許可を更新できなかったら、どうなるのか。取消・廃止との違いも整理する
最悪の場合を知っておきたい方へ
人材派遣の会社設立を考えていて、うまくいかなかった場合に何が起きるのかを知っておきたい方に向けた記事です。
労働者派遣事業の許可は、更新できなければ失効します。また、違反があれば取消という処分もあります。自ら廃止するという選択もあります。
この記事では、この三つの違いと、それぞれで何が起きるのかを整理します。気の重い話ですが、会社設立の前に知っておく価値があります。
許可を失う三つの形

労働者派遣事業の許可を失う形は、大きく三つあります。それぞれ原因も手続きも違います。
- 失効
- 許可の有効期間が満了したとき。更新できなければ、そこで許可はなくなります
- 取消
- 法令違反などがあった場合の行政処分。労働局の判断で許可が取り消されます
- 廃止
- 事業主が自ら事業をやめる場合。廃止の届出という手続きがあります
このうち、いちばん多いのは一つ目の失効だと考えられます。更新の要件を満たせない、あるいは更新申請の期限を過ぎた、という形です。
厚生労働省の業務取扱要領は、許可の有効期間が満了したとき、当該許可は失効すると書いています。特別な処分があるわけではなく、期間が過ぎれば自動的になくなるということです。
二つ目の取消は、行政処分です。労働局には指導・監督の権限があり、違反があれば改善命令、事業停止命令、そして許可の取消に至ることがあります。
三つ目の廃止は、事業主の選択です。事業を続けられないと判断した場合、廃止の届出という手続きがあります。
人材派遣の会社設立を調べていると、許可を取るまでの話が中心になります。ところが実際には、許可を取ったあとのほうが期間としてはずっと長くなります。3年、そのあとは5年ごとの更新が続くからです。
そして、許可を失えば事業そのものが止まります。会社設立にかけた資金も、積み上げてきた取引先との関係も、そこで途切れます。だからこそ、失う形を知っておく意味があります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
失効|更新できなかった場合

いちばん起こりやすいのが、更新できずに失効する形です。
労働者派遣事業の許可の有効期間は、初めて許可を受けた場合が3年、一度更新を受けた場合が5年です。更新の申請は有効期間が満了する日の3か月前までに行う必要があり、申請日の超過は認められません。
更新できない原因は、大きく二つに分かれます。
- 要件を満たさなくなった。 資産要件を割り込んだ、教育訓練を実施していなかった、など。
- 手続きの期限を過ぎた。 更新申請の期限は満了の3か月前で、超過は認められません。
一つ目でいちばん多いのが、資産要件です。基準資産額2,000万円・自己名義の現金預金1,500万円・負債比率7分の1以上(事業所1か所)という三つを、更新のときにも満たしている必要があります。
会社設立のときに資本金2,000万円を用意して許可を取れたとしても、その後の赤字で目減りすれば要件を満たさなくなります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
取消|行政処分としての取消

二つ目が、行政処分としての許可の取消です。
労働局には、労働者派遣事業に対する指導・監督の権限があります。違反があれば、段階的に処分が行われます。

取消の原因になり得るのは、たとえば次のような場合です。
- 欠格事由に該当することになった場合(役員が該当する場合を含みます)
- 許可の条件に違反した場合
- 労働者派遣法の規定に違反した場合
- 禁止されている業務に労働者派遣を行った場合
- 偽装請負にあたる運用をしていた場合
そして、行政処分は公表されることがあります。会社の名前が公表されれば、派遣先との取引にも派遣スタッフの採用にも影響します。
もうひとつの条件として、派遣先における団体交渉または労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について、労働者派遣を行うものではないことも挙げられています。
これらの条件は、許可証とあわせて交付される許可条件通知書に記載されます。会社設立から事業を続けるなかで、この条件を守り続ける必要があります。
出典労働者派遣事業に係る法令・指針・疑義応答集・関連情報等 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
廃止|自ら事業をやめる場合

三つ目が、事業主が自ら事業をやめる場合です。この場合、廃止の届出という手続きがあります。
更新できずに失効するのと、自ら廃止の届出をするのとでは、その後の扱いが異なる場合があります。判断に迷うときは、所管の都道府県労働局に相談してください。
人材派遣の会社設立をしたあとに事業をやめる場合、考えておくことがいくつかあります。
- 派遣先との労働者派遣契約をどう終わらせるか
- 雇用している派遣スタッフの雇用をどうするか
- 事業所の賃貸借契約をどうするか
- 許可証の返納などの手続き
- 会社そのものを解散するのか、別の事業を続けるのか
二つ目がとくに重要です。労働者派遣事業をやめても、派遣スタッフとの雇用契約はすぐには終わりません。無期雇用の派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できないという許可基準の趣旨からも、慎重な対応が必要になります。
会社そのものを解散する場合は、解散と清算の手続きが必要です。登記も必要になり、費用と時間がかかります。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可を失ったあとに、営業を続けたらどうなるか

許可を失ったあとに労働者派遣を続ければ、無許可で労働者派遣事業を行ったことになります。
労働者派遣法には罰則の定めがあります。無許可で労働者派遣事業を行った場合、処罰の対象になります。
これは、許可が失効した場合も、取り消された場合も同じです。許可がない状態で労働者派遣を行うことが問題になります。
そして、労働者派遣に当たるかどうかは、契約の名称ではなく実態で判断されます。請負契約や業務委託契約という名前にしても、実際に発注者が労働者に直接指揮命令をしていれば、労働者派遣に当たると判断されます。
厚生労働省は、昭和61年労働省告示第37号として「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」を定めています。許可を失ったあとに請負の形で続ける、という発想は成り立ちません。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
失うことを避けるために、日々やっておくこと

許可を失うことを避けるために、日々やっておくことを並べます。どれも特別なことではありません。

この十項目のうち、いちばん忘れやすいのが最後です。人材派遣の会社設立から3年は、思ったより早く来ます。
そして、いちばん後回しになりやすいのが教育訓練と記録です。売上に直結しないため、忙しくなると優先度が下がります。
会社設立の段階で、これらを誰が担当するのかを決めておいてください。一人で人材派遣の会社設立をする場合は特に、意識して時間を確保する必要があります。
出典派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針ほか (厚生労働省/2026年8月27日確認)
会社設立の段階で、避けられること

許可を失う原因の多くは、会社設立の段階で体制を作っておけば避けられます。
| 失う原因 | 会社設立の段階でできること |
|---|---|
| 資産要件を割り込む | 資本金に余裕を持たせる。役員報酬を抑えめに設計する |
| 教育訓練を実施していない | 実行できる計画にする。担当を決めておく |
| 記録を残していない | 記録の仕組みを最初に決める。派遣元管理台帳の活用が原則です |
| 情報提供をしていない | 掲載する場所を用意しておく。更新の時期を予定に入れる |
| 更新の期限を過ぎる | 許可証を受け取った時点で、次の期限を書き留める |
| 禁止業務に派遣する | 事業計画の段階で、派遣できる業務かを確かめる |
| 請負との区分があいまい | 事業目的に併記する場合は、区分の基準を理解しておく |
いずれも会社設立の段階で手を打てるものです。
この表を見ると、多くが会社設立の設計に関わることだと分かります。資本金の額、教育訓練計画の内容、記録の仕組み、担当者の決定。
人材派遣の会社設立を進めるとき、許可を取ることに意識が向きます。ただ、許可を取ったあとのほうが期間としては長くなります。会社設立の段階で、続けられる体制を作っておいてください。
給与計算や社会保険の手続きを社会保険労務士に、記帳と決算を税理士に依頼すれば、自分の時間を営業と採用に振り向けられます。費用はかかりますが、許可の維持に関わる作業に時間を割けるようになります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
それでも続けられないと判断したら

努力しても続けられないと判断することもあります。その場合の考え方を書いておきます。
まず、期限が来る前に所管の都道府県労働局に相談してください。更新できるかどうかの見通しを立てたうえで、続けるか廃止するかを判断できます。
更新できずに失効するのと、自ら廃止の届出をするのとでは、その後の扱いが異なる場合があります。この点も含めて相談してください。
そして、雇用している派遣スタッフへの対応を考えてください。無期雇用の派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できないという許可基準の趣旨からも、慎重な対応が必要になります。
労働者派遣事業をやめても、会社そのものを続けるという選択もあります。定款に他の事業目的があれば、そちらに切り替えることもできます。ただし、人材紹介(有料職業紹介事業)に切り替えるなら、そちらの許可が別に必要です。
人材派遣の会社設立にかけた資金と時間を考えると、やめる判断は簡単ではありません。ただ、無許可で続けることのほうが、はるかに重い結果を招きます。
そして、事業を続けられないという判断は、必ずしも失敗ではありません。資産要件を維持できないと分かった時点で計画的に撤退すれば、派遣スタッフへの対応も取引先への説明も、余裕をもって行えます。
逆に、ぎりぎりまで粘って期限を過ぎてしまえば、突然事業が止まることになります。派遣スタッフの就業先が急になくなり、派遣先にも迷惑がかかります。早めの判断には、そういう意味もあります。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|許可を失う三つの形

労働者派遣事業の許可を失う場合について、まとめます。
- 失効。 有効期間が満了したとき。更新できなければ、そこで許可はなくなります。
- 取消。 法令違反などがあった場合の行政処分。改善命令、事業停止命令を経て取消に至ることがあります。
- 廃止。 事業主が自ら事業をやめる場合。廃止の届出という手続きがあります。
- 更新できない原因は二つ。 要件を満たさなくなった場合と、手続きの期限を過ぎた場合です。
- 許可を失ったあとの営業は罰則の対象。 契約の名称ではなく、実態で判断されます。
- 日々の運営が予防になる。 教育訓練、記録、情報提供、資産の維持。
- 多くは会社設立の段階で避けられる。 資本金の設計、記録の仕組み、担当者の決定。
許可を失うことになる原因は、たいてい決まっています。そして、そのほとんどは会社設立の段階で体制を作っておけば避けられるものです。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省・e-Gov法令検索により確認したものです。制度は改正されます。更新や処分に関わる判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
知っておくことで、避けられます
許可を失うことになる原因は、たいてい決まっています。資産要件を維持できない、教育訓練を実施していない、情報提供をしていない、法令違反がある。
これらはいずれも、会社設立の段階で体制を作っておけば避けられるものです。この記事を、そのための材料にしてください。
更新や処分に関わる判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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