許可の要件は、審査でどう確かめられるのか。書類と実地確認の両面から
審査で何を見られるのかを知りたい方へ
人材派遣の会社設立を進めていて、許可の審査で何を見られるのかを知りたい方に向けた記事です。
厚生労働省の業務取扱要領には、要件ごとに「何によって確認するか」が書かれています。この記事では、その確認方法を整理します。
何を見られるかが分かれば、準備の仕方も決まります。会社設立の段階から読んでいただける内容です。
審査は、書類と現地の両面で行われます

労働者派遣事業の許可の審査は、二つの面で行われます。提出された書類の確認と、事業所の実地確認です。
多くの許認可は書類の審査だけで完結しますが、人材派遣では現地を見られます。これは、事業所に面積や設備の要件があるためです。

そして、申請から許可までには時間がかかります。厚生労働省は、許可申請を事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行う必要があるとしています。
この期間に、書類の審査と実地確認が行われ、労働政策審議会への諮問を経て許可が決定されます。人材派遣の会社設立で、この期間は営業できない時間になります。
会社設立の資金計画では、この期間の固定費を見込んでおいてください。基準資産額2,000万円という許可の資産要件とは、別に必要なお金です。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
資産要件は、貸借対照表で確かめられます

財産的基礎、つまり資産要件がどう確かめられるかを見ていきます。
厚生労働省の業務取扱要領は、基準資産額について次のように書いています。厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表又は労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「3 資産等の状況」欄により確認する。
自己名義の現金・預金の額についても、同じく貸借対照表または事業計画書の「3 資産等の状況」欄により確認するとされています。
- 基準資産額
- 貸借対照表または事業計画書の「3 資産等の状況」欄により確認
- 自己名義の現金・預金
- 同じく貸借対照表または事業計画書の「3 資産等の状況」欄により確認
- 繰延資産と営業権
- 基準資産額の計算から除きます。繰延資産は会社計算規則に規定するもの、営業権は「のれん」
- 提出する決算書
- 最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
- 納税証明書
- 法人税の納税証明書(国税通則法施行規則別紙第8号様式(その2)による最近の事業年度における所得金額に関するもの)
つまり、資産要件は決算書の数字で判定されます。銀行口座にいくら入っているかを見るのではなく、決算書に記載された数字で判断されるということです。
会社設立の直後でまだ決算を迎えていない場合の取扱いについては、所管の都道府県労働局にご確認ください。設立時の状況で見られることになりますが、具体的な扱いは事案によります。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事業所の実地確認で見られること

事業所については、実地確認が行われます。厚生労働省の許可基準は、事業所に関する判断を次のように定めています。
事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること。
— 厚生労働省|労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)
そして、この要件を満たすためには次のいずれにも該当することとされています。
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど、事業の運営に好ましくない位置にないこと
- 労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あること
この20平方メートルという広さには意味があります。派遣元責任者が仕事をする場所に加えて、派遣スタッフと面談やキャリアコンサルティングを行うための、個人的な秘密を保持できる場所が要るからです。
あわせて、個人情報の管理に関する措置も見られます。取り扱う職員以外の者によるアクセスを防止するための措置として、施錠できる保管場所が求められることがあります。
なお、事業所の使用権を証する書類として、不動産の登記事項証明書または不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写しを提出します。転貸借の場合は、所有者の転貸借に係る同意書その他権利関係を証する書類も必要になります。
会社設立の段階で事業所を決めるとき、この書類を出せるかどうかも確かめておいてください。
自宅を本店にして会社設立をし、そこを事業所として使う場合も、同じ書類が必要になります。持ち家であれば不動産の登記事項証明書、賃貸であれば賃貸借契約書の写しです。賃貸の場合、契約の使用目的が居住用になっていると、事業所として使えるかどうかが問題になることがあります。
人材派遣の会社設立で事業所を決めるときは、面積だけでなく、こうした書類を出せるかどうかも含めて確かめてください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
事業所数と企業規模の確認方法

事業所の数も確認の対象になります。資産要件が事業所数を乗じた額になるからです。
厚生労働省の業務取扱要領は、事業所数について次のように書いています。定款及び登記事項証明書、又は企業パンフレット等により確認する。
つまり、定款と登記事項証明書が事業所数の確認にも使われるということです。会社設立の登記の内容が、資産要件の判定にも関わってきます。
あわせて、産業分類と企業規模の判断もあります。産業分類については、定款、登記事項証明書、及び参考資料として提出のあったパンフレット等によって確認することとされています。
| 確認の対象 | 確認方法 |
|---|---|
| 基準資産額 | 貸借対照表または事業計画書の「3 資産等の状況」欄 |
| 自己名義の現金・預金 | 同じく貸借対照表または事業計画書の該当欄 |
| 事業所数 | 定款及び登記事項証明書、又は企業パンフレット等 |
| 産業分類 | 定款、登記事項証明書、参考資料のパンフレット等 |
| 資本金 | 貸借対照表 |
| 常時雇用する労働者数 | 労働者名簿により、許可申請日の直近の月末現在の労働者数 |
| 事業所の面積・位置 | 実地確認 |
このほかにも、要件ごとに確認方法が定められています。詳細は業務取扱要領でご確認ください。
この表を見ると、定款と登記事項証明書が複数の場面で使われることが分かります。会社設立のときに決めた内容が、いくつもの判断に関わってくるということです。
なお、人材派遣の会社設立では資本金が2,000万円前後になることが多く、サービス業の区分であれば中小企業に該当します。ただし、この企業規模の判断が直接に効いてくるのは小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置の場面で、新しく会社設立をする方は原則としてその措置の対象外です。
つまり、企業規模の判断があるからといって、資産要件が軽くなるわけではありません。会社設立の資金計画は、基準資産額2,000万円・自己名義の現金預金1,500万円という原則の金額で立ててください。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
キャリア形成支援制度は、内容が見られます

キャリア形成支援制度については、計画の内容が見られます。形式を整えただけでは足りません。
厚生労働省の許可基準は、教育訓練計画について次の要件をすべて満たしていることを求めています。
- 実施する教育訓練が、雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること
- 有給かつ無償で行われるものであること
- 派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること
- 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練が含まれたものであること
- 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること
そして、キャリアアップに資する内容であることについて、派遣元事業主が説明できなければならないとされています。具体的に資する理由は、キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)において記述することとされています。
ヨガ教室や趣味的な英会話教室、面接対策とは異なるメイクアップ教室のような、派遣労働者の福利厚生を目的とした明らかにキャリア形成に無関係なものは含まれない、とも書かれています。
時間数についても基準があります。フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要とされています。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
就業規則は、条項の有無が見られます

就業規則については、特定の条項の有無が見られます。ここが、他業種の書式をそのまま使えない理由です。
厚生労働省の資料は、許可申請の添付書類として、就業規則又は労働契約の次の該当箇所の写しを挙げています。
- 教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱いを規定した部分
- 無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇しないことを証する書類
- 労働者派遣契約の終了に関する事項、変更に関する事項及び解雇に関する事項について規定した就業規則又は労働契約の該当箇所の写し等
- 無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当を支払うことを規定した部分
二つ目に注意してください。許可基準では「解雇できる旨の規定がないこと」という形で書かれています。書き加えるのではなく、書いてはいけない条項があるということです。
市販の就業規則のひな形や、他業種の会社設立で使われる書式には、契約終了で解雇できる趣旨の条項が入っていることがあります。そのまま提出すれば、指摘を受けます。
就業規則の作成は社会保険労務士の業務です。人材派遣の会社設立では、ここだけでも相談しておく価値があります。
あわせて、個人情報適正管理規程と教育訓練計画も自分で作る書類です。会社設立の準備でこの三つに早く着手できるかどうかが、許可申請までの期間を決めます。役所で取る書類は申請すれば出てきますが、自作の書類は考える時間が必要だからです。
出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
審査の期間と、そのあいだにできること

審査の期間は、自分では短縮できません。厚生労働省は、許可申請を事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに行う必要があるとしています。
この期間、人材派遣の営業はできません。事業所の家賃、役員報酬、通信費が出ていきます。会社設立の資金計画には、この期間の固定費を入れておいてください。
では、この期間に何もできないかというと、そうではありません。営業活動はできませんが、準備はできます。

この期間の使い方で、許可が下りてからの立ち上がりが変わります。人材派遣の会社設立では、最初の入金までさらに1〜2か月かかるからです。
許可が下りてから準備を始めれば、その分だけ入金が遅れます。審査の期間を待ち時間にせず、準備の時間に充ててください。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|審査で確かめられること

労働者派遣事業の許可の審査で確かめられることを、まとめます。
- 審査は書類と実地確認の両面。 人材派遣では事業所を実際に見られます。
- 資産要件は決算書の数字で判定される。 貸借対照表または事業計画書の「3 資産等の状況」欄。
- 事業所は面積と位置、面談できる場所。 おおむね20平方メートル以上、独立性、秘密を保持できる場所。
- 事業所数は定款と登記事項証明書で確認。 会社設立の登記の内容が資産要件の判定にも関わります。
- 教育訓練計画は内容が見られる。 キャリアアップに資する内容であることを説明できる必要があります。
- 就業規則は条項の有無が見られる。 「規定がないこと」を求められる条項があります。
- 審査期間は2〜3か月。 短縮できません。その間も固定費は出ていきます。
何を見られるかが分かれば、会社設立の段階からの準備が具体的になります。この記事を、その手がかりにしてください。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。審査の詳細や判断は所管の都道府県労働局が行います。申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、就業規則の作成は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、労働者派遣事業の許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 適正な運営の確保に関する措置に係る手続 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
見られるものが分かれば、準備は具体的になります
許可の審査は、書類の確認と事業所の実地確認の両面で行われます。書類は貸借対照表、定款、登記事項証明書、住民票、履歴書、講習受講証明書。実地確認では、事業所の面積、独立性、面談できる場所などです。
何を見られるかが分かれば、会社設立の段階からの準備が具体的になります。この記事を、その手がかりにしてください。
審査の詳細や判断は所管の都道府県労働局が行います。申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
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