労働者派遣事業の許可の欠格事由と、役員に求められること
役員を決める前に読んでいただきたい方へ
人材派遣の会社設立で役員を決めようとしている方、あるいは既存の法人で人材派遣に参入しようとしている方に向けた記事です。
労働者派遣事業の許可には、四つの要件とは別に欠格事由があります。法人の場合、この欠格事由は役員についても及びます。
要件を満たしていても、役員のなかに欠格事由に該当する人がいれば許可を受けられません。会社設立の前に確かめておく内容です。
欠格事由は、要件とは別の関門です

労働者派遣事業の許可について、労働者派遣法第7条第1項に四つの要件が定められています。それとは別に、第6条に欠格事由があります。
要件と欠格事由の違いは、方向です。要件は「満たさなければならないこと」、欠格事由は「該当してはならないこと」です。
- 許可の要件(第7条第1項)
- 専ら派遣でないこと、雇用管理の能力、個人情報の管理、事業を的確に遂行する能力
- 欠格事由(第6条)
- 禁錮以上の刑に処せられた場合など。該当すれば許可されません
- 法人の場合
- 欠格事由は役員についても及びます
- 派遣元責任者
- 欠格事由のいずれにも該当しないことが、選任の要件に含まれています
- 許可のあと
- 役員が欠格事由に該当することになれば、許可の取消の対象になり得ます
人材派遣の会社設立で気をつけたいのは、三つ目です。法人の場合、欠格事由は役員についても及びます。代表者だけの問題ではありません。
役員を複数置く場合、全員について確かめる必要があります。そして許可申請では、役員全員の住民票の写しと履歴書を提出します。
会社設立の段階で誰を役員にするかは、この点も含めて決めることになります。名前だけを借りるような形は、そもそも許可基準が否定しています。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
役員の書類と、許可申請での確認

労働者派遣事業の許可申請では、法人の場合、役員の住民票の写しと履歴書を提出します。合同会社では、この「役員」にあたるのが業務執行社員です。
住民票の写しには条件があります。本籍地の記載があり、個人番号の記載がないものです。窓口で請求するときに、この二つを指定する必要があります。
加えて、精神の機能の障害により認知、判断又は意思疎通を適切に行うことができないおそれがある場合には、医師の診断書の提出が求められます。
- 役員の住民票の写し(本籍地の記載あり・個人番号の記載なし)
- 役員の履歴書
- 該当する場合は、医師の診断書
- 派遣元責任者の住民票の写しと履歴書
- 派遣元責任者の派遣元責任者講習受講証明書の写し(申請の受理の日前3年以内の受講日のもの)
役員が多ければ、その分だけ書類が増えます。人材派遣の会社設立で役員の人数を決めるとき、この点も考えに入れてください。
なお、派遣元責任者と役員が同一である場合には、医師の診断書の提出を要しないとされている場面があります。詳しい取扱いは所管の都道府県労働局にご確認ください。

この図の右側にある四つは、いずれも人材派遣に固有の負担です。一般的な会社設立で役員を増やすときには出てこない項目が並んでいます。
だからといって役員を増やすべきでない、ということではありません。派遣元責任者の要件を満たす人を迎えられるなら、それは会社設立の設計として合理的です。負担を知ったうえで判断してください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元事業主について求められること

欠格事由とは別に、派遣元事業主(法人の場合はその役員を含む)について求められることがあります。厚生労働省の許可基準に定められています。
派遣元事業主が派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれる等、適正な雇用管理を期待し得るものであること。これが基本の考え方です。そして、次のいずれにも該当することが必要とされています。
- 労働保険、社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること
- 住所及び居所が一定しない等、生活根拠が不安定な者でないこと
- 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること
- 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること
- 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと
一つ目に注目してください。派遣スタッフの労働保険・社会保険への適正な加入が、許可の判断に含まれています。保険料を抑えるために加入させない、という選択は人材派遣にはありません。
五つ目も重要です。名義を借用して許可を得る形は、明確に否定されています。会社設立の段階で、要件を満たす人に名前だけを借りるという発想は成り立ちません。
会社設立の準備で就業規則を作るとき、これらの内容を入れておく必要があります。他業種の書式をそのまま使うと、契約終了で解雇できる趣旨の条項が入っていることがあります。
就業規則の作成は社会保険労務士の業務です。人材派遣の会社設立では、ここだけでも相談しておく価値があります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
派遣元責任者に求められること

派遣元責任者にも、欠格事由に該当しないことが求められます。厚生労働省の許可基準は、次のいずれにも該当することが必要としています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 未成年者でないこと | 労働者派遣法第36条による |
| 欠格事由に該当しないこと | 労働者派遣法第6条第1号から第8号までに掲げるもの |
| 選任の手続き | 施行規則第29条で定める要件、手続に従って選任されていること |
| 生活根拠 | 住所及び居所が一定しない等、生活根拠が不安定な者でないこと |
| 健康状態 | 適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること |
| 拘束のおそれ | 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること |
| 公衆衛生・公衆道徳 | 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること |
| 名義貸しでないこと | 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと |
| 経験 | 成年に達した後3年以上の雇用管理の経験など |
| 講習 | 許可の申請の受理の日前3年以内に派遣元責任者講習を受講した者であること |
| 外国人の場合 | 原則として、入管法別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること |
| 派遣の範囲 | 苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること |
このほかに、派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていることも求められます。
役員が派遣元責任者を兼ねる場合、両方の要件を満たしている必要があります。人材派遣の会社設立でよく選ばれる形ですが、確認は二重になります。
九つ目の経験の要件は、時間をかけないと満たせません。資金は貯めれば用意できますが、経験は貯められません。会社設立を考えはじめた段階で確かめておいてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
外国人が役員や派遣元責任者になる場合

外国人が派遣元事業主や派遣元責任者になる場合、在留資格についての要件があります。
厚生労働省の許可基準は、派遣元事業主について次のように定めています。外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の二の表の「高度専門職第一号ハ」「高度専門職第二号ハ」及び「経営・管理」若しくは別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者、又は資格外活動の許可を受けて派遣元事業主としての活動を行う者であること。
なお、海外に在留する派遣元事業主については、この限りではないとされています。
派遣元責任者については、原則として、入管法別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること、とされています。
人材派遣の会社設立で外国籍の方が役員や派遣元責任者になる場合、この点を確かめておく必要があります。在留資格の内容によっては、要件を満たさないことがあります。
会社設立の段階でこの点が問題になりそうな場合、登記より前に確かめておいてください。役員の構成を変えるには変更登記が必要になり、費用と時間がかかります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
許可を受けたあとに、役員が変わるとき

人材派遣の会社設立をして許可を受けたあと、役員が変わることがあります。この場合、労働局への手続きが必要になります。
許可申請では役員の住民票と履歴書を提出しているため、その内容が変わるからです。どういう手続きが必要かは、所管の都道府県労働局にご確認ください。
そして、新しく役員になる人についても欠格事由の確認が必要になります。該当する人が役員になれば、許可の要件を満たさなくなります。

人材派遣では、人を迎えることが許可の維持に直結します。一般的な会社設立であれば役員を増やすのは経営の話ですが、人材派遣では許可の話でもあります。
会社設立の段階で役員を決めるときも、事業が始まってから役員を迎えるときも、この点を踏まえて判断してください。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
名義貸しは、要件が明確に否定しています

この記事で繰り返し出てきたのが、名義貸しの禁止です。厚生労働省の許可基準は、二か所でこれを明確に否定しています。
- 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと
- 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと
つまり、要件を満たす人に名前だけを借りて許可を取る、という形は制度が想定していません。実際に雇用管理を行う人が派遣元責任者になる。これが前提です。
人材派遣の会社設立で、自分が派遣元責任者の要件を満たさないと分かったとき、要件を満たす人に名前を貸してもらうという発想が出てくることがあります。これは避けてください。
代わりの方法は三つです。要件を満たす人を実際に採用する、要件を満たす人と共同で会社設立をする、あるいは自分が経験を積んでから会社設立をする。
三つ目は時間がかかりますが、その間に資金を貯めることもできます。人材派遣の会社設立には基準資産額2,000万円という資産要件があるので、時間をかけることには意味があります。
そして、判断に迷うところは所管の都道府県労働局に相談してください。会社設立の登記より前に相談できます。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|欠格事由と役員に求められること

労働者派遣事業の許可の欠格事由と、役員に求められることについてまとめます。
- 欠格事由は要件とは別の関門。 労働者派遣法第6条に定められています。
- 法人の場合、役員にも及ぶ。 該当する人がいれば、法人として許可を受けられません。
- 役員全員の住民票と履歴書が必要。 本籍地の記載あり・個人番号の記載なし。
- 派遣元事業主にも要件がある。 派遣スタッフの労働保険・社会保険への適正な加入を含みます。
- 派遣元責任者にも欠格事由が及ぶ。 経験の要件と講習の受講も必要です。
- 外国籍の場合は在留資格の要件がある。 許可基準に定めがあります。
- 役員が変われば届出が必要。 新しい役員についても欠格事由の確認が要ります。
- 名義貸しは明確に否定されている。 実際に雇用管理を行う人が責任者になります。
人材派遣の会社設立では、人を迎えることが許可の維持に直結します。会社設立の段階で役員を決めるとき、この点を踏まえて判断してください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省・e-Gov法令検索により確認したものです。制度は改正されます。欠格事由に該当するかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、就業規則の作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)
人を迎えるときは、先に確かめてください
会社設立の段階で役員を迎えるとき、あるいは事業が始まってから役員を追加するとき、その人が欠格事由に該当しないかを確かめる必要があります。
許可を受けたあとに役員が欠格事由に該当することになれば、許可の取消の対象になり得ます。人材派遣では、人を迎えることが許可の維持に直結します。
欠格事由に該当するかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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