偽装請負とは何か。37号告示から見る人材派遣と請負の境目
請負と派遣の境目を知りたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、請負や業務委託との違いを正しく知っておきたい方に向けた記事です。
契約書に業務委託と書いても、実態が労働者派遣であれば労働者派遣です。名称ではなく実態で判断されます。
この境目は、昭和61年労働省告示第37号に基準が定められています。この記事では、その基準を条文にもとづいて整理します。
偽装請負とは何を指すのか

偽装請負とは、契約の形式が請負や業務委託であるにもかかわらず、実態が労働者派遣になっている状態を指す言葉です。
法律にこの言葉が定義されているわけではありません。しかし、実態が労働者派遣であれば、労働者派遣法が適用されます。
そして、労働者派遣事業の許可を受けていなければ、無許可で労働者派遣事業を行ったことになります。
労働者派遣法第59条第2号は、許可を受けないで労働者派遣事業を行った者を1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。
つまり、偽装請負は罰則の対象になり得るということです。
人材派遣の会社設立を考えている方にとって、この境目を知っておくことは重要です。自社が請負として受けた業務が、実は労働者派遣に当たるということが起こり得るからです。
逆に、労働者派遣事業の許可を持っている会社が、請負として契約すべき業務を派遣として扱うということもあります。どちらの方向にもずれは起こります。
人材派遣の会社設立を進めるなら、最初から労働者派遣事業として設計するほうが確実です。許可の要件は重いものですが、満たしてしまえば迷いがなくなります。
会社設立の段階で制度を決めておけば、定款の事業目的も、資本金の額も、そこから決まります。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
区分の基準は、告示に定められています

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分については、昭和61年労働省告示第37号に基準が定められています。最終改正は平成24年厚生労働省告示第518号です。
この告示の第一条は、労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする、としています。
そして第二条は、次のように定めています。
請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であつても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
— 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 第二条
読み方に注意してください。「次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする」と書かれています。
つまり、原則は労働者派遣事業であり、各号のすべてに該当する場合にだけ請負として扱われるということです。
人材派遣の会社設立を考えるとき、この読み方を押さえておいてください。請負であることを示す側に立証の負担があるという構造です。
会社設立の準備で契約書のひな形を作るときも、この構造を前提にしてください。請負として契約するなら、各号を実態として満たせるかどうかを先に確かめることになります。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
第一号|労働力を自ら直接利用しているか

第二条第一号は、自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであることを求めています。
そのために、イ、ロ、ハの三つに該当することが必要とされています。

ロの括弧書きに注目してください。単なる把握を除く、と書かれています。
つまり、発注者が作業の進み具合を把握することと、労働時間を管理することは別だということです。把握するだけなら、それだけで労働者派遣になるわけではありません。
しかし、始業と終業の時刻を発注者が決めていれば、それは管理です。
人材派遣の会社設立を考えている方は、この線引きを理解しておいてください。誰が指示を出しているかが、区分の中心にあります。
会社設立の段階で、現場の指揮命令をどう組むかを決めておいてください。請負として受けるなら、自社の責任者を現場に置く必要が出てきます。その人件費も、会社設立の収支計画に入れることになります。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
第二号|業務を独立して処理しているか

第二条第二号は、請負契約により請け負った業務を自己の業務として、契約の相手方から独立して処理するものであることを求めています。
こちらも、イ、ロ、ハの三つに該当することが必要です。
- イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
- ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
- ハ 次のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。(2) 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
ハの最後に注目してください。単に肉体的な労働力を提供するものでないこと、と書かれています。
人を送り出して働かせるだけであれば、これに該当しません。設備を用意するか、企画や専門性で処理するかが求められています。
そして、イの資金の調達も見られます。発注者から設備も材料も提供されているなら、独立して処理しているとは言いにくくなります。
人材派遣の会社設立を考えている方にとって、この基準は事業の性格を示しています。人を送り出す事業は、労働者派遣として設計するのが素直だということです。
会社設立のときに用意する設備や、社内に蓄えた専門性が、この判断に関わってくるということでもあります。人材派遣の会社設立では、自社が何を持っているのかを整理しておいてください。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
形を整えても、目的が偽装なら意味がありません

告示の第三条は、次のように定めています。
前条各号のいずれにも該当する事業主であつても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が法第二条第一号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。
— 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 第三条
この条文が意味することは明確です。形を整えても、目的が偽装であれば、労働者派遣事業とされます。
つまり、第二条の各号を形式的に満たすように書類を作っても、それだけでは足りないということです。
人材派遣の会社設立を考えている方にとって、この条文は大事です。境目を知って形を整えるという発想が、そもそも通用しないということだからです。
実態が人を送り出して他社の指揮命令の下で働かせることであれば、それは労働者派遣です。労働者派遣事業の許可を受けて行うべきものです。
そして、許可を受けて行えば、堂々と事業ができます。派遣先にも説明でき、派遣スタッフにも安心してもらえます。
会社設立の段階から許可を前提に準備すれば、事業所も資本金も責任者も、一貫した形で用意できます。あとから制度を変えるほうが、はるかに手間がかかります。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
名義貸しと二重派遣

偽装請負とあわせて知っておきたいものが二つあります。
一つは名義貸しです。労働者派遣法第15条は、派遣元事業主は、自己の名義をもつて、他人に労働者派遣事業を行わせてはならない、と定めています。
これに違反した者は、同法第59条第1号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます。
許可を持っている会社が、許可のない会社に名前を貸すという形は認められないということです。
もう一つは二重派遣です。派遣先が、派遣されてきた労働者をさらに別の会社に派遣するという形を指します。
派遣先は派遣スタッフを雇用していません。雇用していない労働者を他社の指揮命令下で働かせれば、職業安定法が禁止する労働者供給に当たり得ます。
人材派遣の会社設立では、派遣先が自社の派遣スタッフをさらに他社に出していないかにも注意が必要です。契約書に、その旨を定めておくことも考えられます。
会社設立の段階で作る派遣契約のひな形に、再派遣を禁じる条項を入れておくという実務もあります。社会保険労務士や弁護士に相談しながら整えてください。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
会社設立の段階で、どちらの事業か決める

会社設立の段階で、自社が行う事業がどちらなのかを決めてください。
判断の起点は、実態です。

左の形になるなら、労働者派遣事業の許可を受けてください。
右の形で事業ができるなら、請負として契約することになります。ただし、実態が右の形になっているかどうかは常に確認が必要です。
人材派遣の会社設立では、左の形を前提に計画を立てることになります。許可を受け、資産要件を満たし、派遣元責任者を選任し、教育訓練を実施する。この一式です。
そして、許可を受けていれば、堂々と人を送り出せます。派遣先も安心して受け入れられます。
出典「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可を受けて行うことの意味

労働者派遣事業の許可を受けるには、要件を満たす必要があります。
基準資産額が2,000万円に事業所数を乗じた額以上であること、基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること、事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に事業所数を乗じた額以上であること。
事業所について、労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あること。
派遣元責任者を選任すること。キャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を有すること。
これらは決して軽い要件ではありません。だからこそ、許可を受けている会社は信頼されます。
人材派遣の会社設立では、この要件を満たすところから始めてください。回り道に見えるかもしれませんが、いちばん確実な道です。
そして、許可を受けたあとも、事業報告書の提出、情報提供、教育訓練の実施が続きます。これらを続けることで、更新のときにも困りません。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|偽装請負と37号告示

偽装請負と、労働者派遣事業と請負の区分について、まとめます。
- 偽装請負は、形式が請負で実態が労働者派遣の状態。 無許可なら罰則の対象になり得ます。
- 区分の基準は昭和61年労働省告示第37号。 最終改正は平成24年厚生労働省告示第518号です。
- 原則は労働者派遣事業。 各号のすべてに該当する場合にだけ請負とされます。
- 第一号は三つの管理。 業務の遂行、労働時間等、企業秩序の維持。
- 第二号は独立した処理。 資金、事業主としての責任、設備または企画・専門性。
- 第三条がある。 故意に偽装されたものは、免れることができません。
- 名義貸しと二重派遣にも注意。 どちらも問題とされる形です。
人を送り出して他社の指揮命令の下で働かせるなら、それは労働者派遣です。人材派遣の会社設立では、許可を受けて行うことを前提に計画を立ててください。
境目を知ることは、形を整えるためではありません。実態に合った制度を選ぶためです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料とe-Gov法令検索の条文により確認したものです。制度は改正されます。個別の事案の判断は所管の都道府県労働局が行います。契約や体制の設計は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。
出典労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
実態に合った制度を選んでください
この記事は、労働者派遣事業と請負の区分の基準を説明したものです。規制を回避する方法を示すものではありません。
人を送り出して他社の指揮命令の下で働かせるなら、それは労働者派遣です。労働者派遣事業の許可を受けて行ってください。
個別の事案が請負に当たるか労働者派遣に当たるかは、所管の都道府県労働局が判断します。契約や体制の設計は社会保険労務士へ、税務の判断は税理士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。
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