人材派遣の会社設立で、いつ何の書類を出すのか。登記と許可申請の書類を時系列で並べる
この記事は、書類の全体像をつかみたい方に向けています
人材派遣の会社設立で、書類が多すぎて何をいつ出すのか分からなくなっている方。
窓口が法務局・都道府県労働局・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークと分かれるため、混乱しやすいところです。
この記事では、窓口ごとではなく時系列で並べます。実際に手を動かす順に読めるようにしています。
窓口は五つ。書類はそこへ分かれていきます

人材派遣の会社設立で出す書類は、五つの窓口に分かれます。それぞれ役割が違うので、まずここを押さえておくと混乱しません。
- 法務局
- 会社設立の登記。定款、登記申請書、払込証明、印鑑届。ここが終わらないと許可申請に進めません
- 都道府県労働局
- 労働者派遣事業の許可申請。事業主単位(会社単位)で、主たる事務所を管轄する労働局へ
- 年金事務所
- 健康保険・厚生年金保険の新規適用。法人は原則として適用事業所になります
- 労働基準監督署
- 労働保険(労災保険)の成立届。就業規則の届出(常時10人以上の労働者を使用する事業場)
- ハローワーク
- 雇用保険の適用事業所設置届と、被保険者資格取得届
このうち、人材派遣に固有なのは二つ目の都道府県労働局です。ほかの四つは、どの業種で会社設立をしても同じように出てきます。
ただし人材派遣の場合、三つ目から五つ目の保険関係が、単なる義務にとどまりません。労働者派遣事業の許可基準は、派遣元事業主について「労働保険、社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること」を求めているからです。保険の手続きが、許可の判断にもつながっています。

出典人材派遣・職業紹介を行う皆さまへ (厚生労働省/2026年8月27日確認)
第1段|会社設立の登記に出す書類

会社設立の登記で用意する書類は、会社形態によって少し変わります。株式会社の場合の代表的なものを挙げます。
- 定款(株式会社は公証人の認証を受けたもの。合同会社は認証不要)
- 設立登記申請書
- 発起人の決定書(本店所在地や設立時取締役の選任などを決めた書面)
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 資本金の払込みがあったことを証する書面(通帳の写しなど)
- 印鑑届書
- 登録免許税分の収入印紙を貼付した台紙
人材派遣の会社設立でここに固有の注意点は二つあります。ひとつは定款の事業目的に労働者派遣事業を行うことが読み取れる文言を入れること。もうひとつは資本金の額を、許可の資産要件から逆算して決めることです。
登記が完了したら、登記事項証明書と法人の印鑑証明書を取ります。これらは労働者派遣事業の許可申請の添付書類になります。必要な通数を確かめてから、まとめて取っておくと二度手間になりません。
なお、登記そのものは司法書士の業務です。会社設立の書類作成を依頼する場合は、事業目的の文言について労働者派遣事業の許可を取る予定であることを伝えておくと、行き違いが減ります。
出典商業・法人登記の申請手続 (法務局/2026年8月27日確認)
第2段|許可申請に出す書類(法人の場合)

労働者派遣事業の許可申請では、申請書と事業計画書を正本1通・写し2通、添付書類を正本1通・写し1通で提出します。
申請書と計画書
- 労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)3通
- 労働者派遣事業計画書(様式第3号、様式第3号-2および様式第3号-3)3通
様式第3号-3は、派遣労働者のうち雇用保険または健康保険・厚生年金保険の未加入者がいる場合にのみ提出するものとされています。
添付書類(法人の場合)
- 定款又は寄附行為
- 登記事項証明書
- 役員の住民票の写し(本籍地の記載があり、個人番号の記載がないもの)および履歴書
- 最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
- 最近の事業年度における法人税の確定申告書の写し(納税地の所轄税務署の受付印のあるもの)
- 法人税の納税証明書
添付書類(法人・個人に共通)
- 事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書または不動産賃貸借契約書の写し。転貸借の場合は所有者の同意書など)
- 就業規則又は労働契約の該当箇所の写し
- 派遣労働者のキャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引・マニュアル等の該当箇所の写し
- 派遣元責任者の住民票の写しおよび履歴書、派遣元責任者講習受講証明書の写し(申請の受理日前3年以内の受講日のもの)
- 個人情報適正管理規程
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
第3段|社会保険と労働保険の届出

会社設立の登記が完了すると、保険関係の手続きが始まります。人材派遣では派遣スタッフを雇うため、この部分の事務が他業種より重くなります。
| 窓口 | 届出 | おおまかな内容 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 法人は常時従業員を使用する場合、代表者一人でも原則として適用事業所になります |
| 年金事務所 | 被保険者資格取得届 | 被保険者となる人ごとに提出します |
| 年金事務所 | 被扶養者(異動)届 | 被扶養者がいる場合に提出します |
| 労働基準監督署 | 保険関係成立届 | 労働者を雇用したときに提出します |
| 労働基準監督署 | 就業規則(変更)届 | 常時10人以上の労働者を使用する事業場で必要です |
| ハローワーク | 雇用保険 適用事業所設置届 | 雇用保険の被保険者となる労働者を雇用したときに提出します |
| ハローワーク | 雇用保険 被保険者資格取得届 | 被保険者となる人ごとに提出します |
提出期限は届出ごとに定められています。詳細は日本年金機構・厚生労働省の案内、または社会保険労務士にご確認ください。
人材派遣で気をつけたいのは、派遣スタッフを採用するたびに資格取得届が発生することです。会社設立の直後は代表者一人でも、営業が始まって派遣スタッフが増えれば、この事務が毎月のように発生します。
そして繰り返しになりますが、この加入は許可の判断にもつながっています。厚生労働省の許可基準は、派遣元事業主について「労働保険、社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること」を求めています。保険料を抑えるために加入させない、という選択は人材派遣にはありません。
出典1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき (日本年金機構/2026年8月27日確認)
第4段|税務署と自治体への届出

会社設立の後には、税務署と都道府県・市区町村への届出もあります。人材派遣に固有のものではありませんが、期限のあるものが含まれるので落とせません。
- 法人設立届出書(税務署、都道府県税事務所、市区町村)
- 青色申告の承認申請書(税務署)
- 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署。要件を満たす場合)
- 棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書(必要に応じて)
このうち青色申告の承認申請書には期限があります。設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までです。人材派遣の会社設立では許可申請の準備に気を取られやすいので、ここは忘れないようにしてください。
そして、赤字でもかかるのが法人住民税の均等割です。標準税率では、資本金等の額が1千万円以下で従業者数50人以下の場合、道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計7万円です。税率や金額は自治体によって異なります。
税務の届出そのものは自分でもできますが、届出の要否や有利不利の判断は税理士の領域です。特に決算期をいつにするかは、許可申請で提出する決算書の時期にも関わるため、会社設立の前に相談しておく価値があります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月27日確認)
自分で作る書類が三つ。ここが時間を食います

ここまで挙げた書類の多くは、様式が決まっているか、役所から取ってくるものです。それに対して、自分で作らなければならない書類が三つあります。人材派遣の会社設立で時間がかかるのは、この三つです。
- 就業規則許可申請で写しを求められる条項が四つあります。市販のひな形のままでは、この四つが入っていないことがあります。
- 個人情報適正管理規程取り扱う職員の範囲、職員への教育、開示・訂正の取扱いと周知、苦情処理の体制。この四つを含める必要があります。
- 教育訓練計画段階的かつ体系的な訓練計画。入職時の訓練を含み、最初の3年間は毎年概ね8時間以上、有給かつ無償で行うこととされています。
三つとも、内容が許可の基準を満たしているかどうかで判断されます。形式だけ整えても、中身が基準に届いていなければ指摘を受けます。
特に教育訓練計画は、実施する教育訓練が雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること、有給かつ無償であること、キャリアアップに資する内容であること、入職時に行う訓練が含まれていること、無期雇用の派遣労働者には長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であることといった条件があります。福利厚生を目的とした、明らかにキャリア形成に無関係なものは含まれません。
あわせて、キャリアコンサルティングの相談窓口も要ります。担当者にはキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者など)、または派遣先との連絡調整を行う営業担当者を配置する必要があります。

出典許可基準(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
書類を時系列に並べ直す

最後に、ここまでの書類を時間の順に並べ直します。実際に手を動かすときは、この順で進めることになります。

この並びで分かるとおり、いちばん最初に着手すべきなのは自分で作る三つの書類です。役所に出す書類は様式が決まっているので、そろえば出せます。自作の書類だけが、中身を考える時間を必要とします。
人材派遣の会社設立をなるべく短く終わらせたいなら、資金の準備と並行して、この三つに早く手をつけることです。
出典申請・届出等の手続(労働者派遣事業を適正に実施するために) (厚生労働省/2026年8月27日確認)
まとめ|書類の全体像

人材派遣の会社設立で出す書類について、要点をまとめます。
- 窓口は五つ。 法務局・都道府県労働局・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク。人材派遣に固有なのは労働局への許可申請です。
- 登記が先。 許可申請の添付書類に定款と登記事項証明書が含まれるため、順番は動かせません。
- 許可申請は会社単位。 事業主単位で、主たる事務所を管轄する都道府県労働局へ提出します。
- 保険の加入は許可の判断にもつながる。 派遣スタッフの労働保険・社会保険への適正な加入は、許可基準に書かれています。
- 自作の書類が三つ。 就業規則・個人情報適正管理規程・教育訓練計画。ここに時間がかかります。
- 税務の届出にも期限がある。 青色申告の承認申請書は、会社設立の直後に忘れやすい書類です。
書類の数は多いですが、一度に全部そろえるわけではありません。時系列に並べて、順に出していけば進みます。
この記事の内容は2026年8月27日時点で、厚生労働省・日本年金機構・国税庁の公表資料により確認したものです。制度は改正されます。書類の内容が要件を満たすかどうかの判断は所管の都道府県労働局へ、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士へ、登記は司法書士へ、税務の届出は税理士へご確認ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、許可申請の代行や個別の税務相談ではありません。
出典都道府県労働局(需給調整事業担当)所在地一覧 (厚生労働省/2026年8月27日確認)
書類は多いですが、順番に出すだけです
人材派遣の会社設立で出す書類は、たしかに多いです。ただし一度に全部そろえる必要はありません。登記の書類、許可申請の書類、保険の届出は、それぞれ違うタイミングで出ていきます。
詰まりやすいのは、就業規則と個人情報適正管理規程、そして教育訓練計画です。この三つは自分で作る書類で、ひな形をそのまま使うと許可の要件を満たさないことがあります。ここだけは早めに社会保険労務士に相談しておくと安全です。
書類の内容が要件を満たすかどうかの最終的な判断は、所管の都道府県労働局が行います。申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士、登記は司法書士、税務の届出は税理士にご相談ください。
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