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労働者派遣事業 許可 要件

労働者派遣事業の許可の要件を、四つの号ごとに読み解く

要件の全体像をつかみたい方へ

人材派遣の会社設立を考えていて、労働者派遣事業の許可の要件を一度通しで見ておきたい方に向けた記事です。

要件は労働者派遣法第7条第1項に四つの号として定められています。厚生労働省の業務取扱要領は、この四つのすべてに適合していると認められなければ許可を受けることはできない、としています。

この記事では、その四つを順に読み解きます。細かい部分は各カテゴリーの記事に譲り、ここでは全体像を示します。

要件は四つ。すべてに適合する必要があります

四つの許可要件を表したイラスト
四つのすべてに適合する必要があります。

労働者派遣事業の許可の要件は、労働者派遣法第7条第1項に定められています。厚生労働省の業務取扱要領は次のように書いています。

以下のイからニまでのすべての要件に適合していると認められなければ、労働者派遣事業の許可を受けることはできません。

— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)

四つの要件を、条文の順に並べます。

労働者派遣事業の許可の四要件(労働者派遣法第7条第1項、2026年8月27日時点)
要件のあらまし 会社設立の段階で効いてくるところ
第1号 当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと 主要取引先が1社しかない事業計画は説明を求められます
第2号 派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有すること キャリア形成支援制度と派遣元責任者の選任が要ります
第3号 個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること 個人情報適正管理規程を作っておきます
第4号 第2号・第3号のほか、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること 財産的基礎と事業所の要件。ここが最大の関門です

表は要点を抜き出したものです。詳細は厚生労働省の業務取扱要領でご確認ください。

このうち第1号から第3号は、体制を整えれば満たせるものが多くなります。時間と手間はかかりますが、道筋は見えています。

第4号は違います。財産的基礎、つまり資産要件が含まれるからです。これは書類の整え方でどうにかなるものではなく、決算書の数字そのものが問われます。

人材派遣の会社設立を考える方の多くは、まず手続きの流れを調べます。定款を作って、登記をして、許可を申請する。ところが実際には、その手続きに入る前に第4号を満たせるかどうかで結論が決まってしまいます。

ですからこの記事では四つの要件を順に見ていきますが、会社設立の準備としては第4号から確かめることをおすすめします。満たせないなら、会社設立そのものを先に延ばすという判断になるからです。

加えて欠格事由もあります四つの要件とは別に、労働者派遣法第6条に欠格事由が定められています。禁錮以上の刑に処せられた場合などです。法人の場合、役員についても欠格事由が及びます。会社設立の段階で役員を迎えるときは、この点を確かめておいてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

第1号|専ら派遣でないこと

専ら派遣の禁止を表したイラスト
特定の者だけへの派遣を目的とする事業は、許可されません。

第1号の要件は、当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないことです。

厚生労働省の許可基準は、この要件を満たすためには、法第48条第2項の勧告の対象とならないこと、すなわち当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないことが必要である、と説明しています。

そして「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的とする」とは、特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであって、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合である、とされています。

この要件が問題になりやすいのは、既存の会社がグループ会社への人材の供給を目的として人材派遣の会社設立をする場合です。グループ内だけに派遣する形は、この要件に触れる可能性があります。

厚生労働省令で定める例外当該労働者派遣事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、10分の3以上の者が60歳以上の者(他の事業主の事業所を60歳以上の定年により退職した後雇い入れられた者に限る)である場合が、例外として定められています。ただし限定的な例外なので、事業計画の柱にはできません。

なお、この要件は許可の条件としても付されることに留意する、と業務取扱要領には書かれています。許可を受けたあとも守り続ける必要があるということです。

そして更新の審査では、この条件に違反していないかが確認されます。更新申請の直近有効期間内において違反の事実がみられた場合は、許可を更新しないこととする、とされています。

人材派遣の会社設立で事業計画を作るとき、取引先をどう広げるかを書いておいてください。労働者派遣事業計画書(様式第3号)は、審査の対象になります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

第2号|雇用管理を適正に行う能力

雇用管理の能力を表したイラスト
キャリア形成支援制度と、体制の整備の二点です。

第2号の要件は、申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであることです。

厚生労働省の許可基準は、この「厚生労働省令で定める基準に適合するもの」を二点に整理しています。

  1. 派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る)を有すること
  2. そのほか、派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制が整備されていること

一つ目のキャリア形成支援制度には、細かい内容が定められています。段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画、キャリアコンサルティングの相談窓口、キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続、教育訓練の時期・頻度・時間数、教育訓練計画の周知です。

時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要とされています。有給かつ無償で行うことが原則です。

二つ目の体制整備には、派遣元責任者に関する判断、派遣元事業主に関する判断、教育訓練に関する判断が含まれます。派遣元責任者の選任と講習の受講、職務代行者の選任、就業規則の記載事項などです。

計画だけでは足りません更新の審査では、キャリア形成支援制度について許可の基準を満たす実施状況であったかが確認されます。計画はあっても実施されておらず、指導しても是正されないような義務違反がみられた場合は、許可基準を満たしていないとして許可を更新しないこととする、とされています。会社設立の段階で、実行できる計画にしておいてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

第3号|個人情報の適正な管理

個人情報の適正な管理を表したイラスト
規程の文面と、実際の措置の両方が求められます。

第3号の要件は、個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていることです。

厚生労働省の許可基準は、これを二つに分けています。個人情報管理の事業運営に関する判断と、個人情報管理の措置に関する判断です。

前者は、個人情報適正管理規程を定めていることです。含める内容は四つあります。

  • 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること
  • 業務上知り得た個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること
  • 派遣労働者等から求められた場合の個人情報の開示または訂正(削除を含む)の取扱いに関する事項についての規程があり、その規程について派遣労働者等への周知がなされていること
  • 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関して、派遣元責任者等を苦情処理の担当者等の取扱責任者と定めるなど、事業所内の体制を明確にし、苦情を迅速かつ適切に処理することとされていること

後者の措置に関する判断では、個人情報を目的に応じ必要な範囲で正確かつ最新のものに保つ措置、紛失・破壊・改ざんを防止する措置、取り扱う職員以外の者によるアクセスを防止する措置、保管の必要がなくなった個人情報を破棄または削除する措置が求められます。

収集してはならない情報についても定めがあります。人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況です。ただし、税金や社会保険の取扱い等の労務管理を適切に実施するために必要なものなどは除かれます。

会社設立の準備で用意する備品にも関わりますアクセスを防止するための措置として、施錠できる保管場所が求められることがあります。事業所の実地確認でも見られる項目です。人材派遣の会社設立の開業準備に、この備品を入れておいてください。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

第4号|事業を的確に遂行する能力

財産的基礎を表したイラスト
第4号の財産的基礎が、いちばん重い要件になります。

第4号の要件は、第2号・第3号のほか、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであることです。

厚生労働省の許可基準は、これを四つの判断に分けています。財産的基礎に関する判断、組織的基礎に関する判断、事業所に関する判断、適正な事業運営に関する判断です。

第4号に含まれる四つの判断を並べたチェックリスト

いちばん上の財産的基礎が、人材派遣の会社設立で最大の関門になります。基準資産額は「資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額」で、事業所1か所なら2,000万円以上が必要です。

そして借入では基準資産額は増えません。借りた分だけ負債も増えるからです。資本金として入れる必要があります。会社設立の資本金の額が、そのまま許可の可否を左右する理由がここにあります。

三つ目の事業所については、事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あること、風俗営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないことが求められます。許可の審査には事業所の実地確認が含まれます。

小規模派遣元事業主への配慮措置は新設には使えません基準資産額1,000万円・現金預金800万円という軽減された金額を紹介している記事がありますが、これは小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置のことです。平成28年9月30日以降、この措置は旧特定労働者派遣事業を行っていた者からの申請に限られます。これから会社設立をする方は原則として対象外です。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

欠格事由という、もうひとつの関門

欠格事由を表したイラスト
要件を満たしていても、欠格事由に該当すれば許可されません。

四つの要件とは別に、労働者派遣法第6条に欠格事由が定められています。これに該当すれば、要件を満たしていても許可を受けられません。

欠格事由には、禁錮以上の刑に処せられた場合や、労働に関する法律の規定であって政令で定めるものに違反して罰金の刑に処せられた場合などが含まれます。

法人の場合、役員についても欠格事由が及びます。役員のなかに該当する人がいれば、法人として許可を受けられません。

会社設立の段階で役員を迎えるとき、あるいは既存の法人で人材派遣に参入するとき、この点を確かめておく必要があります。

そして、許可申請では役員の住民票の写しと履歴書を提出します。住民票の写しには、本籍地の記載があり個人番号の記載がないものが求められます。

派遣元責任者にも欠格事由が及びます派遣元責任者の要件にも、未成年者でなく、労働者派遣法第6条第1号から第8号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないことが含まれています。役員と派遣元責任者の両方について確かめてください。

欠格事由の具体的な内容は、労働者派遣法第6条の条文で確認できます。e-Gov法令検索で条文を読むことができます。

判断に迷う場合は、所管の都道府県労働局にご相談ください。会社設立の登記より前に相談できます。

なお、欠格事由は許可を受けたあとにも関わります。役員が欠格事由に該当することになれば、許可の取消の対象になり得ます。人材派遣の会社設立で役員を迎えるときは、この点も含めて判断してください。

出典労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索) (e-Gov法令検索/2026年8月27日確認)

四つの要件を、会社設立の前に自己点検する

四つの要件を自己点検するイラスト
つまずくのは、たいてい第4号の部分です。

四つの要件を、会社設立の前に自己点検するためのチェックリストを作ります。

労働者派遣事業の許可要件の自己点検チェックリスト

この十項目のうち、下の四つが第4号に属します。そして人材派遣の会社設立でつまずくのは、たいていこの部分です。

上の項目は、時間と手間をかければ満たせます。書類を作り、講習を受け、体制を整える。道筋は見えています。

下の項目は、お金と場所の問題です。基準資産額2,000万円を用意できるか、20平方メートル以上の事業所を確保できるか。ここは努力だけでは埋まりません。

労働局への事前相談を活用してください所管の都道府県労働局の需給調整事業担当部門は、申請前の相談を受け付けています。会社設立の登記より前に、事業所の間取り図と資産の状況を持って相談に行けます。相談は無料で、やり直しの登記は有料です。

出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)

まとめ|労働者派遣事業の許可の要件

労働者派遣事業の許可要件をまとめたイラスト
いちばん最後に見える第4号を、いちばん最初に確かめてください。

労働者派遣事業の許可の要件について、まとめます。

  1. 要件は四つ。 労働者派遣法第7条第1項に定められており、すべてに適合する必要があります。
  2. 第1号は専ら派遣でないこと。 特定の者だけへの派遣を目的とする事業は許可されません。許可の条件としても付されます。
  3. 第2号は雇用管理の能力。 キャリア形成支援制度と、派遣元責任者を含む体制の整備です。
  4. 第3号は個人情報の管理。 個人情報適正管理規程と、実際に講じる措置の両方が求められます。
  5. 第4号は事業を的確に遂行する能力。 財産的基礎、組織的基礎、事業所、適正な事業運営の四つの判断が含まれます。
  6. 財産的基礎がいちばん重い。 基準資産額2,000万円・自己名義の現金預金1,500万円・負債比率7分の1以上(事業所1か所)。
  7. 欠格事由もある。 労働者派遣法第6条。法人の役員にも及びます。

人材派遣の会社設立を考えるときは、いちばん最後に見える第4号を、いちばん最初に確かめてください。書類の整え方でどうにかなるものではないからです。

この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)

四つのうち、落ちるのはたいてい四つ目です

第1号から第3号は、書類を整えて運用の体制をつくれば満たせるものが多く、時間をかければ届く要件です。問題は第4号の財産的基礎、つまり資産要件です。

これは書類の整え方でどうにかなるものではなく、決算書の数字そのものが問われます。人材派遣の会社設立を考えるときは、いちばん最後に見えるこの第4号を、いちばん最初に確かめてください。

要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。

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