本公証人連合会・法務局・厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。定款の作成と認証の手続きは司法書士へ、許可申請での取扱いは所管の都道府県労働局へご確認ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典定款認証(日本公証人連合会) (日本公証人連合会/2026年8月27日確認)
認証を受ける前に、文言を確かめてください
定款の認証を受けたあとに事業目的を変えるには、株主総会の特別決議と変更登記が必要になります。認証を受ける前に、労働者派遣事業を行うことが読み取れる文言になっているかを確かめておいてください。
公証人は、労働者派遣事業の許可が取れるかどうかを判断する立場にはありません。文言については、所管の都道府県労働局にも確かめておく価値があります。
定款の作成と認証の手続きは司法書士へ、許可申請での取扱いは所管の都道府県労働局へご確認ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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